自社システムの運用で運用効率化のノウハウを蓄積
問題予測からビジネスの実行支援まで一気通貫で提供する野村総合研究所グループ。寺井氏が所属するシステムマネジメント事業本部は、国内4カ所に保有するデータセンターの運用やアウトソーシング事業を担う。なかでもメインとなるNRIの横浜第1データセンターでは約7000台のサーバーが稼働し、継続的に様々な運用改善施策をおこなっているという。
寺井氏は「自社データセンターのシステム運用業務と、運用管理ツールの開発・販売を同じ事業部内で担うことで、運用現場のノウハウをベースに、より高品質なツールやサービス提供が可能になる」と語り、多くの企業が課題とするIT運用の効率化について、「監視、ジョブ管理、運用プロセスの改善の3点が重要であり、基本に立ち戻ることが大切」と力説した。
トラブル率を下げ、コストを削減 ツールで統合集中管理を実現
寺井氏は、システムの変遷による新たな課題として「仮想化クラウド対応」、そして「運用コスト」「ITサービスマネジメント」をあげた。
まず「仮想化クラウド対応」については、仮想化による横串化により「障害影響管理」や「相関関係・構成管理」の課題が生じていることを指摘。そして、システム数の増加による「運用コスト増大」については、トラブルを減らし運用現場の負荷を軽減する方策として、NRIの事例が紹介された。寺井氏は「ハードやソフトに目が行きがちだが、トラブルの約5割はヒューマンエラーが原因。その極小化のために改善PDCAが有効だった」と説明した。続いて「ITサービスマネジメント」については、NRIの改善前後の監視ルームを例に挙げ、「顧客やシステムごとチームで監視していたが、ツールの導入で統合集中監視による無人化、効率的なITサービスマネジメントが実現した」と解説した。なお導入の際には「導入効果シミュレーション」で統合の可否の判断を行なったという。寺井氏は運用効率化にむけた3つのキーワードに対して、3つの対応策「見える化・標準化・自動化」をそれぞれ当てはめて施策を紹介し、「人」「プロダクト」「プロセス」への施策が有効であることを強調した。
IT運用の課題解決の糸口は多彩な管理機能の活用にあり
「人」に対する施策として、寺井氏はNRIの著書である「やる気を引き出すチーム改革」を紹介。「見える化と情報共有」「『やらされ感』をなくす」などをテーマに、細かな“現場の声”を吸い上げ、問題や気づきの他、改善策までも共有し、それをチームごとに競わせた。結果、モチベーション向上、継続的な問題登録へとつながっていったという。
さらに「プロダクト」については、ツールとして「Senju Family」が紹介され、最大限に使いこなすためのTipsが紹介された。たとえば運用業務の標準化については、同じイベントの複数通知を回避したり、システム内の切り分けで障害の種類毎に対応方法を変えるなど、様々な工夫により効率化を図ることができる。他にも、申請/承認から実行までを自動化するSenju Service Automationや、障害時・構成変更に伴う後続ジョブの影響を迅速に確認するTipsなどが紹介された。
また「プロセス」についてはNRIでの事例として、設計の標準化として開発側で考慮すべきルールをまとめた「べきべからず集」の取り組みや、運用への申請・手続きプロセスの標準化などが紹介された。進捗や対応の内容がわかる帳票電子化などはシステム利用者側にとっても大きいメリットとなる。
最後に寺井氏は、3つの課題と「見える化・標準化・自動化」のマトリクスの中に、39項目のTipsを当てはめ、「ツールの豊富な機能をいかに使いこなすのかが、課題解決の糸口となる。課題別のTipsとして提供しているので、ぜひ問い合わせてほしい」と訴え、セッションを結んだ。