メールのクラウド化の意向は高いが懸念も残る
パソコン専門誌が2011年7月に公表したアンケート調査で、企業が今後クラウド化したいものとして上位に挙がったのはメール、グループウェアなどの情報系サービスだった。その中でメールのクラウド化の意向が強い理由について及川光氏は「セキュリティとアーカイブ」と見ている。企業は自前でのウイルス、スパム対策に疲れ、同時に内部統制対応のために証拠をいかに残すかが課題になっているからだ。またデータは肥大化する一方であり、必要なリソースを得たいという意識もメールのクラウド化を検討する理由となっている。
メールシステムのクラウド化の状況はどうか。2011年7月に調査会社が行ったアンケートでは、オンプレミス57.2%、全てクラウド、ホステッド型が31.3%、スパム対策などの一部で利用が11.7%となっている。これまで大手企業の場合は圧倒的にオンプレミスが多かったが、そこにでもクラウド化の検討が開始されている。
一方、企業のクラウド利用における課題・懸念は、徐々に減少している。その要因について及川氏は「企業がクラウドの特徴と、適した自社業務について勉強してきた結果」と見ている。それでもクラウドに移行しない理由として多くの企業が挙げているのが「社外サービスのセキュリティ・レベルがわからない」というものだ。実際、クラウドのサーバに障害が生じた場合、実際に何が起きるのか、なかなか見えづらい。
また、「クラウドサービスの料金が思ったほど安くない」というのも、大きな理由として挙げられている。また、規模が大きいシステムの場合、移行コストが高くなる。既存システムとの連携も簡単ではない。また、サービスに定期的に機能が追加され、その結果料金への反映や安定性への支障が生じるという懸念がある。以上の不安を払拭できれば、企業の規模にかかわらず、クラウド化が進展すると期待できる。