変更ペースによってアプリケーション戦略を考える
これらの技術を取り入れることで、ビジネスに革新が起こることも珍しいことではない。とはいえ、実際の企業においてこれらの革新的な技術をいち早く取り入れていくのは容易ではない。ではどうすればこれらの技術を取り入れることができるのか。
そこでゴーハン氏は建築物を例にとり、ペースレイヤリング・アプローチという方法論を紹介した。例えば構造であれば100年以上持つような設計が求められる。外装はしばしば変えたくなるので20年でいいかもしれない。間取りは3~30年、設備は7~15年、家具/内装であればさらに短く1日~1カ月という具合だ。つまり建築物なら5階層に分解できるということ。アプリケーションもこのように変更ペースによって分解すればいいというわけだ。「単一的な構造のアプリケーション戦略はやめ、レイヤーごとに別々の戦略を立てるべきだ」(ゴーハン氏)。
例えば共通プロセスなどビジネス基盤となる記録システムは、15年~20年は生き続けることが求められる。一方ビジネスプロセスを差別化するようなシステムは、変更が迅速にできるように設計されていかねばならない。新しいアイデアを生み出すような革新システムでは、さらに早く構築でき、変更も柔軟にできるような設計するのである。
「記録システムであればベンダーが提供するパッケージでマッチするが、差別化システムや革新システムを実現するパッケージはほとんどない。独自開発が必要になる。そこでビジネス価値でアプリケーションを整理する必要がある」(ゴーハン氏)。
TIME手法でアプリケーションを評価する
新しいアプリケーションの構築プロジェクトを立ち上げるには、予算が必要となる。「合理化や標準化を実施し、既存のアプリケーションにかかっている金額を削減しなければならない」(ゴーハン氏)。しかしながら実際、稼働しているアプリケーションを合理化するのはなかなか難しい。
そこで「お勧めしたい手法がある」とゴーハン氏。それが「TIME」である。TIMEとは、技術上の品質/状態とビジネスの価値という2つの観点よりアプリケーションを評価する手法である。「Tolerate(許容)」「Invest(投資)」「Eliminate(廃止)」「Migrate(移行)」の四象限にアプリケーションをマッピングし、どのアプリケーションが品質良くビジネス価値を提供できているか、ライフサイクル全体のコストがいかにかかっていないかでアプリケーションの廃棄や維持、さらには新規投資を決定していくのである。
TIMEでは、IT部門だけではなくビジネス部門のリーダーもアプリケーション・ポートフォリオの管理に深く関わるようになる。「IT部門とビジネス部門が会話を増やしていくこと。ビジネスに価値の出るアプリケーション開発の一歩はそこからだ」(ゴーハン氏)。