スマーター・アナリティクスとは何か
次に登壇したのはIBMコーポレーションのバイス・プレジデントであるInhi Cho Suh氏。「スマーター・アナリティクス ビッグデータ時代のビジネス変革とは」と題する講演をおこなった。
IBMがスマーター・プラネットというコンセプトを打ち出したのは4年前。それ以来、アナリティクスは進化し続け、その重要性は高まっている。IBMはこうした進化したアナリティクスを「スマーター・アナリティクス」と称し、ビジネスの変革を導くものと位置づけている。
MITスローンとの共同調査によると、アナリティクスを行うことで競合より優位になったと答えた企業が、2010年は37%であったのに対し、2011年には58%に増大した。また「競合企業に対して大幅に業績を上回っている」と回答した企業の割合は2.2倍に増えている。
そしてアナリティクスの対象は、従来の企業内データにとどまらず、社会全体におよび、業界全体の変革につながってきた。企業においても、1日の12テラバイトのツイートの分析、500万件の取引からの不正検知、100本の監視カメラによるビデオフィードの分析などがおこなわれているといった状況がある。しかもそのほとんどが、従来と異なる非構造化データである。こうした、量(Volume)、速度(Velocity)、種類(Variety)の増大こそが、ビッグデータの本質であるという。
IBMが手がけたビッグデータ・アナリティクスによる米国の事例として、医療機関のWellPoint社の例が語られた。米国では誤診断や医療ミスによるで死亡する患者が多い。IBMはワトソンという自動応用システムを用い、患者の応答に適用し医療支援システムとして活用している。
またノースカロライナ州での大学、McKesson社などの事例を紹介しながら、アナリティクスの変革推進の視点を次のようにまとめる。
1.顧客獲得や満足度の向上 --- 顧客離反管理やソーシャルによる顧客の感情分析による対策
2.業務効率改善 --- 予知保全、サプライチェーンの最適化、クレームの最適化
3.財務プロセスの変革 ーー ローリングプラン、予算予測、決算処理プロセスの自動化
4.リスク、コンプライアンス対策 ーー 業務・ポリシーのリスク管理、リアルタイムでの不正検知
こうした目的のために「情報→洞察→ビジネス成果」のサイクルを形成するのが、スマーター・アナリティクスの定義であるという。
OODA --- ビッグデータの戦略コンセプト
次にInhi Cho Suh氏は、ビッグデータを企業が戦略として活用する際に参考になるコンセプトとして、「OODA --- Observe(観察)、Orient(適応)、Decide(決定)、Act(行動)」という言葉を紹介した。「OODA」はもともとアメリカの軍隊の意思決定理論である。戦闘機パイロットのジョン・ボイドが空戦の経験から生み出したモデルであり、洞察と応答の速度が勝利につながるという考え方だ。このOODAは、今日のビッグデータの戦略にも通じるものだという。
こうした目的と戦略によるビッグデータ・アナリティクスは、ほとんどすべての産業の分野に適応できる。そのためにIBMは従来の定型的、分析的アプローチと創造的、直観的なアプローチを統合したアプローチで取り組んでいる。これは人間の右脳と左脳のモデルにも近いという。
このような研究所や世界最大の数学・統計部門によって生み出された知見をフル活用できることが、IBMの強みであろう。すでにその成果として、米国では大規模な風力発電のタービン設置プロジェクト、大西洋北西部のスマートグリッドのデモンストレーション・プロジェクト、医療機関での活用プロジェクトが進んでいる。
最後に、Inhi Cho Suh氏は「他のベンダーは、データをアナリティクスに近づけるのに対して、IBMはアナリティクスをデータに近づける」と述べた上で、ネティーザとDB2を連携させたアナリティクスアプライアンスや、Hadoop、ストリーム・コンピューティング、データウエアハウスを統合したプラットフォームを紹介し、講演を締めくくった。
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