ジョブズ、アインシュタイン、フランクリン --- イノベーションの精神をビジネスにも
Impact2012は、IBMのミドルウェアであるWebSphereブランドを中心にしたカンファレンスである。サブタイトルは「Innovate,Transform,Grow」、テーマとして「Change The Game」(ゲームを変えろ)を掲げている。
ここ最近のIBMのソフトウェアイベントの多くがそうであるように、開発者だけを対象にしたものではなく、テクノロジーによる企業の変革やイノベーションをコンセプトに据えていることもあり、参加者はCIO、ビジネス・リーダーや経営層も対象にしており、8500名という大規模なイベントとなっている。
現地時間30日の午前中のキーノートで登場したのは、ウォルター・アイザックソン。昨年のベストセラーとなった故スティーブ・ジョブズの評伝で知られる作家だ。IBMイベントのキーノートがジョブズの話ではじまるというのは、一見意外に思われるが、氏の話の内容はジョブズ、アインシュタイン、ベンジャミン・フランクリンの独創性と変革についてであり、IBMの今回のテーマである「Innovate,Transform,Grow」に通じるものであった。氏は、ジョブズが晩年にAppleは独創的であったがIBMに比べるとコラボレーションが苦手なことに気づいていたという話を明かした上で、100年続いてもなおもイノベーティブであるIBMの姿勢を賞賛した。
500億の機器につながる時代のアプリケーション開発とは
全体の進行をつとめるMarie Wieck氏は、WebSphereの統括責任者である。彼女はアイザックソンの話とつなげて「このイベントで自らがゲームの流れと変える主役になってほしい」と参加者に語りかける。
「地球上には現在90億のデバイスが存在し、今後の3年間で500億に増大していく。その時のアプリケーションの開発の考え方も大きく変化する。アジャイルに開発すること、ソーシャルの力を用いることが大切。企業においては、CIOだけでなく、CMO、CFOの力が強くなり、組織の壁も超えられていく。」( Marie Wieck ,GM, Application & Integration Middleware,)
そして、顧客企業として、米家電の大手企業のWhirlpool社のAlan Douville氏、中堅の銀行であるHuntington National BankのSteve George氏、海洋科学の研究所であるMarine InstituteのPeter Hefferman氏が登壇した。
WhirlpoolのAlan Douville氏は、「製造業をアメリカに戻す必要がある。1万名以上の雇用を作り、消費者とのリアルタイムな関係をつくっていく。そのための重要なバックエンドのシステムがIBMのプラットフォームである」と語った。またHuntington銀行は、複雑化していく金融の規制や環境に適応していくために、以前使っていたWeblogicからWebSphereの顧客システムのアーキテクチャを変更した事例を紹介した。
顧客企業の事例を通じて語られたのは、ビジネスの変化に伴うシステムの複雑化であり、そのための開発の考え方としてのSOAの重要である。プロセスとアプリケーションのワークロードの増大に適応していくための開発の考え方として、SOAはあらためて重要視されていくという。