日本企業を取り巻く経営環境
現在の日本の企業を取り巻く経営環境は次のような状況にある。
1. 人口動態に起因する国内市場の停滞
少子高齢化により生産労働人口は減少傾向。長引くデフレにより企業収益を悪化させていることから、従業員の給与も抑制され消費を低迷させるなど負のスパイラルが起きている。もはや海外市場を開拓するしかないという状況が生まれている。
2. 日本的モノ作りの停滞
日本のモノ作りは、今ある製品をより高品質、多機能にする「改善」の文化で成長してきた。しかし、その日本的モノ作りを代表とするメーカーが軒並み大幅な赤字を記録。一方、アップルは過去最高益を更新し続けている。つまり消費者は、改善という日本的モノ作りではなく、iPhoneやiPadのような創造性あふれるモノを求めているのである。改良からイノベーションへ、である。
3. 進まない雇用の流動化
終身雇用の幻想は失われたと言われて久しいが、他国と比較すると日本は従業員の解雇は簡単ではない。新しい事業を立ち上げようとしても、古い物を壊して新しい組織に入れ替えることは容易にはできない。破壊的イノベーションが生み出す変化に迅速に対応できない現状がある。つまり組織構造の改革が必要なのだ。
4. グローバル経済の台頭
インターネットの普及により世界がフラット化し、先進国から新興国へ急速に市場がシフトしている。例えば、国内の携帯電話販売台数は年間約3600万台程度なのに対し、新興国のインドの販売台数は年間約2億台以上という具合だ。この勢いは今後も加速し、国内市場に留まっていたとしてもグローバル経済の波に巻き込まれてしまうのは避けきれない。変化に対応するスピードが求められる。
国内企業を取り巻く状況を打破するITとは
これらの国内企業を取り巻く状況を打破するにはどうすればいいのか。そこで重要になるのが「スピード」「マーケティング」「コラボレーション」「イノベーション」というキーワードである(図1)。
これらの4個のキーワードを支援するIT トレンドも登場している。第一はコンシューマライゼーションである。これは2006年にガートナーが提唱した言葉で、軍が開発し、民間企業が利用して消費者に提供されるという最新技術の流れが、消費者に広まった技術を企業や軍が利用するということを示す。つまり技術普及の流れが、従来と逆転した現象が起こっているのである。
第二はクラウド・コンピューティングである。これが普及したことで、企業は莫大な初期投資を行うことなく、巨大なストレージや無限のサービスを瞬時に活用することができるようになった。
第三はソーシャルメディアである。2007年より急速に成長したFacebookはその代表例だ。Facebookの現在の総会員数は9億人、1日の利用者は3億人と、国別人口に直すと中国、インドに次いで世界三番目の規模となる。この普及によりこれまでインターネットは情報にアクセスするためのツールだったが、人と人を繋ぐプラットフォームに姿を変えつつある。