災害対策のトレンドはセカンダリシステムのリソースの有効活用
ここ最近、ITシステムの高可用性、そして災害対策に高い関心が寄せられている。以前からこの領域の注目度は高まりつつあったが、日本においてはとくに昨年発生した東日本大震災がそれを一気に加速させた感がある。
先日見学をした、高度な免震構造を持ちバックアップ発電機などの備えも完備したTISの都市型データセンター「GDC御殿山」についても、東日本大震災以降、問い合わせや引き合いが相次いでいる。
とはいえ、昨年度は急なこともあり「予算の確保がままならなかったのか、契約に至る案件はそれほど多くなかった」と語るのは、TIS株式会社 IT基盤サービス本部 IT基盤サービス事業推進部 主査の高村泰生氏。
それが、年度が替わった4月以降、契約締結が一気に増えているという。TISでは、当初予想を上回るペースで同データセンターのユーザーは増えるだろうと見ている。
ユーザー側の関心の高まりに先行する形で、各社データベース製品においても高可用性、災害対策機能の強化が進んでいる。
最新のMicrosoft SQL Server 2012には、目玉機能の1つとしてAlwaysOnが搭載された。これは従来のデータベースミラーリングなどの機能よりも使いやすく柔軟性の高い可用性向上機能だ。
その特長の1つが、複数のセカンダリレプリカを持てるようになったこと。またレプリカの作成も同期、非同期を選択できる。非同期であれば遠隔地にセカンダリレプリカを置くこともでき、災害対策にも活用できる。
さらに、セカンダリレプリカは、待機系としてコールドスタンバイ状態で利用するのではなく、参照用としても利用可能だ。セカンダリでは更新は行われないので、他のトランザクションによって発生する排他ロックの影響もない。また、同期してるセカンダリレプリカでバックアップを行えば、本番機の処理に負荷をかける心配もなくなる。
先日発表されたばかりのDB2 V10でも、高可用性機能は強化されている。まず、DB2の高可用性機能としてはpureScaleがある。こちらは、OracleのReal Application Clustersと競合する機能であり、データベースのクラスタリングの仕組みだ。V10からはレンジパーティショニングや複数のデータベースをサポートするなど、機能強化がなされさらにワークロード管理機能の追加、インターコネクトに10Gigabit Ethernetをサポートするなど、より導入しやすいものへと進化している。
DB2のもう1つの高可用性機能が、DB2 High Availability Disaster Recovery(HADR)機能だ。SQL Server 2012のAlwaysOnと同様、V10では複数台のスタンバイ・サーバーをサポートした。さらに、スタンバイ・サーバーはリードオンリーで利用できる。
高可用性構成や災害対策を導入しようとすれば、従来までは予備にシステムをもう1セット用意し、万一の状況に備えていた。なので、単純には倍のコストがかかってしまう。これではなかなか予算の確保が難しかったのが現実だ。これに対して、予備のシステムが参照用やバックアップ処理などに利用でき、負荷のオフロードが可能になっているのが昨今の高可用性、災害対策の特長だ。現状のシステム負荷が高く困っている際に、負荷を分散させ性能を確保する。同時に、災害対策も実現できるとなれば、追加予算の確保しやすくなるというものだ。