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夏のデブサミ、テーマは「ソーシャルエンタープライズ」。なぜこのテーマなのか?

「デブサミ」の愛称で毎年2月に行われてきた翔泳社主催のイベント「デベロッパーズサミット」が、今年は7月にも開催されることになりました。夏に行われるデベロッパーズサミット、通称「夏サミ」だそうです。

 夏サミのテーマは「ソーシャルエンタープライズ」。ソーシャルメディアはIT業界の中で盛り上がっている分野のひとつですが、それをエンタープライズという文脈で考えたとき、デベロッパーにはどういう役割がそこにあるのでしょうか?ソーシャルエンタープライズをテーマにした意味、そしてデベロッパーとの関わりについて、主催の翔泳社から岩切晃子氏、コンテンツ委員長の及川喜之氏、コンテンツ委員の鈴木雄介氏らに集まってもらい、話を聞きました。(聞き手はPublickey 新野淳一氏)

左から、デベロッパーズサミット主催 岩切晃子氏(翔泳社)、コンテンツ委員 鈴木雄介氏
(グロースエクスパートナーズ)、コンテンツ委員長 及川喜之氏(セールスフォース・ドットコム)、
新野淳一氏(Publickey)

ソーシャルエンタープライズとは

岩切 今回、はじめて夏にデブサミをやります。しかも10年目の区切りのあとのはじめてのデブサミでもあります。これまでのデブサミが「共有」だったとすれば、これからの10年は「行動」をそこに加えていきたい。そのために何を学び、どう行動するのかを提案したいと考えたとき、「ソーシャルエンタープライズ」というテーマがあるのかなと。

 ただソーシャルエンタープライズはまだ始まったばかりのムーブメントなので、まだどんなものなのか、デベロッパーの視点でどんなことが考えられるのか、といったところが定着していない面もあります。こういったことを、コンテンツ委員長の及川さんとコンテンツ委員の鈴木さんに来ていただいて、話をしてみたいと思っています。

デベロッパーズサミット 
コンテンツ委員長 及川喜之氏

及川 セールスフォース・ドットコムがソーシャルエンタープライズへの取り組みを始めたきっかけは、すでにお客様はソーシャルメディアを積極的に活用してコミュニケーションをとっているのだから、そこに企業も踏み込んでいくべきでしょう、と考えたところからでした。

 ソーシャルエンタープライズとは、ひとことで言えば業務やシステムに社内外のソーシャルメディアを取り入れた新しい企業のあり方を指します。 ソーシャルエンタープライズには3つの段階があると考えていて、まず社内にソーシャルメディアを入れて社員のソーシャル化をはかりましょうと。次に、ソーシャルメディアを使っている顧客の声に耳を傾け、最後がソーシャルメディアで顧客とエンゲージしましょうと。

岩切 ソーシャルエンタープライズが素敵なテーマだと思うのは、これまでコストカットの文脈で使われることが多かったIT業界の話題の中で、そうではなくて企業のファンやブランドの魅力を増すこと、従業員のコミュニケーションを活性化することで生産性を向上させると言ったプラスの議論が多いことだと思っています。

新野 そのソーシャルエンタープライズの流れの中で、デベロッパーにはどういう役割が期待されるのでしょう。

業務とソーシャルの連係には工夫と開発のしがいがある

デベロッパーズサミット 
コンテンツ委員 鈴木雄介氏

鈴木 エンタープライズ向けのシステムインテグレータをやっている立場から考えると、グループウェアやナレッジマネジメントを経て、いまソーシャルメディアが企業の中に入ろうとしているのは、過去の蓄積の分析よりも、いまここにある情報でもってチームとして問題解決しなくてはいけないように、業務の複雑性が変わってきているからではないかと理解しています。

 そこでデベロッパーの役割は、ストックした情報を分析して上司にレポートしていたシステムから、いま起きている出来事をイベントとして必要な人に流していって、そこに関係者が関わることで問題解決していく。そうしたシステムデザインを取り入れて、いまの基幹システムにどうやってソーシャル性を組み込んでいくのかを考えるところに、ひとつあるのではないでしょうか。

 必要な情報を取り出す技術が、これまでは「分析」だったのが、ソーシャルの時代には「フィルタリング」になります。基幹システムには活用されないたくさんの情報が眠っていて、それは基幹システムの稼働中にも次々に生み出されているので、それをどう取り出していくかがこれからすごく大事になると思います。

 及川 企業の中のソーシャルメディアでは、人だけではなくてドキュメントやシステムも、人と同じようにつぶやくことができるようになります。例えば、業務マニュアルが更新されたら、そのドキュメントが更新内容をつぶやく。お客様から発注があれば、発注内容と納期を受発注システムがつぶやく。稟議書が承認されたらワークフローシステムがそれをつぶやく。

 データやシステムをどう語らせ、それを誰に届け、どう業務に結びつけていくのか。いままでの業務システムにソーシャルメディアを連係させるところで工夫のしがいがある、面白いところだと思います。

新野 コラボレーション機能は、メールやグループウェアのような独立したソフトウェアから、あらゆる業務アプリケーションに組み込まれていくのではないですかね。その業務用コミュニケーション基盤の座を狙うべく、多くの製品がソーシャルエンタープライズ市場に投入され、競合が始まっているように思います。

 僕は夏サミの基調講演をお願いされているので、講演でそういった流れをお話しするつもりです。

デベロッパー個人にも、企業にもチャンス

岩切 ソーシャルメディアへの接点としてタブレットやスマートフォンを使うことも増えてくるだろうと考えていて、夏サミではビジネスにおけるiPadのお話もしていただく予定です。現状では企業にiPadを導入するときにはSIerが阻害要因という話もありますし。

新野 それは僕も取材で聞く話です。多くのSIerがデータのスキーマや画面フォームからシステムを構築するため、タブレットのような新しいデバイスに対してうまく適応できていないと。

鈴木 使う人がどういう情報が見たいのかという視点と、既存のデータの分析やフォーマットの両面からの発想が必要で、そこは大きく考え方を変えなければいけないところですね。

及川 モバイル以外に、開発プロセスについてのトラックも設けていて、デベロッパー自身がソーシャル機能を活用して開発を進めていきましょうという事例も紹介していきます。

鈴木 これからはお客様、そしてオフショアなどと、どのように透明で実態をきちんと共有した上でよいコミュニケーションがとれるかが重要です。そういう持続可能な関係を築くためにソーシャルなつながりを企業が活用するのも大きなポイントだと思います。

岩切 ソーシャルエンタープライズは、デベロッパー一人ひとりにとって飯の種であり、所属している企業にとっても飯の種でもあると、そういう提案が夏サミでできるのではないかと思います。それはいままでのデブサミとは違う、新しいチャンスへの働きかけになりそうです。

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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https://enterprisezine.jp/article/detail/4095 2012/07/13 17:28

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