オープン&クローズの戦略に注目せよ
その違いは何か。東大の小川紘一先生の研究などで明らかにされてきたことですが、日本がある製品分野で100%のシェアを取ってから、0%に落ちるまでの推移を示したグラフがあります。このグラフを私が会長を拝命している知財戦略本部専門調査会の「知財戦略2012」提案に大きく取り上げてもらいました。このグラフが示すのは2 つのパターンです。
ひとつは、100%から0%だんだん加速度的にシェアを10年かからずに落ちていくパターン。もうひとつは、10 年たっても6割以上のシェアをキープしているというもの。この2つの違いは何か。前者はフルオープン型。後者はオープン&クローズ型というモデルです。デジカメがいまだに60%のシェアを持っているのは、オープンの領域とクローズの領域を使い分けているからです。意図的であるかどうかは別にして、ですが(笑)。

今、世界で勝っているのはオープン&クローズの企業です。今、日本で流行っているオープンイノベーションという言い方は問題があると、私は思っています。日本でオープンイノベーションと言うとなぜか皆さんフルオープン型をイメージしてしまうからです。
オープンにして市場を加速的に形成すべき領域と、クローズにして市場から収益を得る領域、その使い分けや組み合わせのデザインが日本企業と欧米の勝ち組企業を分けているといえます。技術のあるなしではなく、技術の使い方の知恵のあるなしで勝負が決まっていると言えるのです。
ではなぜ日本は、「技術に」しか知恵をつかわないのか、「技術を活かす知恵」を開発することに知恵をつかわないのか。
数年前に知財の専門会長を拝命した時から、「知を活かす知」ということを言ってきました。「技術という知を活かす、ビジネスモデルや知財マネジメントという知」という意味です。海外企業は技術では多少劣っても、ビジネスモデルや知財マネジメントを工夫して勝ってきた。
このことは少し極端にいっているので、必ずしも「日本VS欧米」ではなく「日本の負け組VS欧米の勝ち組」というのが実際です。日本でも勝っている企業はいるわけです。そこのところをはっきりさせようということを、実証研究でやっているのが東大の小川紘一先生、モデル論でやっているのが私です。
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京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)
ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZineには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail : k...
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