「ライトタイム」を実現するためにリアルタイムにデータを集約。GoldenGateが使える理由
Oracle GoldenGate(以下、GoldenGate)は、複数の場所にあるデータを、レプリケーション技術によって統合するための製品だ。例えば、業務サーバのデータベースから別の解析用サーバにデータをコピーする機能を始め、双方向同期、マルチマスタ、ピアツーピアの同期が行える。データの同期は独立したエンジンでの処理であるため、既存システムのデータベースに負荷をかけることはない。従来のレプリケーションとは違い、既存のデータベースに変更をほとんど加えることなく機能を実現できることが特徴だ。
本製品のおもな目的は、データを「複製」することによって様々な「データ統合」の価値を提供することにある。一般的に「統合」という言葉からイメージするのはデータベースの単一化のような「集約」をイメージするかもしれないが、本来の「データ統合」とは一個所にデータを集めるだけではなく、複数あるデータベースをつなげて、総体として「ひとつに統合されたものとしてとらえる」ことでも実現が可能だ。英語の「Integration」と「Consolidation」の違いといえばイメージがわくだろうか。
もちろん、1つのデータベースシステムにデータを集約して統合を実現することも解法の1つだが、これには日本的な問題が立ちはだかる。各部署、各組織でシステム化が個別に進んだことによる“システムのサイロ化”が問題視されているが、それをシステム統合することは、各システムを否定することになり得る。それぞれのシステムを作った責任者の顔をつぶすわけにはいかない――こんなことが、システムの集約化の足かせとなっている企業も多いだろう。ならば、データだけでも「見かけ上、ひとつに集約・統合」することは有効な手段だ。
本製品を担当する日本オラクル株式会社 製品戦略統括本部の谷川信朗氏は「欲しいときに欲しい情報が得られることが重要で、必ずしもリアルタイム性を厳密に求めるお客様が多いわけではない。リアルタイムより“ライトタイム”が本質的な要件となる。それはデータを複製し、常に手元に置いておくことで実現できます」と語る。
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使い方は工夫次第で広がる!GoldenGateは便利な“テクノロジー”だ
GoldenGateの応用範囲は広い。例えばリアルタイムにデータウェアハウス処理をするためのデータ同期させるために使うことはもちろん、バックアップやディザスタリカバリといったデータ保全目的での遠隔地複製、さらにはインフラのバージョンアップのためにデータを旧システム/新システム間で同期させることなどにも使えるツールだ。
内部動作を簡単に説明すると、GoldenGateはデータベースが作成するログファイルへアクセスし、変更のあったトランザクション部分のログを抽出、その変更部分を中間形式のデータに変換して複製する先のGoldenGateへ渡し、反映用のSQLに変換する。そのSQLを複製側データベースで実行する、というシンプルな動作だ。そのため、OSの違い、データベースの違いも超えてレプリケーションが行える。
海外では歴史のあるツールであるため、当初データベース基盤の移行のために導入したこの製品を、移行後もフル活用した事例が数多くある。その活用事例をいくつか見てみよう。
活用事例1:サイロ化されたデータベースのデータを複製し別のデータベースで統合
まずはOracle OpenWorldで発表され、Oracle Fusion Middleware Innovation Awards 2012を受賞したRaymond James社での事例だ。成長が激しい金融系の企業で、その歴史からシステムがサイロ化、それぞれのデータをまとめてどう活かすかが課題となっていた。そこでデータ統合を行うことを検討し、従来では即時性の無い古いデータを基にデータ分析せざるを得ない状況だったものを、データ統合により「5分前のデータを分析できる」ことを目標にシステム化の検討を進めていった。
そして、GoldenGateを利用し、挑戦的な目標値「1分前」を目指すことで採用が決定。結果として、分析が可能なデータは「9秒前」という驚異的な数字になったという。
Oracle Blogs: Data Integration Customer Spotlight: Raymond James Financial
活用事例2:レポーティングの高速化→本番系も高速化→大幅なコスト削減
次はトルコの大手テレコム会社、Türk Telekomの採用事例だ。
経営の意思決定に必要なレポーティングのためには、ミッションクリティカルなCRM/ビリング/決済システムなど16種類のシステムからのリアルタイムなデータ取得が必要であった。この点は前述の活用事例1と同じようにGoldenGateで1つの本番データベースにリアルタイムなレプリケーションをすることで解決できるが、もう一つ課題があった。本番データベース上に存在するデータが大量なため、レポーティングの負荷が高く、全体のパフォーマンスに大きな影響を及ぼし、加えてストレージやバックアップといった運用コストも大幅に増加してしまう点だ。
そこで、GoldenGateをさらに活用し、本番サーバのデータを450km以上離れた拠点にあるアーカイブ用のデータベースへ複製環境を構築、その後、定期的に本番サーバから古いデータのみを削除するという構築を行った。そのため、レポーティングの負荷はアーカイブ用データベースに集中させ、本番環境の負荷を軽減、さらに本番環境のストレージコスト等を大幅に削減することが可能となった。
結果的にUS$ 22 million(約20億円)のコスト削減にもつながった。
Oracle Customer Case : Türk Telekom Significantly Improves Performance with Turkey’s First Asynchronous, Real-Time Archiving Solution
活用事例3:GoldenGateでCRM強化→解約率が25%ダウン
3つ目は衛星放送サービス大手、DirecTVの事例だ。様々な顧客の情報を蓄積する既存CRMのシステムから、データウェアハウスへのリアルタイム・レプリケーションをGoldenGateを使って実現することで、既存システムへの負荷を減らし、データアクセスの高速化を実現した。
これにより、フィールドエンジニアの最適なアサインや、コールセンターでの応答率向上、効果的なキャンペーン実施へのデータ活用など、様々な効果を創出。最もベネフィットを得られた点としては、解約率が25%ダウンし顧客満足度もNo.1になったことが挙げられる。
活用事例4:日本における導入事例
最後に国内の事例を紹介したい。従来、ひとつのシステムに1つのデータベースというのが一般的であり、データベースには読み込み/書き込みの処理が混在する。ある企業では、繁忙期になると検索系の負荷が集中するため、GoldenGateを用いてデータを「検索/分析用」「通常業務用」の2つに分割、負荷を分散した。これにより繁忙期の処理などの大量更新がかかる処理もなんなくこなせるようになったという。別の企業では、新規のサービスは新環境で構築し、新しいデータベースには、サービスの中心となるデータベースからリアルタイムにデータを同期してくるという柔軟な構成を取るケースもある。
「性能に余裕がないから」とあきらめない――システム統合の前にデータ統合を
事業の成功のためには、企業が活動する上で発生するデータをいかに活用するかが今後一層重要な点となってくる。自社のデータインフラを1から考えて再構成するまえにできることは多い。「データをレプリケーションさせる」という形の統合が最も素早く、低コストで実現できる方法だ。そのためのツールとして、GoldenGateを検討したい。紹介してきたように、GoldenGateの活用事例はさまざまだが、共通しているのは「欲しいデータを欲しいときに手に入れる」ことが可能となったことだろう。
もちろん、データ移行のためのツールとしてGoldenGateを検討するというのも王道だ。数十時間の停止時間が想定されていたプロジェクトを数十分の停止時間に抑えて移行を実現したケースや、社内のレプリケーション技術の標準として採用し、複数のデータベースのアップグレードに活用するケースなど、採用事例は増えている。
移行用途はもちろん、移行後もフル活用が可能なGoldenGateは、日本オラクルの各パートナーが積極的に採用し、国内でも事例が徐々に増えている。主なところでは、富士通株式会社、日本電気株式会社、株式会社日立製作所、NTTデータ先端技術株式会社、新日鉄住金ソリューションズ株式会社、TIS株式会社などで、積極的にビジネスが展開されている。
移行、パフォーマンス向上、レポーティング、分析、DWH、アーカイブ……これらの言葉にピンと来たITマネージャーは、ぜひGoldenGateの機能詳細を追いかけていってほしい。システム、データの「統合」に、最適な解法が見つかるかもしれない。
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