“ワーク・シフト”を誘発する5つの要因
講演会ではリンダ・グラットン教授がなぜ『ワーク・シフト』を書こうと思ったか、から始まった。
リンダ・グラットン教授の書籍は今回で7冊目である。この5年間で様々な国を訪れ、世界中で変化が激しくなっているのを肌で感じてきた彼女は、その変化が組織に影響し、そして生活にも影響をあたえるものだと感じた。4年間「働き方コンソーシアム」で将来の働き方に関する調査を行い、その集大成のひとつとしてこの『ワーク・シフト』が出来上がったのだ。
リンダ・グラットン教授は、人々の働き方に影響する<5つの要因>と、それに対応するための<3つの働き方のシフト>を解説した。
リンダ・グラットン教授は5つの要因として以下を挙げる。
1.テクノロジーの変化
アフリカでは、マサイ族が携帯電話を使っていること、教育のIT化が進んでいることなどを例に挙げつつ、テクノロジーが社会に影響を与えていることを述べた。
2.グローバル化の進展
リンダ・グラットン教授の住むロンドンでは、イギリス人だけでなく、他の人種も増えていることを例に挙げていおり、その流れは企業にも、多様性を求め始めるだろうと述べた。日本では、まだ人種の多様性はあまりないが、長期的には、そのような傾向は持続せず、日本でも多様化していく傾向にある。
3.人口構造の変化と長寿化
日本の高齢化は社会問題と化しているが、これと全く同じ事が20年後の中国でも起きるだろうと予測。自分が年を取った時に何をするかを考えつつ、仕事への取り組み方を変えるべきであろうと言う。
4.社会の変化
デンマークでは単身世帯の方が、複数世代で暮らしている家庭よりも多いことや、離婚の増加などを例に挙げつつ、社会の変化を取り上げた。
5.エネルギー・環境問題の深刻化
第一の資源は石油ではなく「水」であるとし、地下からの水はもう底をつき始めていると言い、将来は水という資源と二酸化炭素に悩まされる社会になるという。
こうした5つの要因をもとに、リンダ・グラットン教授は2つの未来の状況を掲げる。
「漫然と迎える未来」と「主体的に築く未来」だ。「漫然と迎える未来」では世界は二極化し、中間層の仕事はテクノロジーによって取って代わられる。仕事も在宅勤務がほとんどになり、孤独を感じる。一方、「主体的に築く未来」では、皆が協力的で、お互いに関わりあいながら生活しており、人々は充足感のある暮らしを営んでいるのだ。そうした中、我々が「主体的に築く未来」に向かうために、リンダ・グラットン教授は以下の3つのシフトを提示する。