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週刊DBオンライン 谷川耕一

コンピューターテクノロジーの世界にこのひとあり、ウォズニアックが日本にきたぞ!


DB Onlineでも何度か取りあげている、フラッシュストレージベンダーのFusion-io。2月28日に、データセンターやクラウド事業者向け新製品、ioScaleシリーズの提供開始を発表した。Fusion-io製品は、サーバーのPCI Expressスロットに直接接続するフラッシュメモリを使ったストレージ。これまで最大3TB容量のエンタープライズ市場向け「ioDriveII」、420GBの容量で3D映像の制作などの用途で威力を発揮するワークステーション市場向け「ioFX」を提供してきた。これらに加え、最大3.2TBの容量でデータセンターやfacebookなどのWebベースで大規模ビジネスを展開している企業など、ハイパースケール市場に対応する「ioScale」を新たにラインナップに加えた。

Fusion-ioがハイパースケール市場向けフラッシュストレージ製品を提供開始

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「サーバーがすべてフラッシュストレージで動くような
データセンターが実現する」フリン氏

 エンタープライズ市場とハイパースケール市場では、製品への要求が異なるとFusion-io最高経営責任者で会長のデビッド・A・フリン氏は言う。

 たとえば、エンタープライズ市場の企業は、HPやDELLなど実績あるベンダーにきちんとOEM認定された製品を好む。これに対しハイパースケール市場の企業は、製品製造元と直接やり取りをしたい。さらには、エンタープライズでは既存の有償アプリケーション製品を主に利用するが、ハイパースケールではオープンソース・ソフトウェアを好む。

 前者が運用コストを重視し長期間利用するのに対し、後者は導入コストを重視し短期間でリプレースをする。

 「このように双方で「逆のモチベーションを持っています。このハイパースケール市場の要求に応えるために新たに生まれたのが、今回の『ioScale』です」(フリン氏)

 このioScaleは、カスタマーエンゲージモデルで提供され、顧客との直接的な関係を築いていくことになる。その結果として、サーバーが「すべてフラッシュストレージで動くようなデータセンター」を実現できるだろうとフリン氏は言う。そこでは、いわゆる磁気ディスクのストレージは、アーカイブの用途だけで利用することになる。こうすることで、当たり前だがサービス全体のシステム性能は大幅に向上する。性能が向上することで、サーバー数を大きく減らすことができる。結果的にスペース、電力消費、ソフトウェアのライセンス、運用保守費用などの大幅な削減が実現できる。

 とはいえ、フラッシュストレージについては、信頼性への不安感があるのも事実だろう。実際には、信頼性はむしろ高いとフリン氏は言う。というのも、一般的となりつつあるSSDでも、旧来のHDDでもいいが、信頼性を高めようとすればRAID構成になる。そうなると各ディスクのコントローラーもあれば、RAIDコントローラーも別途必要であり、それぞれを接続する必要もある。これでは構成は複雑になり、パフォーマンスを優先すれば信頼性を犠牲に、信頼性を優先すればパフォーマンスを犠牲にする。これに対しFusion-ioの製品は、CPUに近いところにFlashストレージを置く。シンプルでパフォーマンスに優れ、構成要素も少ないので故障する箇所も少ない。実際、Fusion-ioの製品に移行した結果、従来のストレージを使っていた時よりもシステム全体の故障率は低くなったとという顧客の声が紹介された。

パーツはなるべく少ないほうがいい!

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ウォズニアック氏健在!

 ところで、Fusion-ioのチーフ・サイエンティストは、スティーブ・ジョブズ氏らとともにAppleを共同設立したあのスティーブ・ウォズニアック氏だ。

 28日の発表会にはウォズニアック氏も登壇、なぜ同氏がFusion-ioに参画したのか、その理由が語られた。じつはその理由が上記にあるFusion-ioのメリット、シンプルが故の性能の高さと信頼性の確保なのだ。「パーツはなるべく少なくするべきであり、そうすれば分かりやすい」とウォズニアック氏は言う。

 たとえば、かつてのPCはシリアルケーブルでカセットテープ装置を接続しプログラムの読み書きをしていた。これがフロッピーディスクになり便利になったが、「ケーブルでFDDを接続するのではなく、コンピュータに入れてしまったらさらに速くなった」とウォズニアック氏。それを彼は、Appleで行ったというわけだ。

 「ケーブルで繋がれているうちは、それだけで信頼性は下がってしまう。すべて内蔵するのがFusion-ioであり、それは極めて画期的なことなのです」(ウォズニアック氏)

 これは、トランジスタがICチップに変わったのと同じくらいの大きな変化であり、そういった方向性を持っている企業に関われることが大変嬉しいのだとウォズニアック氏は笑顔で言う。同氏にとってはコンピュータをシンプルにするという発想は、まさにAppleを創業した時から一貫しているものなのだ。そして、その発想の延長線上にあるのがFusion-ioということなのだろう。

 当日のウォズニアック氏は、極めて元気でとてつもなく饒舌だった。登壇したのはほんの短い時間だったが、にこやかにそして機関銃のようにしゃべりまくったのだ。この彼の姿には、まだまだコンピュータテクノロジーの進化に大きく貢献してくれそうな雰囲気があった。ウォズニアック氏の元気に触れ、IT業界もまだまだこれからだなと思ったりも。

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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