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ソフトバンク接続率No1達成の裏で活躍した、「現場仕込み」のデータサイエンティストたち

2013年4月に行われたカンファレンスイベント「Oracle Cloudworld 2013 Tokyo」、ここでもっとも興味を惹いたのは、ソフトバンク孫社長が語った「接続率No1の裏にはビッグデータ分析がある」という話題だった。具体的なシステムの中身にまでは踏み込まなかったが、月間6億件にものぼるスマートフォンの接続情報を収集し、それを分析し接続率向上のための最適かつ効率的な施策を打っていることが伝えられたのだ。その場がOracleのイベントでもあり、6億件のデータ分析にOracle Exadataが利用されていることのみが明らかにされた。とはいえソフトバンクの接続率No1達成の裏には、Exadataだけでなくさまざまなシステムが利用されている。

接続率No1の裏にはさまざまなシステムが活用されていた

ソフトバンクグループ企業の1つである株式会社Agoop 取締役 柴山和久氏
株式会社Agoop
取締役 柴山和久氏

 「4月の時点では月に6億件、いまでは7億件あまりのデータが収集されています。これは、Oracle Exadataに溜められますが、この他にも一次解析にはHadoopも使っているし、細かい分析をするためにはMicrosoft SQL Serverもあり、MongoDBなども利用されています」

 ソフトバンクグループ企業の1つである株式会社Agoop。同社はビジネス・インテリジェンスプロバイダであり、地理情報システムを活用するソリューションを提供している。Agoopの柴山和久氏によれば、ソフトバンクがビッグデータ活用に利用しているシステムには、用途に応じ適材適所でさまざまなソフトウェアが活用されているという。エンジン特性に合わせ目的ごとにデータベースは選択されており、二次加工したデータの詳細解析にはSQL Serverが利用されているとのことだ。

 「ビッグデータからトレンドが分かるところまではOracle Exadataで、実際の具体的な対策に結び付けるところはSQL Serverを活用しています。これは、ビジネスの現場にいる人が分析を行うこともあり、データサイエンティストのような統計解析のプロでなくても使いこなせる仕組みでなければならなかったからです」(柴山氏)

 具体的な対策を導き出す仕組みのポイントは、スマートフォンの接続情報に位置情報を組み合わせているところにある。この詳細分析で利用する位置情報は、たんなる地図上のポイント情報だけでは十分ではない。

 従来の携帯電話が主流の時代には、基地局が近くにあれば電波は強く、接続は問題ないと判断できた。ところが現状のスマートフォンが主流の時代には、基地局が近くにあってもつながらないことは多々ある。

 「たとえば、朝のラッシュ時の新宿駅、人が多いので基地局が近くにあっても負荷が高くつながらない。これは電波が悪いのではなく、輻輳(ふくそう)が発生していてつながらない」(柴山氏)

 地図上に基地局の位置をプロットし、そこから電波の届く範囲に円を描いていく。その円で地図が埋め尽くせれば、携帯電話はつながると言えたのは過去の話。たとえ円の中心に近い場所であっても、人が多ければつながらない。この状態を放っておけば、ユーザーからクレームが来る。そして、果ては重大な障害にも発展しかねない。これが、スマートフォン主流の世界の話だ。なので、たんなる地図上の位置だけでなく、どんな建物がそこにはあるのかといった、詳細な地図情報と併せて、つながりにくい原因を解析しなければ接続率を改善する施策は打てない。

 そのためには、地図上にさまざまなデータを重ね合わせ、さまざまな角度からデータを検討する。そうすることで具体的な対策が導き出せる。「データを重ねたり、それを引いて見たり、あるいは寄って見たり。ビッグデータからトレンドを掴むところまでは自動解析しますが、最後は基地局設計のプロなりが目で見て判断します」と柴山氏は言う。

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接続情報/位置情報に加え、時間による状況変化まで

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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