前回の記事では、分析を開始する前には、仮説をチェックし分析で達成したい目標(ゴール)に関するあいまいさを排除すべきこと、および、データ分析においても「80対20の法則」は有効で、やみくもにデータを集めるのではなく必要不可欠なデータを十分に見極めた上でデータを収集すべきことについて、ご説明しました。今回は、「データの分析」と「統計的な解釈」について、ご説明いたします。今までの連載はこちら。
モニタリングは日常的かつ構造的に行う
必要なデータの収集が完了したら、いよいよ分析の開始です。前回の記事の例を使い、具体的にご説明します。
あなたは、会員向けオンライン有料サービス会社に勤める中間管理職です。新規会員登録後1か月間はお試し期間として無料、その後、有料となるビジネスモデルです。これまでは会社の売上が順調に増加していましたが、最近は伸び悩んでおり、その解決策の立案を上長から指示されました。そこで、以下の課題を設定し、仮説を洗い出し、そのうえで分析ゴールを決めました。
- 課題:売上が伸び悩んでいる
- 仮説:顧客の離脱率が増加している
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分析ゴール:・離脱率を10% 低下させるための知見を得る
(離脱率 = 前月に新規会員登録した者のうち、登録後1カ月以内に離脱(退会)した者の割合)
まず初めに、状況を正確に把握します。売上の時系列変化を確認するのはもちろん、売上の構成要素の時系列変化も確認しましょう。

当初立てた仮説の通り、離脱率が増加しており、それが売上鈍化の原因であることは間違いないようです。もし、仮説が間違っていた場合は、新たな仮説を立てて確認する作業を繰り返しましょう。
ちなみに、データの時系列変化を定期的に観測することを、「モニタリング」といいます。皆さんも、ご自身のビジネスにとって最重要なデータ(たとえば、売上、ノルマの達成率、顧客からのクレーム件数、在庫の回転数、など)を日常的にモニタリングされていることと思います。
それでは、それらの構成要素についても、モニタリングしていますか?
たとえば、売上があなたにとっての最重要データである場合、その構成要素である「顧客数」や「顧客単価」についてもモニタリングしていますか?もし、それらについてもモニタリングしていれば、「何が起きているのか?」だけではなく「何が原因なのか?」についてもいち早く察知することが可能となります。最重要データだけではなく、その構成要素も含め、構造的にモニタリングを行うようにしましょう。
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- この記事の著者
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神子島 隆仁(カゴシマ タカヒト)
ITエンジニアを経て、分析コンサルタントとして、社内外クライアントの経営及びマーケティングに関する意思決定を支援。データサイエンスが、ビジネスだけではなく、よりよい社会の実現に役立つことを夢見て、活動中。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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白石 嘉伸(シライシ ヨシノブ)
マーケティング・コミュニケーションの可能性に興味を持ち、デジタルマーケティング(調査分析、行動データからのインサイト発掘、マーケティングの自動化など)のプランニングや支援を行う傍ら、その具体的な表現となるデザイン、設計にも興味を持ちインフォメーションアーキテクト、人間中心設計専門家としても活動。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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黒沢 健二(クロサワ ケンジ)
1982年生まれ。リサーチャー/アナリストとして、大手IT企業での調査・分析や、大手不動産メディアでのビックデータ分析設計をはじめ、仮説構築から施策立案、検証まで様々なプロジェクトに携わる。学生時代にイタリアでデザイン設計を学んでいたこともあり、デジタル技術の進歩を見据えた人の創造性のあり方が興味関...
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