仮説のチェックとあいまいさの排除
課題を設定し、仮説の洗い出しが終了したら、次のステップは、「分析ゴールへの翻訳」です。あいまいさを含んだ「ビジネスの世界」の表現を、あいまいさのない「データの世界」の表現に翻訳します。前回の内容のおさらいを兼ねて、具体的な例で考えてみましょう。
あなたは、会員向けサービス会社に勤める中間管理職です。これまでは会社の売上が順調に増加していましたが、最近は伸び悩んでおり、その解決策の立案を上長から指示されました。そこで、以下の課題を設定し、仮説を洗い出しました。
- 課題:売上が伸び悩んでいる
- 仮説:顧客の離脱率が増加している
念のため、仮説の良し悪しをチェックしてみましょう。チェックポイントは、「検証が可能である」、「課題の解決策(打ち手)につながる」の2つでしたね。
まずは、「課題の解決策(打ち手)につながる」ことから確認します。その際、課題が対象としているもの(ここでは、売上)を、仮説の内容をもとに、構成要素や要因に分解し、「ロジック・ツリー」と呼ばれるツリー状に構造化することが役立ちます。
課題と仮説の関係性をロジック・ツリーで構造化することにより、仮説が課題の解決策(打ち手)につながるかどうかを確認するだけでなく、より重要な仮説を見逃していないかどうかを確認することも可能です。
なお、構成要素への分解方法は一通りだけとは限らず、むしろ無数に存在することの方が一般的です。売上の分解例として、サービスのカテゴリ別、顧客属性(性別、年齢層など)別、店舗別など、無数に存在します。それらを網羅的に調べることは非効率であるため、あらかじめ仮説(その時点で最も答えに近いと思われる仮の答え)を洗い出しておくことが重要です。
仮説が「課題の解決策(打ち手)につながる」ことを確認したら、次は仮説が正しいかどうか「検証が可能である」ように、仮説を精緻化します。今回の例では、以下のように具体的に定義します。
- 離脱率 = 前月に会員登録した者のうち、登録後1カ月以内に離脱(退会)した者の割合
なお、同じ「離脱率」でも、定義を変えれば分析の仕方や結果が異なりますし、業種や企業によってもさまざまな定義が存在します。
後は、数値目標を設定すれば、分析ゴールへの翻訳は完了です。
- 離脱率を10% 低下させる"必要なデータ = 利用可能なデータ" とは限らない