2013年5月25日、公益財団法人京都高度技術研究所アステム(ASTEM)が主催するビジネス総合力養成講座「京都D-School」のオープニングセミナーが開催され、京都を代表する大企業から中小企業、ベンチャー企業、ベンチャーキャピタルなど様々な顔ぶれが集まった。午前は同志社大学教授・山口栄一氏によるイノベーションの講義、午後は京都D-Schoolが通年で活用するビジネスモデルを紐解くツール「ビジネスモデルキャンバス」のワークショップを翻訳者の小山龍介氏のファシリテーションのもと参加者全員が行った。第1回の今回は、山口教授の講義内容をレポートする。
イノベーションとは経済的・社会的価値を生み出すあらゆる改革行為のこと

京都D-Schoolの開講記念講演第1部は、同志社大学教授 山口栄一氏の講義から始まった。

イノベーションの2つの鍵となる「回遊」と「創発」という概念が、京都D-Schoolの基盤となる。過去のイノベーションの事例を、「イノベーションダイアグラム」という図解法に照らし合わせながら理解を深めていく。
講義は、まず初めに、イノベーションの定義を明らかにするところから始まった。
経済学者であるヨーゼフ・シュンペーターによる定義では、「イノベーションとは、経済活動において生産手段、資源、労働力などを、今までとは異なる仕方で「新結合」 すること」だという。
シュンペーターのイノベーションの定義として次の5つの項目がある。
- 未知の新商品や新品質の開発
- 未知の生産方法の開発
- 新市場の開拓
- ものの新しい供給源の獲得
- 新組織の実現
日本では、イノベーションを「技術革新」と翻訳したことによって、長年イノベーションの本当の意味を理解できていなかったとの指摘があった。そのうえで、シュンペーターの定義を1つにまとめると「経済価値および社会価値をもたらすあらゆる改革行為であり、“技術革新とは限らない”」となるという。
上述のシュンペーターのイノベーションの定義は、次の2つに分類できるとした。
- 技術イノベーション:1.未知の新商品や新品質の開発、2.未知の生産方法の開発
- 経営イノベーション:3.新市場の開拓、4.ものの新しい供給源の獲得、5.新組織の実現
さらに技術イノベーションと経営イノベーションに属さない、第3の変革があるとし、それを「感性イノベーション」とした。感性イノベーションとは、ブランドや信頼感、またはクオリティ・オブ・ライフといった広い意味での美を追究する変革であるという。
技術イノベーション、経営イノベーション、感性イノベーションの3つの軸を三次元的に展開した図が下記となる。

図のように、3軸で作られた立体に矢印を引くような変革が、現代的なイノベーションであるという。
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亀田 真司(カメダ シンジ)
1981年大阪生まれ。即興を主とした音楽家としてコンテンポラリーダンス等に作品を提供。駒場 アゴラ劇場などで公演、演奏を行う。その後、ITベンチャー企業でIA・デザイン・Webマーケティングを担当。現在フリーランスとしてセミナー、ワークショップ、読書会を通じてビジネスモデルとデザイン思考のワークショップを開催。2013年度、京都D-Schoolの公式サポーターとして、年間を通してレポートの執筆や情報発信を行う。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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