イノベーションとは経済的・社会的価値を生み出すあらゆる改革行為のこと
京都D-Schoolの開講記念講演第1部は、同志社大学教授 山口栄一氏の講義から始まった。
イノベーションの2つの鍵となる「回遊」と「創発」という概念が、京都D-Schoolの基盤となる。過去のイノベーションの事例を、「イノベーションダイアグラム」という図解法に照らし合わせながら理解を深めていく。
講義は、まず初めに、イノベーションの定義を明らかにするところから始まった。
経済学者であるヨーゼフ・シュンペーターによる定義では、「イノベーションとは、経済活動において生産手段、資源、労働力などを、今までとは異なる仕方で「新結合」 すること」だという。
シュンペーターのイノベーションの定義として次の5つの項目がある。
- 未知の新商品や新品質の開発
- 未知の生産方法の開発
- 新市場の開拓
- ものの新しい供給源の獲得
- 新組織の実現
日本では、イノベーションを「技術革新」と翻訳したことによって、長年イノベーションの本当の意味を理解できていなかったとの指摘があった。そのうえで、シュンペーターの定義を1つにまとめると「経済価値および社会価値をもたらすあらゆる改革行為であり、“技術革新とは限らない”」となるという。
上述のシュンペーターのイノベーションの定義は、次の2つに分類できるとした。
- 技術イノベーション:1.未知の新商品や新品質の開発、2.未知の生産方法の開発
- 経営イノベーション:3.新市場の開拓、4.ものの新しい供給源の獲得、5.新組織の実現
さらに技術イノベーションと経営イノベーションに属さない、第3の変革があるとし、それを「感性イノベーション」とした。感性イノベーションとは、ブランドや信頼感、またはクオリティ・オブ・ライフといった広い意味での美を追究する変革であるという。
技術イノベーション、経営イノベーション、感性イノベーションの3つの軸を三次元的に展開した図が下記となる。
図のように、3軸で作られた立体に矢印を引くような変革が、現代的なイノベーションであるという。