Pivotalは「第3のプラットフォーム」に特化した新しい企業
EMCジャパン常務執行役で、Pivotalジャパン取締役会長を兼任する徳末哲一氏は記者会見オープニングに「いままで関わってきたなかで最も面白い(立ち上げである)」と述べた。同氏はピープルソフト日本法人やGreenplumの日本における事業(後にEMCが買収)などの立ち上げを経験してきた人物。
Pivotalを「メインフレーム、クライアンド・サーバーに続く『第3のプラットフォーム』と呼ばれるものに最初から特化した新しい企業」と紹介し、新しい技術から構成されるプラットフォームを作り上げていくところに醍醐味を感じているようだ。「Pivotalの発展を見守っていただきたい」と述べ、Pivotalジャパンのカントリーマネージャーとなる正井拓己氏にマイクをバトンタッチした。
PivotalそのものはEMCグループが次世代を見すえて設立した新会社である。CEOはVMwareでCEOをしていたポール・マリッツ氏。従業員数はグローバルで1250名(4月1日現在)、うち日本は13名(8月1日現在)。売上規模は2013年は3億ドル、2017年に10億ドルに伸ばす計画だ。
EMCグループが持つ「エンタープライズPaaS」領域をPivotalに集約、再編成
Pivotalの新設により、EMCグループが持つエンタープライズPaaSに関するソフトウェアやサービスはPivotalに集約するように再編成された。これでEMCグループはEMCがストレージ(情報基盤)、VMwareが仮想化(ソフトウェアで抽象化されたデータセンター)を担い、この上層にPivotalをすえることで「3段持ち」となる。他ベンダーで見られる垂直統合ではなく、「水平協業」となっているところが特徴だ。正井氏は「次世代プラットフォームのナンバーワン・ベンダーを目指す」と胸を張った。
現時点におけるPivotalが持つ製品群はデータ層、クラウド層、アプリ開発層の3層で分類できる。データ層にはデータウェアハウスのGreenplum、HadoopディストリビューションのPivotal HD、インメモリ型(NoSQL)データベースのGemFireなど。クラウド層はPaaS向けオープンソースソフトウェアのCloud Foundry、JavaフレームワークのSpring。Cloud Foundryについては最近IBMとPivotalがプラットフォーム開発での協業を発表したばかりだ。そしてアプリ開発層にはアジャイル開発管理のPivotal Labs、データサイエンティストを抱えビッグデータ分析を支援するPivotal Data Science Labsがある。
今後の技術的なハイライトとしてはPivotal HDで提供されるHAWQやHELIOSがある。HAWQはHadoopにSQLの表現力を追加して分析に役立てることができるため、SQLスキルセットを持つ人材を生かすことにもつなげられる。いまのところ同社のベンチマークではHAWQはHadoopでクエリや分析に使えるHIVEやCloudera Impalaと比べ、数十倍から数百倍高速という結果が出ている。HELIOSはエンタープライズ向けリアルタイムデータサービスで、センサーデータをストリームで取り込みアプリにつなげるもの。
ただしPivotalが目指しているのはこうした細かな製品や機能拡充だけではない。本命は2013年10~12月にPivotalがリリースを計画している「Pivotal One」だ。これはPivotalが持つ製品群で形作る次世代プラットフォームであり、統合的なソリューションとなるもの。ただし当初のリリースでは構成要素はSpring、tc Server(Javaアプリケーションサーバー)、Pivotal HD、Cloud Foundryなどにとどまるものの、ほかの製品のPivotal Oneへの合流も順次とのこと。
Pivotal製品戦略について語ったPivotalプロダクト・マーケティング&マネージメント担当バイスプレジデントのジョッシュ・クラー氏は「Pivotal Oneへの旅は2013 Q4に始まる」と述べた。Pivotal OneはPivotal技術で作る次世代のプラットフォームであるだけではなく、Pivotalのミッションそのもの。
次世代のプラットフォームを創造するPivotalの旅がこれから始まる。