ビッグデータ分析でオリンピックを支援する
さて、ソーシャルネットワーク、クラウド、ビッグデータ、モバイルといった最新ITキーワードの領域は、2020年のオリンピック開催時にも確実に活用されているはずだ。ソーシャルネットワークではオリンピックに関するさまざまな情報が共有され、クラウドベースのシステムでチケット販売や宿泊所の予約がなされる。ビッグデータを分析し、人の流れを予測してスムースで安全な運営を行う。当然、さまざまな情報を受け取り、発信するのはモバイル端末だ。
ラグビー日本代表のセンサーデータの活用については、DB Onlineでも以前に紹介している。おそらくこれからの時代、さまざまなデータを分析し「科学的に強くなる」取り組みはさらに盛んになるだろう。そういった観点で考えると、ビッグデータの活用とオリンピックは関連が出てきそうだ。データを分析し、その知見を活用し企業の競争力を高める。これは、スポーツ競技のチーム力を高めるのと、到達点は異なるがプロセスや分析手法はかなり応用が利きそうだ。
先日、「IBM Business Analytics Summit Japan 2013」が開催された。その基調講演でIBM Corporation Business Analytics Products & Solutions Software Groupのバイスプレジデント ベス・スミス氏は、「先進的なアナリティクスを利用できる企業は、できない企業よりも32%の投資効果を得ている」と言っていた。これをスポーツに置き換えれば、先進的なアナリティクスを利用することで、そうでない国よりも30%はメダルの数が増えることになるのでは。精神論で強くなる時代は終わり、アナリティクスが重要に。少なくとも、他の国がデータ活用をしてくるならば、まずはそれと同じ土俵に立つ必要がある。その上での、選手の精神力や努力だろう。
データは、取得し分析するだけではダメだ。「優れた企業は、データへのアクセスをうまく活用していて、そこからインサイト(知見)を得ており、インサイトを行動に結び付けています」とスミス氏が言うように、得られたインサイトを実際に選手のスキルアップ、チーム戦力アップに結び付ける行動ができなければならない。なので、膨大なデータを集めることよりも、いかに迅速にそれを行動に結び付けられるかが鍵となる。
スミス氏はまた、ビッグデータの活用ではリアルタイムに分析すべきものと、蓄積し予測するものがあると指摘していた。このあたりのことをきちんと区別して解説している例は、まだまだ少ない。前者はリスク管理などで有効、後者は製品の適正価格を決めるといった正確な予測に必要だ。スポーツの世界でも、リアルタイムに情況を分析し、次にとるべきリスクのもっとも少ない戦術を導き出す使い方がある。実際に、バレーボール日本代表は、そういったデータ活用を実践し勝利している。一方で、選手の育成などであれば、蓄積したデータを利用しどのようなトレーニングをすれば選手がどのように成長するかを、正確に予測する使い方が考えられる。
道路や施設を作ってインフラ面でオリンピックに貢献するだけでなく、ビッグデータを活用しオリンピックを支える世界もあるはず。IBMなどは、すでにそのあたりにかなり積極的に取り組んでいる予感もする。せっかくの東京でのオリンピック、日本のIT力を結集し、さまざまな面でよりよいオリンピックとなるよう取り組んで行ければと思うところだ。