タブレットとスマホアプリで損保業務を革新
東京海上日動システムズは今年10月1日から、代理店向けシステムとして、タブレットを活用したペーパーレスでの申し込み手続き「らくらく手続き」を導入する予定となっている。新システムでは、保険の対面販売時にタブレットを使って契約内容や補償内容、重要事項などを説明し、最大4商品までの申込手続きを1回で完結できるようにする。また、タブレットからオンラインシステム「TNet」にインータネット経由でつなぐことでペーパーレス化を実現、書類紛失といった個人情報の漏洩リスクを減らす。
あわせて、10月から契約者けに配布しているスマートフォンアプリ「モバイルエージェント」のアップデートも予定している。アップデートでは、損害保険契約者がスマートフォンから事故報告を行う際に、GPS機能を使って顧客の現在地をコールセンターがすばやく把握できるようにする機能を追加。また、レッカー手配を簡単に行えるようにし、確認時間や到着時間を大幅に短縮できるようにする。
宇野氏は、これらシステムとアプリの提供について「お客様接点を革新する取り組みとなる。インターネットとモバイルの普及は、移動手段が鉄道から自動車に変わったくらいの大きな転換だ。新しいシステム、仕組みを使って、顧客の利便性向上を図る」と説明した。
東京海上日動は、1991年から代理店システムを稼働し、1994年に基幹系システムのネットワークをTCP/IPベースに切り替えるなど、IT活用では先進的な企業として知られている。IT活用の背景には、損害保険業務の特徴として、商品に関する説明事項が多いこと、原価を出すためにたくさんの情報が必要になること、単価の割に契約手続きが重いこと、代理店や保険募集人とのコラボレーションの必要性などから事務の効率化が求められてきたことなどがある。
たとえば、自動車保険の情報量は申込書1枚あたりで約8000字にもなる。また、自動車保険は高いもので月8600円程度であり、生命保険が月平均4.4万円であるのに比べると単価が安い。代理店は20万店、保険星入人は220万人という規模だ。こうしたなか、保険料の計算、事務の効率化、代理店の負荷軽減策といったように「IT戦略は事業戦略と一体となって推進されてきた」(宇野氏)という。
一方で、宇野氏は「技術の主役はいまや企業ではなく個人に移っている。我々のシステムはそれに追いついておらず、完全に後手にまわっていた」との認識もあった。そのうえで「置いてけぼりにならないよう」インターネットやモバイルへの取り組みを積極的に進めてきたという。
たとえば、2010年には携帯電話の位置情報と連動して、必要な保険をいつでもどこでもかんたんに加入できるようにした「ワンタイム保険」を販売した。これは、電車で空港に近づくと、位置情報などから、海外旅行傷害保険の情報を携帯電話にプッシュ配信し、電車のなかで契約まで済ませることができる商品だ。海外旅行のほか、ゴルフ場やスキー場に近づくとスポーツ保険もある。
また、顧客の利便性向上のために、2011年にはスマートフォンアプリ「モバイルエージェント」を開発した。Androidマーケットなどから無料でダウンロードできるHTML5ベースのアプリで、開発コンセプトは「持ち運んでいつでも使える保険・サービス」。アブリを利用すると、代理店や事故受付センター、カスタマーセンターの電話番号といった保険に関する連絡先や自分の契約内容を確認することができる。
「モバイルエージェントは、代理店とお客様のインタフェースをいかにいかによくするかという発想で開発した。Androidのバージョンの違いを確認するために機種を探しまわるなどこれまでにない苦労があった。また、電話番号の一覧をどう見せるかなどについて、代理店にヒアリングを行いベストプラクティスとしてアプリケーションに反映させた」(宇野氏)