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ガートナーの海外アナリストに聞いてみた

ケン・デュレイニーさん、MicrosoftやIntelはモバイルで巻き返しができますか?

その1


 10月15日から17日の3日間、ANAインターコンチネンタルホテル東京で「Gartner Symposium ITxpo 2013」が開催されます。ガートナーが国内で主催するITイベントの中でも一番規模が大きく、海外からもトップアナリスト/コンサルタントが多数来日する、見どころ聞きどころたくさんのシンポジウムです。今回、本シンポジウムの前に、来日予定の著名アナリストに最新のIT事情についてメールでインタビューする機会をいただいたので、3回に分けてご紹介していきたいと思います。第1回はガートナー リサーチ部門 バイスプレジデント 兼 最上級アナリストのケン・デュレイニー(Ken Dulaney)さんに、世界のモバイル市場について伺いました。

Windows Phoneはなぜ売れぬ

デュレイニーさんにお話をきいてきました
デュレイニーさんにお話をきいてきました

 --先日、iOS 7が公開され、iPhone 5s/5cも発売開始となりました。世界的なシェアで見るとAndroidが圧倒的な強さを見せていますが、iOS7およびiPhone 5s/5cの登場で今後のシェアに変化は起こるでしょうか。

 デュレイニーさん: AndroidがNo.1であること、Appleがそれに続くNo.2であること、この状況は今後もしばらく続くでしょう。北米ではiPhoneのほうが優位なビジネスを展開していますが、それ以外のリージョンでは圧倒的にAndroidが強い。いずれにしろアプリケーションデベロッパはこの2大エコシステムをターゲットにアプリ開発を進めていくことになります。

 --個人的に気になったのは、中国向けの廉価版と想像されていた5cが意外と高価だったことです。これはAppleは新興国のモバイル市場をまだターゲットにしていないと判断してもよいものでしょうか。

 デュレイニーさん: たしかに5cの価格は我々の予想より高いものでした。しかしこのことから、Appleは(新興国の)スマートフォン市場におけるシェア争いにはあまり興味がなく、むしろマージンの確保を積極的に図る戦略に転換したと思われます。

 Appleはこれまで、新しいモデルを発売すると、その前のモデルをより安い価格で市場に提供するという形をとってきました。しかしiPhoneのメタルケースは、コンポーネントとして見た場合、かなり高価なものです。本体価格を下げてしまえばマージンの確保がむずかしくなり、ビジネスとしてうまみがない。だから今回、メタルケースの5sとプラスチックケースの5cの2つのモデルを同時に出したのでしょう。メタルケースの原価はおよそ80ドルと推測されますが、プラスチックケースはおそらく10ドル程度です。どちらが売れても大きなマージンを確保できるようになっています。

 --つまりAndroidが展開するような新興国での低価格競争はAppleにとってメリットがないと。

 デュレイニーさん: Appleはいわゆる"Apple信者(Apple Believers)"に買ってもらいたいと思っているので、価格を見て購入するような層はあまり狙っていないとはいえますね。

 --Android、iPhoneという2強からはるか遠くに引き離されて3位となっているWindows Phoneですが、MicrosoftによるNokiaの端末部門買収はこの状況を若干でも好転させる要素はあるでしょうか。メディアでは「負け組どうしの心中」などさんざんな書かれようですが、たとえば市場シェアを10%くらいまで激増させることは可能だと思われますか。

 デュレイニーさん: ガートナーは今回の買収は両社にとって非常に良いことだったと評価しています。実際、デバイスとしてのWindows Phoneはとてもすぐれたプラットフォームです。ではなぜ売れないのか。それはMicrosoftがプアなマーケティングをし続けているからです。やるべきことをやっていない、だから製品が良くても売れないのです。

 --Microsoftがモバイルでやるべきこととは?

 デュレイニーさん: 現在Microsoftが抱えているワールドワイドのサプライヤとの関係を良好にすること、そして今や孤児となってしまっているSurfaceもそうしたサプライヤで製造すること、そしてNokiaの財政基盤を確固たるものにすること。やるべきことは山のようにあります。

 Windows Phoneのシェアを上げるために重要なポイントはもうひとつあります。アプリケーションの数を増やすことです。Windows Phoneのアプリケーションは15万程度しかありません。一方、AndroidやAppleは100万ものアプリが動きます。マーケティング路線を修正し、アプリケーションの数を増やす - これを忠実に実行すれば、時間はかかるものの、シェアは上がるでしょう。

 --デュレイニーさんはガートナーのレポートで「Microsoftの"Windows Everywhwere - デスクトップでもスマートフォンでもタブレットでも同じエクスペリエンスを!"という戦略は、コンシューマにもエンタープライズにもまったく受け入れられていない」と書かれています。これを改善するためには

 ・エンタープライズかコンシューマのどちらかに特化する
 ・Windows Phoneを捨て、iOSやAndroidのようにモバイル専用OSを開発する
 ・もしくはWindows 8を捨て、デスクトップ専用OSを作りなおす
 ・その他

 のどれが最善だと思われますか。

 デュレイニーさん: エンタープライズかコンシューマに特化するというのはありかもしれません。しかし(デスクトップもモバイルも)OSの再開発は非現実的で、取るべき戦略ではありません。

 Microsoftがプラットフォームに対してやるべきこと、それはWindows Everywhereを推進することではなく、個々のプラットフォームを魅力的にし、ユーザが熱狂するようなエキサイトメントを届けることです。もっと具体的にいうと、先ほども触れたように魅力的なアプリケーションを増やすことです。ユーザはどこにでもWindowsがある状態など望んでいません。たとえば家電製品を考えてみてください。もしSonyが"Sony Everywhere"みたいな戦略を押し付けてきたら一般の消費者はどう思いますか? ユーザは好きな製品を好きな場所で、ファッションのように組み合わせて使いたいのです。

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Intelが抱える厄介な問題

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この記事の著者

五味明子(ゴミ アキコ)

IT系出版社で編集者としてキャリアを積んだのち、2011年からフリーランスライターとして活動中。フィールドワークはオープンソース、クラウドコンピューティング、データアナリティクスなどエンタープライズITが中心で海外カンファレンスの取材が多い。
Twitter(@g3akk)や自身のブログでITニュース...

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