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行ってもいないOracle OpenWorld 2013の感想は「オラクルにはクラウドよりヨットがお似合い」


この連載もずいぶんとほったらかしにしてしまいましたが、季節はすっかり秋となりましたね。秋といえばエンタープライズITの記者にとっては怒涛の出張シーズン、でワタクシは現在、McAfeeの年次イベント「McAfee FOCUS 2013」の取材のため、だだっ広いラスベガスのホテルの一室で、これを書いております。年内はあと何回、出張あるんだっけ…。ちなみにFOCUSの記事はEnterpriseZineに随時掲載する予定ですので、興味ある方は読んでいただけるとうれしいです。

 さて、秋のITイベントでいちばん話題になるものといえば、ご存じ、サンフランシスコの街を真っ赤に染めるOracle OpenWorldです。DB Onlineにも谷川チーフの記事がたくさん掲載されていたので読まれた方も多いと思います。筆者は今年、参加することはできなかったので、OOWを総括する意見を言う立場にないのは承知ですが、個人的にはOOW最大のニュースが「ラリー・エリソンCEOがキーノートをぶっちぎってヨットレース(America's Cup)の応援に行った」ということをひどく残念に思っています。CEOが自社イベントのキーノートをぶっちぎった、そのこと自体もがっかりですが、それよりもオラクルがクラウドビジネスにどれだけ本気で取り組もうとしているのか、顧客や投資家に対して示す最大のチャンスをCEOみずからが放り投げたという事実に、本当に落胆させられました。

 ラリー・エリソンがぶっちぎったキーノートの内容が、初日に行われたインメモリデータベースに関するほうだったら、まだわかります(いや、それもダメだけど)。でもドタキャンしたクラウドに関するキーノート、これは、ヨットレースが混戦になって会場から出られなかったというなら、ヘリコプターを呼んででもラリーが駆けつけてプレゼンすべきものでした。というより、レースの日程は最初からわかっていたのだから、キーノートとぶつけることじたい、いったいオラクルはどういう日程調整していたのかと本当に不思議に思えてなりません。

 なぜクラウドに関するキーノートをラリー自身が行う必要があったのか。それはオラクルがクラウド市場であきらかにメインプレーヤーではないからです。もっとはっきり言えば現時点ではクラウドの負け組に属していると言っても過言ではないでしょう。パブリッククラウド、プライベートクラウド、ハイブリッドクラウド、IaaS、PaaS、SaaS、MBaaS、etc... クラウドを指す言葉は山のようにありますが、そのどのエリアでもオラクルはまったくといっていいほど存在感を示せていない。

 たとえば8月にガートナーが発表したクラウドサービスのマジッククアドラントを見ると、そのことがよくわかります。ここにはオラクルは名前さえ載っていない、つまりクラウド市場ではプレーヤーとして認められていないのです。

 また、筆者は7月にサンフランシスコで行われたクラウドのイベント「GigaOM Structure 2013」に参加しましたが、ここでもオラクルの話題を聞くことは皆無でした。ベンチャーもビッグベンダも、およそクラウドをビジネスにする企業ならこぞって参加するGigaOM Strtuctureですが、話すほうにも聞くほうにもオラクルが登場することはついぞありませんでした(Structureのフォトレポートはこちらこちらをどうぞ)。

 それくらいクラウドの世界で存在感が薄いオラクルが、これからどう巻き返しを図ろうとするのか。もしクラウドの負け組のままでいることを拒むのであれば、挑戦者として全力で取り組んでいる姿勢を見せる必要があります。そのためには同社トップのラリー・エリソンが、真摯な言葉でもって顧客に語りかけなくてはならなかった。ですが、ラリー・エリソンとオラクルはみずからそのチャンスを潰しました。その行為が会場に集った顧客やパートナーをどれだけ落胆させたか、それはラリーの代わりに壇上に立ち、「Oracle Cloudは業界唯一のComprehensive Cloud(包括的なクラウド)だ」と強調した同社SVPのトーマス・クリアンの声に背中を向け、会場を離れていった人々の数の多さにあらわれています。

 クラウドよりもヨットが大切と態度で示したクラウドの負け組企業が叫ぶ"Comprehensive Cloud"をいったい誰が信頼するのか。筆者にはクリアンの"Comprehensive Cloud"という言葉がドラクエのパルプンテの呪文のようにむなしく響きました(意味不明な方、すみません)。

 筆者はヨットの世界に何の興味も関心もありませんが、ラリー・エリソンにとってクラウドで負けることよりもヨットで負けることのほうが屈辱的だったと理解しています。それはそれで良いことだとも思います。ラリー・エリソンはこれまでもその大胆な暴言もとい発言や行動が注目されてきた、業界でも数少ないキャラ立ちCEOです。実際、今回のことも「ラリーの平常運転」と評する人も少なくないです(とくに日本では)。ただ、奇行や暴言が許されるのはトップだからであって、プレーヤーにもカウントされていない立場でやることではないと筆者は思います。

 クラウド企業を日々取材している身からすると、今後は間違っても「オラクルはクラウドのリーディングカンパニーを目指す」などと言わないでほしいかな。それはリーディングカンパニーをめざして必死にビジネスを展開しているほかのベンダにも失礼だし、何より、顧客にやる気のなさを見せつけた責任は大きいと思うからです。まあ、「クラウドのリーディングカンパニーを目指す」といったところで、そのフレーズに期待を寄せる人は今回の件でがっくりと減ったのは確かでしょうけれど。

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五味明子(ゴミ アキコ)

IT系出版社で編集者としてキャリアを積んだのち、2011年からフリーランスライターとして活動中。フィールドワークはオープンソース、クラウドコンピューティング、データアナリティクスなどエンタープライズITが中心で海外カンファレンスの取材が多い。
Twitter(@g3akk)や自身のブログでITニュース...

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