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西内啓氏 「データサイエンティストって昔のハイパーメディア・クリエイターみたいですよね。10年後には名乗る人はいなくなる」


 ここ最近、ビッグデータ活用はブームから実践の域に入った感がある。そして、活用するのに必要な人材のデータサイエンティストにも熱い視線が送られ、各所で養成講座的なものも花盛りだ。そういった背景もあってか、データサイエンティストに必須のスキル「統計学」にも、注目が集まっている。そんな中、書籍『統計学が最高の学問である』の著者でもある統計家の西内 啓氏を講師に迎え、システムインテグレーターのTISが「ビジネスに活かす統計解析実践セミナー」を開催している。このセミナーは、これから10年間もっともセクシーな職業と言われるデータサイエンティストを養成するものなのか。そもそも、統計学をビジネスに活かすとはどういうことなのか、西内氏に話を訊いた。

分析ツールや分析手法よりも、分析前のデータ加工こそが大事

統計家 西内 啓氏
統計家 西内 啓氏

 これまでも多くのベンダーが、データ分析のためのツールを提供してきた。その歴史も長く成熟し、かなりいいツールが登場している。ところが、いまひとつ企業はそれらを使いこなせていない。「良い分析ツールがあっても、なかなかうまくいきません。問題は、内部の分析リテラシーです。そもそもデータ分析がしたくても、どこから手をつけていいかが分からないのです」と西内氏は言う。極端なことを言えば、ツールは何でもいい。まずは、統計学を学んだ人と分析をしたい人が、ある程度話が通じるくらいのレベルにならなければだめだと、西内氏は指摘する。

 分析ツールを使って何をするのか、そのためにはどんなデータをツールに投入すればいいのか。これらは、分析を行う前段階の部分。「ここをまずはしっかりやることが先決です」と西内氏は言う。なので、今回TISで開催しているセミナーでは、分析手法の話はほとんど出てこない。

 というのも、たとえば分析のためのコンピュータリソースが足りないなどの理由から、分析対象データの数に制約があるような場合は、どの分析手法を選ぶべきかは分析精度を上げるためにかなり重要だ。しかし、そういった制約がないのであれば、基本的なことだけを理解し代表的な手法を選択できれば、細かい分析手法の違いはそれほど気にする必要はない。手法よりもむしろ、分析するビジネスデータをいかに分析データへと加工するかが重要なのだ。

TIS株式会社
産業事業本部 東日本産業事業部
ストラテジックソリューション
営業部主任
堀 真也氏
TIS 産業事業本部 東日本産業事業部 ストラテジックソリューション営業部主任 堀 真也氏

 「普通こういうセミナーでは、さまざまな統計解析の手法を教えるのイメージがありました。ところが西内さんのセミナーでは、何を分析すべきか?つまり、分析データをどう作るかが先でした。これはかなり斬新で、むしろ最初は違和感すら感じました」と言うのは、TIS 産業事業本部 東日本産業事業部 ストラテジックソリューション営業部主任の堀 真也氏だ。今回のセミナーを開催する前に、まずはTIS社内でこれを実施してみた。その内容は、分析の前段階のデータの加工の部分にかなり重点が置かれたもので、「かなりゴリゴリとSQLを書かせるので、マーケッター向けにはちょっと無理なのではと思いました」というのが、堀氏の最初の印象だったのだ。

 実際、データサイエンティスト養成や統計手法のセミナーでは、分析手法を学びそれらを使って分析の実習などをするものが多い。そういったセミナーの場合には、すぐに分析できるようにデータはあらかじめ加工済みの物が用意されており、分析手法を選んでそれをツールに渡せば、あとはほぼ自動で結果が返ってくる。これに対し西内氏のセミナーでは、多くの時間を分析作業の前段階のレクチャーと実習に費やす。分析作業の前段階のレクチャーと実習が中心なのだ。

ビジネスの現場には統計を活用するデータ分析のニーズがある

 西内氏は、世の中が今ビッグデータに注目している状況を、以下のように分析する。

 「データが溜まってきて、それを処理できるようになりました。なので、そこから何かができるのではと考えるようです。そして、ビッグデータの活用事例も華々しいものが出ているので、うちでも何かできるのではと思ってしまう。また、世の中が複雑化し、絶対的な成功法則が見えにくくなったというのもあるでしょう。今までなら、品質が一番高ければそれで売れる、あるいは広告をたくさん打てば売れるというのがありました。ところがそれらが、最近は通用しない。今まで通り経験と勘でいくにしても、その打率を上げるにはデータ活用するべきだと考えるようです」(西内氏)

 堀氏もまた「企業では、いままでの勝手知ったるKPIが通用しなくなっています」と言う。これまで利用してきたKPIが通用せずうまくいかなくなり、なかなかビジネスが先に進まない。なので、ビッグデータ分析に活路を見いだそうとしているとの見解だ。

 こういった企業の動きに対し、多くのITベンダーはHadoopで大規模分散処理だ、あるいはビッグデータ用の大規模サーバーだと「箱物」寄りのソリューションを中心に展開している。今回のような統計について、さらには分析の前段階に重点を置いているセミナーは、それらの動きとは一線を画すものだ。

 TISは行動分析などを行う新たなマーケティングソリューション『テクモノス TECHMONOS』を提供している。箱物だと企業の情報システム部門と話をすることになるが、こういった新たなデータ活用のソリューションの場合は、顧客企業の業務現場の人、あるいはマーケティング担当者などと話をする機会が増える。そうなると、いままであまり見てこなかった、データ分析ニーズの話になるのだ。そこから、今回のような西内氏のセミナーへと発展したというわけだ。

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今後10年はセクシーな職業でも、10年後にはごく当たり前に

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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