なぜ、“バラバラなIT”になってしまうのか?企業のグローバル化とITの課題
国内企業の海外進出が本格化するにつれ、ITの課題は多様化している。寄藤氏は、IDC Japanが2013年6月に実施した「国内企業の海外ITに関する調査」の結果をもとに、海外進出にともなって何がITの課題になるのかを紹介した。
それによると、1位は全回答中の約20%を占めた「グローバル規模でのシステム構築」で、2位が「グローバルでの業務ブロセスの標準化」、3位が「海外市場特性に応じたシステム構築」、4位が「グローバルでのITガバナンス強化」となった。また、6位には「グローバルでのアプリ標準化」、7位には「グローバルでのITインフラ集約」などがそれぞれ入り、上位にランクインした項目の傾向を見ると、「標準化、ガバナンス、集約に関する課題が散見される」結果になった。
寄藤氏は、このように標準化や集約が課題になるのは、ITがバラバラになっている現実の裏返しだと指摘。では、なぜITがバラバラになるのかというと、各国の事情に合わせてビジネスを展開し、そのビジネスのプロセスに合わせてITが構築されるからだという。
「ASEAN 4と呼ばれるタイ、マレーシア、フィリピン、インドネシアを見るだけでも、宗教、文化、商習慣、ライフスタイルに大きな違いがあることが分かる。こういう状況では、国ごとに同じやり方でモノを売ろうとしても売上は上がらない。それぞれの地域のやり方に合わせて販売などの業務プロセスを作っていく必要がある。するとシテスムもその業務プロセスに合わせて構築することになり、結果としてITは、国ごとにバラバラなマルチナショナルになる」(寄藤氏)
グローバル化のなかで、ITは多国籍化してしまうというわけだ。また、ITがこのように地域ごとに分散していくと、予算も分散化する。同じ調査で「海外拠点/子会社が独自に決めているが、本社は把握していないIT予算/支出はありますか」との質問を行ったところ、「ない」との回答が50%であったのに対し、「ある」との回答は31%、分からないは19%だった。およそ3社に1社が、本社の知らないIT予算が海外拠点で執行されていると考えている結果となったのだ。
また、興味深いことに、海外売上高比率が高まると、「ない」が減り、「ある」が増えていく傾向がある。海外売上高比率が10%未満では「ある」は9.1%だったが、海外売上高比率が10~30%では「ある」が33.3%になり、海外売上高比率が30~60%では「ある」が41.7%になる。「海外進出が進むに連れて、ガバナンスが効かなくなるという傾向が見られる」(同氏)わけだ。