IT投資は回復するも戦略的な投資割合が増えない不安
とはいえこの回復の兆し、手放しでは喜べない状況だという。今回の調査で、たとえば来年以降もIT投資を増やすと回答している企業の数は少し減っているのだ。トータルの数字は基本的にプラス方向なので、来期予想は過去5年では最高となっている。しかしながら、先行きは若干不透明。消費税増税は、やはり懸念材料の1つとなりそうだ。
そして、今回の調査結果から明らかなのは、ビジネスが好調と認識している会社が投資を増やしていること。これ、当たり前と言えば当たり前だが、ビジネスに好調感が見えない会社は増やせていない。つまりは本業ビジネスが好調という会社が減れば、IT業界全体にネガティブな状況が生まれかねないわけだ。
ネガティブな可能性を残している原因の1つが、IT投資全体が増えたにもかかわらず戦略的な投資の割合が増えていないこと。維持メンテナンス、保守開発などの「今あるシステムを動かし続ける費用」と「戦略投資」の比率が、じつは過去最低だったのだ。このあたりが、まさに手放しで喜べない理由と言えそう。ここ数年とにかくコスト削減でお金を使わないようにしてきたが、「13年度は財布のひもが緩んだのかもしれません」と館野氏。言い方を変えれば、13年はポジティブにIT投資を行ったというよりも、「コストがかかった」と見ることもできる。「IT投資が、ビジネスの革新に振り向けられたかは疑問です」と館野氏は言う。
この傾向は本業ビジネスの不調な会社では、さらに顕著になる。そのような企業は定常投資が75%、戦略投資は25%しかないのだ。これでは企業の競争力はなかなか向上せず、好調な企業との差がさらに開きかねない。