日本国内におけるデータセンター開設は、昨年5月に来日したスティーブ・バルマー元CEOが発表したもので、その後、開設時期は2014年前半であるとを明かされていた。Windows Azureは2010年からサービスを開始したが、これまでは日本国内にデータセンター拠点がなかった。このため、遅延を懸念する国内のユーザーであっても、東アジア(香港)や東南アジア(シンガポール)のリージョンを利用をえなかった。日本国内にデータセンターを開設することで、そうしたユーザーや、データを海外のデータセンターに置きたくないといったユーザー、国内だけで災害対策を行いたいといったユーザーのニーズにこたえる。
代表執行役社長の樋口泰行氏は「日本データセンター開設は、新CEOのサティア・ナデラが推進したもの。3年にわたって検討を行い、早期利用プログラムに参加いただいた36社とともに検証を進めた。実証済みの状態でスタートできる」と、準備期間があったことで、安定したサービス運用ができると説明した。
日本リージョンを利用する際は、クラウドサービスや仮想マシンを作成する際に、リージョンとして表示される「日本(東)」「日本(西)」を選択する。特徴としては、大きく、他社の国外リージョンとくらべてレイテンシーが3倍以上改善すること、国内でデータを保持できること、国内で災害対策ができることを挙げた。レイテンシーが改善することで、たとえば、リアルタイム性が要求されるアプリケーションが作成しやすくなる。また、災害対策として、リージョンごとに3重レプリカを作成し、それを東日本と西日本で冗長化する6重レプリカとなるため、信頼性の高い対策を国内だけで実現できるようになる。
実際に国内データセンターに期待する声は多いとし、既存のユーザーの声をビデオメッセージとして紹介した。紹介されたのは、動画配信や並列コンピューティングでの利用を検討したいという静岡大学、タクシー配車アプリ「スマホdeタッくん」をAzure上で展開する東京ハイヤー・タクシー協会、レスポンスタイムの改善や今後ファイルサーバとしての利用を見込むサンリオ、これまで3本のネットゲームをAzureで構築しレスポンスタイムの改善を期待するスクウェア・エニックスの4社。
Azureのユーザー企業はグローバルで2000万社以上、国内では1万社以上に及ぶ。Azureの国内データセンター開設後は、パートナー企業120社が提供する300以上のソリューションを国内データセンターから提供できるようにしていく。
今後の戦略については、米マイクロソフトのWindows Azureビジネス&オペレーションズゼネラルマネージャー、スティーブン・マーティン氏から説明があった。同氏によると、ユーザー企業がクラウドをエンタープライズ領域で展開していくうえでのポイントは、大きく3つあるという。すなわち、既存ITとどう統合するか、混在するプラットフォーム環境をどうするか、セキュリティやコンプライアンスをどうするかという課題だ。
「Windows Azureは、Windowsという既存資産を活用でき、オープンソースコミュニティと連携してさまざまなプラットフォームを利用でき、セキュリティやコンプライアンスに配慮したサービスだ。1日あたり1000以上のペースで新規顧客が増えるなど、これまでにないスピードで成長を続けている」(マーティン氏)
具体的には、既存資産の活用については、「オンプレミスで構築したアプリケーションをクラウドに持って行ったり、逆に、クラウドに構築したアプリケーションをオンプレミスに戻すといったように、ハイブリッドクラウドを前提としたIT環境(Hybrid by Design)が構築できる点がメリット」(マーティン氏)だという。また、樋口氏も「クラウド専業ベンダーは、すべてをクラウドでといったアピールをするかもしれないが、われわれはオンプレミスとクラウドの両方に対応できる」と他社との違いを説明した。これは、Azureが、Windows ServerのHyper-Vを使ったクラウド環境であることからできることだ。
また、プラットフォームについては、.NETだけでなく、Java、php、Linux、node.js、python、Oracleといったさまざまな環境への対応が進んていること、セキュリティについては、Windowsプラットフォームにおける20年におけるセキュリティ開発ライフサイクルの流れを受け継いでいることが特徴だと説明した。
マイクロソフトは昨年、Azureを中心としたクラウド事業に約10億ドルを投資した。樋口氏は「日本のデータセンターを軸に顧客から期待される品質にこたえられるよう引き続き邁進していく」とし、クラウド事業への投資と顧客サポートを強化していくことを強調した。