ハードウェアの競争力の高さもあるが、ソフトウェアへの投資が評価されるポイントでもあるとデル株式会社 執行役員 エンタープライズ・ソリューションズ統括本部長の町田栄作氏は説明する。ストレージに高い付加価値をもたらす機能である圧縮や重複排除、自動階層化などをソフトウェアとして提供する。それにより「Software-Definedによるデータ運用の自動化」を実現しているのがデルのストレージというわけだ。
そして、デルがこれまでPCサーバーやPCの世界などで実現してきた、「コストパフォーマンスの破壊」をこのストレージの世界でも実施するのが新たなデルのストレージ戦略方針だ。
「『新しい当たり前』を創造する」(町田氏)―つまり、性能の高いストレージを圧倒的な低価格で市場に提供し、ストレージのビジネスにおける価格パフォーマンスにおける新基準、つまりデル流の当たり前を作り出していくのだ。その1つが、すべてSSDで構成されるオールフラッシュのストレージを、従来のハードディスク型のストレージと同じような価格で提供することだ。
なぜデルは、オールフラッシュのストレージを低価格で市場に提供できるのか。その理由の1つがSLC(Single Level Cell)型とMLC(Multi Level Cell)型のSSD両方をうまく利用しているからだと説明するのは、米国デル ストレージ担当バイスプレジデントのアラン・アトキンソン氏だ。SLCは信頼性も高いが価格も高い。MLCは安価だが、書き込みに対する信頼性が低い。書き込み回数の制限が、SLCよりもかなり早くきてしまうのが大きな欠点でもある。この2つをうまく組み合わせて使うことで、低価格を実現している。
「デルではソフトウェアに手を入れ、書き込み処理はSLCに書き込むようにしています。そして、バックグラウンドで1日3回、スナップショットをMLCのほうに書き込みます。この場合のRAIDレベルは5です。スナップショットをとったら、そのぶんのデータは必要ないのでSLCにはまた高速に書き込みができます。MLCは読み込み性能は高いので読み込みのパフォーマンスは十分得られます。この状況は常にモニタリングしていて、何らか問題が起これば逐次是正できるようになっています」(アトキンソン氏)
このSLC型とMLC型を組み合わせることで、すべてをSSDにしてもかなり安価なストレージが実現できる。さらに他社よりもコスト削減となるのが、保守サービス期間とソフトウェアライセンスの考え方だとアトキンソン氏は言う。多くのストレージベンダーが保守期間を3年としているところ、デルでは5年間。保守更新期限となる3年程度で新たな製品に更新することが多い他社に比べ、デルのストレージは長く利用できる。長く利用すると最新のものよりも性能面で不足が出るかもしれない。その場合は、階層型にデータを最適に配置するソフトウェアの機能を利用することで、性能の足りないストレージはアーカイブ用にするなどで有効に活用できる。
また、仮にハードウェアを更新しても、ソフトウェアライセンスがデルは永久なのでソフトウェアを買い換える必要がないことも大きなコスト削減につながる。これらにより、長期間にわたりデルのストレージを利用すれば他社製ストレージを選ぶよりもコストの差は大きく広がることになると言うのがデルの主張だ。
そんなデルの新たな戦略製品として今回発表されたのが、ミッドレンジ市場をターゲットとしたSC4000シリーズのSC4020というモデルだ。これは2U筐体に24台のディスクを搭載でき、筐体を追加することで最大120ドライブまで搭載可能。その際には413テラバイトの容量となるSANストレージだ。インターフェイスはファイバーチャネルとiSCSIで、上位機種のSC8000シリーズが持つ管理機能を基本的に踏襲している。
主な用途としては、独立型で「初めてSANストレージを導入するような顧客」(アトキンソン氏)。価格帯としては250万円から500万円程度がターゲットとなる。もう1つの利用形態がコアのストレージにはSC8000シリーズなどがあり、支店や部門でこのSC4020を使うというもの。適宜コアストレージと同期して分散型のエンタープライズストレージのエッジストレージとして利用する。また、3ウェイの同期機能を搭載しているので、低コストで導入できる災害対策用ストレージとしても最適だという。
「エンタープライズレベルのストレージの優位性を、エントリーレベルに提供します」(アトキンソン氏)
それを、極めて低コストで提供できるのがデルの強み。データが増え続ける中、ストレージコストの増大は、企業のIT部門にとって大きな課題であるのは事実だろう。今回のデルの「コストパフォーマンスの破壊」が顧客に響けば、ストレージの世界で熾烈な低価格競争が新たに始まるのかもしれない。