SQL Serverとの出会い
もう金麦の山は減ってきているころだろうか。インタビューしたとき、小澤さんの自宅には金麦が大量にあふれていたそうだ。理由を聞くと小澤さんは「誕生日だったので冗談半分でAmazonのほしいものリストに金麦のケースを登録して公開したら、次々と届いてしまって」と苦笑い。
Amazonで金麦を見ると、350ml缶で24本入りケースはおよそ2500円。普段お世話になっている友達への誕生日プレゼントなら悪くない。ポチれば終了でお手軽。周囲は予想以上に届いて慌てる小澤さんに笑った。律儀な小澤さんはブログのサイドバーにて「金麦の消費状況」を定量的に表示している。金麦はおよそ1日に2~3本のペースで消費されているのが分かる。小澤さんは神妙な顔で「通風にならないように気をつけます」と言う。
小澤さんは情報処理系の専門学校を出てエンジニアとして就職した。最初はWebサイトの開発プロジェクトにてプログラミングを担当。バックにSQL Serverがあったものの、当時はまだデータベースを意識することはあまりなかった。
プロジェクトを通じて少しずつデータベースを意識するようになってきた。あるとき海外ベンダーが開発したシステムにテストのために触れる機会があった。データウェアハウスと連携するシステムで全てストアドプロシージャを用いていた。ストアドプロシージャを採用すればいいと一概に言えるものではないものの、業務システムで全てをストアドプロシージャにしているのは当時まだ珍しかった。ファイルの扱いなどデータの入出力も丁寧に組まれていて「こういうこともできるんだ」と背後の設計思想に思いをはせるきっかけになった。
当時は2002~3年ごろ。中国やインドへのオフショアが注目されはじめたころだろうか。そのシステムも(プロトタイプとはいえ)海外ベンダーが受託開発したものだった。小澤さんによると、その海外ベンダーは「SW-CMM(ソフトウェア能力成熟度レベル)」(CMMはいまCMMIに統合されている)でレベル5を取得するほど優秀なソフトウェア企業。この案件はオフショア開発の成功事例でもあったそうだ。当時システムの保守や改修をすることが多かった小澤さんにとって、いいお手本に巡り会えたようだ。
お手本といえば、もう1つ。SQL Serverの「Dr.K」として知られる熊澤幸生さんのWeb連載記事もいいお手本となった。2006年から2010年の間で連載されたSQL Serverの高度なチューニング技術などを伝授する記事だ。ここから大いに刺激を受けた。小澤さんは幸運なことにSQL Serverに関して貴重な巡り会わせが続き、いつしか「Microsoftの技術、SQL Serverにちゃんと携わりたい」と切望するようになった。
その後、1年間という短期間ではあるものの、SQL Serverにどっぷりと携わることができた。「濃い1年でした」と小澤さんは述懐する。
その間は主にSQLの診断を行っていた。製品の専門部隊として最良の性能を出すために最適なチューニングや診断を行っていた。究極的にはボトルネックを探すことになるそうだ。顧客からは「なんか遅いんですけど」程度しか情報がない苦情から根気強くシステムの稼働状況を探っていかなくてはならない。「遅い」にしても遅くなる時間帯があるのか、曜日や月末になるのか、何かトリガーがあるのか。原因となる処理を見つけたら、対策を考える。処理を改良すればいいか。それともハードウェアを追加しなくてはならないのかなどを切り分けていく。
当時利用していたツールの1つにクエスト社(現DELL社)の「Spotlight on SQL Server」があった。診断パッケージのシリーズ製品でSQL Serverに対応したもの。診断ツールが状況を可視化するしくみにもひかれていた。「どうやってやるんだろう」「自分でクエリを書いてみようかな」と探究心にひかれるままスキルアップしていった。