はじめに
第一話では物や人の営みの流れの中にサプライチェーンというものを見出してみました。第二話ではそれらの流れを輪切りにして見ると、サプライチェーンプロセスは6階建てのビルディングのような階層になっていることをお話しします【図2-1】。
と言ってもサプライチェーンプロセスを設計する時、そして運営する時に『階層』ということを意識することは実際には非常に少ないのですが、少なくともこの記事を読まれた後はサプライチェーンプロセスを『階層』で見ることが出来て、その形や性格をより明確に捉えられることを実感してもらえるものと思います。
階層で見ると何がわかる?
では、どうしてわざわざ『階層』にして見るのでしょうか。サプライチェーンプロセスの中には非常に大きな判断を求められる場面から、非常に細かな作業に至るまで、実に多くの種類の営みが混在しています。それらを時間(どれくらの間隔で繰り返すのか)と空間(関わる組織や人たちの規模)、そして上手くいかなかった場合の影響の大きさなどで区分した方が理解しやすいからなのです。
複雑なものを階層にしてわかり易く、または使いやすくするのは日常どこでも行なわれることです。例えば地図で目的地を検索する場合には、広範囲な地図から順次詳細な地図に絞り込むと思います【図2-2】。
また、国の政治体制を見ても国会があり、その下に県議会、そして市議会、町議会、村議会という構造になっています。また、軍隊も同様に大将、中将から一等兵、二等兵にいたるまで非常に明確な階層(階級)構造になっています。こうすることで膨大な要因を伴って動いている複雑な世界を判り易くしているのです。
もしも複雑な現象や物体を、階層を意識しないで見てしまったらどうなるでしょうか。富士山は裾野に広がる樹海から山頂までを見て始めてその全体像が判るのですが、樹海の中に入ただけでは富士山が何であるのか見当が付きません。象の足にしがみついてその皮膚だけ触ってみても象がどんな動物であるのか判りません。
まず全体像を見て、それから順次分解して見ていく方法がサプライチェーンプロセスのような複雑な現象を捉えるには適しています。しかし、気を付けないと木を見て森を見ない、葉を見て枝を見ないといったように、樹海が富士山であるかのような大きな間違いを犯し、サプライチェーンプロセスの場合にはおかしな流れになってしまいます。