ハイブリッドクラウドが欲しいのではなく、アプリケーションを動かす最適な環境がハイブリッド
今回のIBMが見せたハイブリッドクラウドは、そのような「パブリックもプライベートも両方使いますよ」的なものではない。もう少し柔軟にパブリックもハイブリッドも、さらにはオンプレミスも融合させるものだ。データだけでなくアプリケーションもこれらの間で自由に移動でき、バッチ的なデータ連携ではなく適材適所にデータを保存、それをストレスなく透過的に扱えることを目指している。
このハイブリッドクラウド戦略の中で、今回目玉の発表となっていたのが「Bluemix Local」だ。従来、パブリッククラウドの上でしか使えなかったPaaS環境のBluemixを、プライベートクラウドでも使えるようにするもの。個人情報などはコンプライアンスの問題でパブリッククラウドに持って行けないという話がよく出る。当然ながらそういった情報を扱うアプリケーションの開発や実行も、パブリックではなくプライベートで行いたいニーズはあり、それに対応するのだ。
ハイブリッドクラウドを活用する際には、どのパブリッククラウドを選びどのようなプライベートクラウド環境を構築するかを考えるのではなく、自分たちがこれから動かしたいアプリケーションをどのような環境で動かせばいいかをまずは考える。多くのユーザーが同時にアクセスするアプリケーションであれば、拡張性の高いパブリッククラウドに置いたほうがいい。しかし、そのアプリケーションの処理にも個人情報に関連することや課金処理などがあるはずだ。それらはプライベートやオンプレミスのほうが都合がいい。つまりそのアプリケーションを動かすのはパブリックかプライベートかと言った択一問題ではなく、アプリケーションを効率的かつ安全に動かすためには、それぞれのクラウドをアプリケーション稼働環境の一部として有機的に捉え展開できる必要があるわけだ。
自分たちが動かしたいアプリケーションの最適な稼働環境を目指したら、結果的にハイブリッドになったというのがアプローチとしては理想だろう。逆に言えば、アプリケーション側からはハイブリッドクラウドという1つの柔軟なアプリケーション開発、稼働環境があり、要件や効率に応じ複数の環境をまたがって利用できる。その際にできるだけユーザーがクラウド環境の違いなどは意識しなくてすめばよりいい。そういうハイブリッドクラウドが利用できる時代になるには、まだ少し時間もかかるかもしれない。しかし、技術的には実現する要素はすでに揃いつつあるなと思わされるイベントだった。