インフォアによる製造現場のシステム化のメリット
ただ実際にERPを導入していくと、問題点もある。金原氏が導入した顧客からよく言われたのは「現場の人はモノを作って忙しいのに、文章や数値を入力しろといって、仕事を増やしてもらっては困る」という苦情だという。その部分をどう解決するのか。そこで、インフォアではMES(製造実行システム)の仕組みをERPに実装し、一体の製品として提供した。
多くの製造現場では、製造業務管理は紙ベースで行われている。そこに、インフォアのMESソリューション、ファクトリートラックを導入し、タブレット・タッチパネルによる操作により、従業員の勤怠管理、製造スケジュール実行処理などを自動化した。
続けて金原氏が紹介したのが、今回のセッションの主眼といえるインフォアのERP、SyteLine(サイトライン)だ。すでに製造業に25年以上の導入実績がある製品である。 フルセットのERPとして多言語、多通貨、多拠点に対応し、ユーザーのカスタマイズ要求に簡単に応える柔軟な開発環境が提供されている。アプリケーションをカスタマイズするときにコードを書く必要は無く、たとえば受注の入力、受注の承認、それから在庫引き当てなどといった手順が用意されていて、それをパラメーターで繋ぐだけでたとえば処理の自動化が行われる。
例外事項が発生した場合、自動的に情報を収集する仕掛けになっており、業務担当者の作業が大幅に軽減される。情報を探すことに時間が取られない。しかも、すべてブラウザで使用できる。 また特に東南アジアではExcelの利用率が高いことから、そのファイルからの一括登録を可能にし、操作効率を向上させている。
またMRP(資材所用計画)とAPSエンジンの組み合わせにより、製造ライン別の製造スケジュールの進捗状況を一覧できる。計画変更もドラッグ&ドロップで可能だという。また、在庫管理では、あらゆる数値情報を視覚化し、在庫の回転率や滞留時間などが設定したしきい値を超えるとダッシュボード上かメールで警告してくれる。
「製造管理で求められる情報を、特にカスタマイズすることなく標準で乗せられるようになっており、コーディングなしでロジックやワークフローを組み込むことができます。 カスタマイズ部分は、標準機能に影響を与えずに追加できる構造を有しているので、SyteLineのバージョンアップの後も継承されます。つまり、問題になりがちなERPの硬直性をなるべく排除して、追加機能を乗せていくことができるのです」(金原氏)
金原氏は最後にインフォアのBIツールを簡単に紹介し「これまで紹介したERPとMESのソリューションにより、ERP導入にともなう入力等の怖さとか、工場の操作感とかが大きく軽減されることになります」と述べた。
NTTコミュニケーションズが語った「グローバルITのための課題と選定プロセス」
3番目に、NTTコミュニケーションズ株式会社 クラウドサービス部 販売推進部門 主査 佐橋由久氏が「グローバルキャリアクラウドとその活用事例~事業の海外展開に対する情報システムの構築ノウハウ」と題した講演をおこなった。グローバルビジネスを展開する企業にとって、全社的なICT環境の統合やセキュリティを含めたガバナンス強化は喫緊の命題だが、その実現にはさまざまな課題が立ちはだかっている。佐橋氏によると、現状のグローバル企業の課題は業務の効率化、意志決定の迅速化、収益力の向上であるが、そのためには、グローバルレベルでのITの標準化、統合が必要となる。しかしながら現状では、まだまだ十分ではないという。
NTTコミュニケーションズの調査によると、現在のグローバルでのITの標準化のパターンは3つある。(1)中央集権型--本社レベルでの完全な標準化と統合、(2)連邦型--本社で統制しつつ地域ごとに個別に集約、(3)完全個別型である。現状では、(3)の個別は減ってきているが、(2)のパターンが一番多く、大規模ERPと中規模ERPのハイブリッドで展開していく企業が多いという。
「クラウドによるグローバル標準化をおこなう場合、SaaS一体型から、NTTコミュニケーションズのIaaSの上にインフォアをはじめとしたERPをのせていくなどの様々な選定ポイントがあります。リージョンごとのニーズと本社とのギャップなどをうまく調整しながら、人・IT・コストそれぞれのギャップのバランスをどうとるかが課題です。拠点が増えるごとに業務プロセスが複雑化するために、今後は個別システムを標準化の方向でマイグレーションしていく流れはますます増えるでしょう」(佐橋氏)
佐橋氏は、その課題への取り組みとして、世界13か国16拠点(※2015年開通予定拠点を含む)に展開するNTTコミュニケーションズの「グローバルキャリアクラウド」を紹介し、キャリアならではのDC・NW基盤を活かした高信頼なクラウド活用により、現地負担を軽減し、標準化を推進していく方向性を提示した。
このように、ERPのマイグレーションをめぐって、3氏の講演は、経営のグローバル化を支える戦略的なクラウドの活用方法を考える上で重要な内容であった。
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