SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

最新イベントはこちら!

Data Tech 2024

2024年11月21日(木)オンライン開催

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けの講座「EnterpriseZine Academy」や、すべてのITパーソンに向けた「新エバンジェリスト養成講座」などの講座を企画しています。EnterpriseZine編集部ならではの切り口・企画・講師セレクトで、明日を担うIT人材の育成をミッションに展開しております。

お申し込み受付中!

EnterpriseZine(エンタープライズジン)

EnterpriseZine編集部が最旬ITトピックの深層に迫る。ここでしか読めない、エンタープライズITの最新トピックをお届けします。

『EnterpriseZine Press』

2024年秋号(EnterpriseZine Press 2024 Autumn)特集「生成AI時代に考える“真のDX人材育成”──『スキル策定』『実践』2つの観点で紐解く」

「スマートストア」テクノロジーの新潮流

消費者の振る舞いを変える「データドリブンおべっか」――テクノロジーがもたらす新たな付加価値

 「おべっかはできる営業マンの専売特許」という構図が崩れようとしています。テクノロジーとデータにもとづく「データドリブンおべっか」が登場しつつあるためです。テクノロジーの活用を、「見える化」止まりにせず、「振る舞いを変える」ことまで実現するにはどうしたらよいか?振る舞いを変えるための方法は、商品価値を損ねかねない「割引型クーポン」以外の施策はないのか?深謀遠慮を働かす広島の喫茶店の事例を通して「テクノロジー活用による振る舞いの変え方」と「金の匂いのするIoTのあり方」を検討します。

テクノロジーを活用する目的は、”顧客の振る舞い”を変えること

 広島に出張したとき、たまたま入った喫茶店がおそるべき取り組みを行っていました。テクノロジー活用とはまったく無縁な事例ですが、まずはこの店の取り組みを紹介します。

 この店では顧客がある条件を満たすと、100円引きのクーポンを提供しています。条件とは、「店を飾るための花を持ってくること」です。その案内を見たとき、最初は「変わっているな」と受け流しましたが、よくよく考えるにこの裏には店長の深謀遠慮(しんぼうえんりょ)があるのではないかと感じるに至りました。

 なぜならば、この取り組みは「100円の割引」ではなく、「花を堂々と自慢する場」の提供をしていると考えられるからです。

 庭できれいに咲かせた花を自慢したい広島の有閑マダムも、これみよがしにそれを自慢することははばかられます。出たがりだとは思われたくないからです。そこに、「100円引きしますから、店のためにお花をお持ち頂けませんか?」という大義名分を与えたことにより、気持よく自己顕示ができる。恐らく花を持参するやいなや撮影されたのでしょう。レジの横には、「田中様の奥様が今日もこんなに素敵なお花をお持ち下さいました!」という手描きのメッセージ入りのインスタント写真が大量に貼られていました。

 これを、心地良いと感じる人にとっては、100円引きのクーポンは「100円引きとおっしゃるから、お持ちしたのよ」と言わしめるための大義名分に過ぎず、割り引かれるコーヒーの値段が300円でも600円でも関係ないはずです。

 これはあくまで私なりのゲスな勘ぐりであり、このような狙いを持っていたかは分かりません。しかし、このような取り組みは「テクノロジーを使って何を実現するべきであるのか」ということを考える上で非常に重要な示唆があると考えます。

 ここで、テクノロジー活用の話に戻りましょう。データ分析をはじめ、テクノロジーを活用する目的は、顧客の振る舞いを変えることにあります。

 「見える化」から開始することはもちろん多いですが、見える化だけでは意味がありません。見える化された現状を踏まえ、顧客への働きかけを変え、その振る舞いを変えることこそが、テクノロジーが事業にもたらす付加価値となります。

 たとえば、ある商店において、花王の洗剤とP&Gの洗剤の売れ行きがID-POSデータを用いて購入層別に分析されれば、これは見える化が実現された状態と言えます。しかし、花王の立場にたてば、「普段P&Gの洗剤ばかりを使っている人に、花王の洗剤を手にとってもらう」というように振る舞いを変えることが当面のゴールとなるでしょう。

 振る舞いを変えるためのテクノロジー活用のひとつが、クーポンやポイント還元です。100円引きのクーポンを送ることによって、それならば購入してみようかという気持ちをくすぐることになります。CLO、ジオフェンシングといった各種の送客施策において大きな役割を果たしました。しかし、先の広島の喫茶店は、必ずしも動機付けは価格だけではないことを示します。

次のページ
大井町のスーパーの「データドリブンおべっか」

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
「スマートストア」テクノロジーの新潮流連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

鈴木 良介(スズキ リョウスケ)

株式会社野村総合研究所 ICT・メディア産業コンサルティング部 主任コンサルタント2004年、株式会社野村総合研究所入社。以来、情報・通信業界に係る市場調査、コンサルティング、政策立案支援に従事。近年では、クラウドおよびビッグデータの効率的かつ安全な活用を検討している。近著に『 ビッグデータビジネスの時代』...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

EnterpriseZine(エンタープライズジン)
https://enterprisezine.jp/article/detail/6831 2015/05/26 06:00

Job Board

AD

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング