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週刊DBオンライン 谷川耕一

SaaSの世界で激しい市場競争がはじまった!


 クラウドの本命はSaaSとの話は、いままでも何度かここでも主張してきた。クラウドのもともとのコンセプトであるITサービスを水道の蛇口を捻るように利用したい。企業が本来それで手に入れたいのは、IaaSによるコンピュータリソースではなくサービスそのものなはずだ。とはいえ現状は、利用したいサービスが十分にクラウド上に揃っていない。なのでIaaSを使って自分が使いたいサービスをクラウド上に構築し利用している。IaaSでしか実現できないITサービスも残るだろうが、将来的には多くのものはSaaSへと移行するだろう。

ファーストリテイリングの採用は半年間の最大のトピック

 SaaSと言えば、まずはSalesforce.comがすぐに思い浮かぶ。その他だと、最近市場で元気がいいのは各社が提供しているマーケティング・オートメーションのサービスだ。それ以外には、クラウド会計ソフトのfreeeなども話題だ。

 国内ではまだまだ存在感があるとは言えないが、グローバルではすでに925社の企業に利用されているSaaSベンダーがWorkdayだ。同社はグローバルで人事と会計のサービスをSaaSで提供している。2015年1月からは日本でも本格的な活動を開始した。先日、ここ半年の活動アップデートについてワークデイが説明会を開催した。

 ワークデイ株式会社 代表取締役社長 ゼネラルマネージャの金 翰新氏は「アーリーステージのベンダーとして大事なことはビジョンを伝える、将来を見据えて開発を行い顧客に素晴らしい経験を提供する、そしてモデルケースを提示するの3つです」と語る。そんな同社が大事にしている指標の1つが顧客満足度。97%の顧客から満足と評価されており、この数値の高さは同社の強みだ。

 Workday株式会社 代表取締役社長 ゼネラルマネージャ 金 翰新氏
ワークデイ株式会社
代表取締役社長 ゼネラルマネージャ
金 翰新氏

 1月から本格的に国内事業をスタートし、これまでの最大のトピックはファーストリテイリング社がワールドワイドでWorkdayの採用を決定したこと。

 「ファーストリテイリングのような会社がWorkdayの価値を感じてくれました。このことは、日本のグローバル企業を支援するという我々の戦略とも合致します」(金氏)

 ファーストリテイリングは、Workdayの日本法人にとってフラグシップ的な顧客だという。今後もWorkdayでは、日本のグローバル企業のサポートに注力する。

人財管理でも活用されるデータサイエンスとマシンラーニング

 現時点でWorkdayのバージョンは24、これは2015年3月に提供を開始した。年にほぼ2回の更新を続けており、次バージョンの25は秋に提供を開始する予定だ。

 「Workdayの特長はすべての顧客が同一バージョンを利用することです。世界の925の顧客は、3月にすべてアップデートしたことになります。リリースごとに機能を追加し、新しいテクノロジーを入れています。すべての顧客が同じ最新機能を使えるのは、顧客にとってのメリットです。ベンダーとしては、開発環境もテスト環境もすべて同じバージョンになります。1つのバージョンに集中できるので効率的でコスト的にもメリットがあります」(金氏)

 クラウドのサービスでも複数バージョンを提供していれば、顧客にとってもベンダーの開発面でもデメリットがあると指摘する。

 「我々がもう1つ重要だと考えているのが『Power of 1』ということです。これは、いったん我々の顧客になれば、コミュニティが出来上がり同じバージョン、同じ製品を元に1つになり顧客同士で会話するようになります」(金氏)

 その会話の中から生まれる要求をベースに、次のバージョンの開発内容を決める。この顧客からの要求を着実に製品に反映するサイクルが同社のサービスのコアとなる。

 WorkdayのHCMプロダクトマネージメント ディレクター 宇田川 博文氏によれば、Workdayは必要に応じて簡単に導入でき、変化にも対応。他のソフトウェアの思想とは根本的に違うという。

 「電気自動車のテスラのようなものです。テスラはたんに新しい電気自動車を提供するだけでなく、電気自動車による素晴らしい体験を提供しています。我々も体験を提供しています」(宇田川氏)

 WorkdayのHCMプロダクトマネージメント ディレクター 宇田川 博文氏
ワークデイ株式会社
HCMプロダクトマネージメント ディレクター
宇田川 博文氏

 人は企業にとってもっと貴重な財産であり、同時に最大の経費でもありる。従業員を知り真の価値を知ることは、企業にとって不可欠だ。

 「従業員に何が起こっていて、これから何が起こるのか。それを勘や経験ではなくデータに基づいて判断する。Workdayのレポートにはそれがリアルタイムに反映されます。そこからレコメンデーションの形で示唆されるのです。こういったことを既存のシステムでやるのは大変です。レガシーからデータを集めて分析する。それではすぐにはアクションに結びつきません」(宇田川氏)

 バージョン24で新たに提供を開始したのが「Workday インサイト アプリケーション」。これは、従業員の行動を分析して本人も気がついていないような行動の本質を見極めるものだ。そのインサイト アプリケーションの第一弾がタレントインサイト。これは、従業員の離職リスク分析ツールで、過去に離職した従業員の行動をマシン・ラーニング技術を使って分析し、現在所属している従業員の離職の可能性を予測するというもの。

 離職リスクが高いハイパフォーマーが誰で、離職するとビジネスのインパクトはどうなるのか。さらに再配置する際のコストまで予測して計算する。そして、辞めてもらいたくない人を引き留めるには何をしたらいいかについてもリコメンデーションする機能がある

 「インサイト アプリケーションはデータサイエンスとマシンラーニングを使ったものです。離職リスク分析のような特定のシナリオを分析します。こういったアプリケーションを、Workdayの顧客と一緒に開発しています。近い将来、日本企業の人事ノウハウをインサイト アプリケーションとして提供できればと思います」(宇田川氏)

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給与計算の日本対応ではペイロールと提携

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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