トップレベルドメイン(TLD)とは?
ここ数日間、こんなスパムが届いています。「クリックしてください」とあるURLに共通点があるのです。一部伏せています。
http://ksxxxxx.xxxxx3o.blue/xxx・・・
http://ogxxxx.xxxxxt9.red/xxx・・・
http://9cxxxx.xxxxx7up.black/xxx・・・
分かりましたか?トップレベルドメインが色に関する単語でできています。これに気づいただけで「怪しい」と思う私は古いのでしょうか。最近ではトップレベルドメインが何であろうと気にしない人が多いかもしれませんね。ということで、今回はトップレベルドメイン(以下、TLD)のお話をしたいと思います。
おそらくこの連載の読者様であれば釈迦に説法かと思いますが、念のため。インターネットで使用するドメイン名は「.」で区切られており、最も右端にある「.」より右にある部分がTLDと呼ばれています。ドメイン名の階層では最も上位に位置する文字列です。住所に例えるとTLDは「国」とイメージしてもいいでしょう。
例えば、エンタープライズジン「http://enterprisezine.jp/」なら「jp」です。New York Times「http://www.nytimes.com/」なら「com」です。
もともとインターネットはアメリカ国内で発祥しましたので、当初TLDは基本的には「com(商用)」、「mil(軍)」、「edu(学術機関)」、「gov(行政)」、「net」、「org」など用途別に分類されていました。これら6つに加えて、アメリカ国外が使う場合の国コードがTLDでした。
日本だと国コードは「jp」です。古くは「co.jp(企業)」、「or.jp(組織)」、「ed.jp(学術機関など)」、「go.jp(政府機関など)」などがあり、「jp」の左隣にあるものが「セカンドレベルドメイン」と呼ばれていました。日本だとセカンドレベルドメインも合わせてTLDという感覚でした。
ちょっと脱線しますが、「.jp」が使えるようになったのは2000年からです。「汎用(はんよう)JPドメイン」と呼ばれています。それ以前は先述したようなセカンドレベルドメインもあわせた中からしか選べませんでした。だから「enterprisezine.jp」なんてドメインは持てなかったのです。
「enterprisezine.co.jp」など、セカンドレベルドメインのリストから選ぶが必要がありました。
ところがインターネット黎明期には多少の例外もあったのです。20世紀の話です。例えば「ntt.jp」など、一部の企業と大学でセカンドレベルドメインを持たないドメインがありました。しかし「ntt.jp」に関しては1998年7月で終了し、「ntt.co.jp」へと移行しました(途中で併用期間がありました)。昔は「@ntt.jp」というメールアドレスをお持ちの方もいたそうですよ。
話を元に戻しましょう。日本ではセカンドレベルドメインも含め、ドメインは階層で分類されており、種類もそう多くなかったのです。言い換えると、TLDで「red」だの「blue」だの、「見たことない」文字列が出るなんてありえなかったのです。
ところが近年になると状況が変わりました。過去にもTLDの追加はありましたが、限定的な範囲でした。大きく変化したのは2012年。インターネットのIPアドレスやドメイン名などを調整する組織であるICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)がこれまでの制限を緩和し、TLDの申請がしやすくなりました。
例えば「私は“pink”というTLDを申請します」と18万5千米ドルの査定料金とともに申請し、審査を通ればそのTLDを管理できるようになりました。大企業が自社でTLDを使う場合もありますが、TLD管理者はTLDで商売をすることもできます。例えばあるユーザーが「pretty.pinkというドメインをくださいな」申請したら先着順で販売し、年間使用料という定期収入が得られます。年々インターネットサイトが増えてきて、TLDが限られていると後発のサイトはいいドメイン名が使えないための配慮かもしれません。
ICANNのTLDの取得要件緩和により、TLDは近年爆発的に増えています。なお今年に入り、TLDは1000を超えました。今年は「ntt」ほか、「toshiba」や「canon」などの企業名も追加されているとのことです。今後もますます増加していきそうです。