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多くのクライアントを誇る、デロイトスペインのCICは“エクセレンス”つき
―Cyber Intelligence Center、略してCIC(キック)という名前は広まっていますか?
ムール「やはりSOCと言ったほうがわかりやすいですけどね。今は、クライアントとメディアに対して広めていこうとがんばっているところです」
―スペインではさらに、CICに「e」がついて、eCICという名前になっていますね。
ムール「スペインではさらに上を行くのだという意味を込めてエクセレンスのeをつけました(笑)」
―スペインだけeとつけてしまってもいいのでしょうか(笑)。
ムール「そこはメンバーファーム制ですので(笑)。スペインには3つセンターがあって、マドリッドにはSOCがあります。マドリッドとバルセロナにeCICが1つずつあります。去年日本のメディアが取材に来たのは、バルセロナにオープンしたてのeCICですね」
―主なクライアントについて教えてください。バルセロナのときはスペイン国内大手銀行がいましたね。大きなクライアントを1社抱え込む形なのか、それとも小さなクライアントもたくさんいるようなイメージですか?
ムール「ビジネスモデルはとてもシンプルです。ビジネスを始める時点では大きな企業であっても小さな仕事からはじめます。その小さな仕事からどんどんサービスを広げて大きくしていく。というわけでクライアントの数はたくさんいます」
―スペイン国内の金融機関、ガス水道などのインフラ、コンシューマー系などがメインとうかがっておりましたが、海外企業との仕事もされているんですね。
ムール「そうです。スペインのCICとSOCは、海外の企業ともいろいろな国と仕事をしています。日本もそうですし、その他、コスタリカ、ドイツ、ブラジル、アルゼンチン、いろいろな国とコラボレーションしている。日本では大手製造業などです」
日本チームとのコラボレーションについて
―日本チームがCICを作るにあたって、とても頻繁にスペインに訪れていましたね。ほかにいろいろな国がある中でスペインだったというのが興味深いところでした。そのあたりの情報交換、日本との交流はいかがでしたか。
ムール「彼らのやり方はすごくクレバーでした。まず、カナダ、北米、イギリス、フランス、スペインなど、デロイトのCICがあるすべての国を訪れた。その上で、もっとも進んでいるのはスペインであると判断してくれました。スペインは5年前に、デロイトとして初めてこのビジネスを始めた場所なのです」
―フロンティアだったわけですね。
ムール「5年前、私がこのビジネスをやろうといった時、みんなが私のことをクレイジーだと言ったんですよ(笑)。デロイトにとってお金儲けになる話などではないとだれもが考えていたんですね」
―クレイジーと言われても続けたんですか?
ムール「しかたがないので、まずひとりでスペインの仲間たちとはじめました。3年後、ビジネスになるようになり、今では各国のデロイトのメンバーが『どうやったんだ?』と意見を仰ぎにくるようになりました(笑)」
―いい話になってよかったです(笑)。
ムール「私がクレイジーだったわけじゃなくて、ただたんにクライアントの声に耳を傾けていただけだったんです。当時、クライアントが何を求めていたか、ピンポイントではなくて統括的にセキュリティを助けてくれるところを求めていた。戦略を立てて、デザインして、導入して運用する……というところまでも全部見てくれるところを探していた。だからそれをはじめたというわけです。日本のメンバーは、このやり方を知りたいと言ってやってきたんですね。だから、まずコラボレーションとしては、どういう風に立ち上げたか、マネジメントの仕方、クライアントにどう話したらいいか、こちら側のリクルートの仕方、サービスの提供の仕方を一緒に勉強していきました。次のコラボレーションとしては、市場の求めているものに対してどうやって対応していくかということ。クライアントからリクエストを受けたところで、どう対応していくかということを学びました。今後日本にCICができたときには、日本独自のクライアントがいるわけだし、日本政府からの仕事も来るかもしれない、日本ならではのクライアントに対応するための準備を一緒にしましたね」
―ローカライズの部分ですね。
ムール「彼らは日本という国に合わせてサービスを作り上げていく方法、デザインも理解し、どうやってこのビジネスをサービスとして売っていくかといったことも一緒に検討しました。日本チームとのコラボはすごく楽しかったですよ」
―今回、各国との連携を見て、ゆるやかにつながりつつ独立を保っているデロイトのスタイルがとても面白いと思いました。これからも日本との関係は続いていくのでしょうか?
「おっしゃる通り、グローバルなビューと、ローカルな姿勢というのがデロイトの強みです。サイバーセキュリティですので、グローバルでしか対応できないような課題というのはあるんですが、結局クライアントに一番近いのはローカルであって、そこをおろそかにしてはいけない。これを私は『グローカル』と呼んでいるんですが、各国の言語や文化を大切にしつつグローバルにつながるということがとても大切なことだと思っています。日本のマーケットは拡がっていくだろうし、今後もスペインとしては一緒にやっていきたいと思っています」
―グローカル、いい言葉ですね。今日はどうもありがとうございました。