浮き彫りになる東京、大阪の脆弱さ
インターネット上に公開されたシステムは、サイバー攻撃の脅威に常にさらされます。その観点から日本の主要都市のシステムを調べていくと、東京と大阪がサイバー攻撃に対して脆弱な都市であることが分かります。
トレンドマイクロでは2016年3月から6月にかけて、「SHODAN」※1と呼ばれる検索ツールを用い、日本の人口上位5都府県(東京都、神奈川県、大阪府、愛知県、埼玉県)におけるシステムの状況をさまざまに調査しました。
その結果、東京と大阪は、人口1人当たりの「外部にさらされているIP数(=外部公開IP数)」が、他の都市に比べ圧倒的に多いことが判明しました(図1参照)。要するに、この2つの大都市には、外部に「むき出し」になっているシステムが数多く、しかも高密度で存在し、重要システムの場合、サイバー攻撃によって都市機能が損なわれるリスクが大きくあるというわけです。
※1 :SHODAN:インターネットに接続された特定タイプのコンピュータ(ルータやサーバ、など)を見つけるためのオープンな検索エンジン。2009年に公開され、それ以降、セキュリティ研究者やサイバー攻撃者がインターネットに接続された端末を探す手段が変わったとされている。
最も危ういのはメールサーバとNTPサーバ
では、具体的にどのようなシステムが外部にさらされ、サイバー攻撃による打撃を被るおそれが高いのでしょうか。
まず、きわめて危うい状況にあると言えるのがメールサービスです。今回の調査を通じて5都府県のメールサービスの状況を調べたところ、ESMTP(拡張SMTP)やpostfix、sendmailなどをベースにしたメールサービスの(サーバの)の多くが、外部にさらされた状態にあることが分かりました。
仮に、これらのメールサーバの設定(コンフィギュレーション)にミスがあれば、スパムメール配信といった攻撃に悪用されるおそれが強くあります。
また、通信事業者や研究機関などがインターネット上に公開しているNTPサーバも、攻撃リスクが高いシステムです。このサーバは、NTP(Network Time Protocol)を通じて現在時刻のデータを配信する仕組みですが、小さなリクエストに対して多くのデータを返すことができるため、DDoS攻撃に悪用されやすいと言えます。
SHODANを使った今回のトレンドマイクロ調査では、東京と神奈川県で、かなりの数のNTPサーバが外部に公開されていることが確認できました(図2参照)。これは、NTPサーバを踏み台にして、日本国内のみならず、海外に対するDDoS攻撃が仕掛けられるリスクが高いことを意味しています。