米国が環境大国へと変貌する可能性
今回の大統領選でオバマ、マケインの両候補者が強調した環境エネルギー対策の方針は、外国からの石油依存をなくすことに主軸が置かれていた。経済や生活を中東からの原油に頼っている現状では、安全保障上の不安要因となるばかりか地球環境にも良くない。そこで、エネルギー自給率を上げるのが両候補の共通した政策提言だった。
マケイン氏の政策は、海底油田の発掘や原子力発電の利用拡大が中心。一方、オバマ氏は天然ガス資源の開発と同時に、再生可能なエネルギー開発や低燃費車の普及促進などクリーン・テクノロジーの導入を強調した。オバマ氏が勝利したことで来年以降、これらの政策が強力に推し進められることが予想されている。
具体的には次のような計画がある。太陽光、風力、地熱、バイオ燃料など再生可能エネルギーの開発に向けて、10年間で1500億ドルを投入。新技術や新規サービスが生まれることによって、500万人の新規国内雇用を生むと試算している。ちなみに、これらの環境関連職種は、ホワイトカラーやブルーカラーではなく、「グリーンカラー」と呼ばれている。
太陽光や風力などのクリーンエネルギーを積極的に活用することで、2012年までに全米で利用するエネルギーの10%、2025年までには25%を再生可能エネルギーに変換する予定だ。クリントン政権時に副大統領を務めたアル・ゴア氏は、今月サンフランシスコで行われたWeb2.0サミットの公演の中で、オバマ次期大統領の取り組みを指摘。「10年以内に100%の電力を再生可能で二酸化炭素を使用しないものに変換することを目標に設定している」と述べている。
家庭用電源からも充電可能なプラグインハイブリッド車も導入を進め、2015年までに100万台を普及させる。超低燃費車の目安は、走行燃費が1リッターあたり63キロメートルになるという。
オバマ政権ではクリーンエネルギー政策を進めることで、2050年の国内二酸化炭素排出量を1990年比で80%削減するのが目標。地球温暖化ガスの削減目標を定めた京都議定書にいまだ批准していない米国が、オバマ政権の誕生によって環境大国へと大きく変貌する可能性を秘めている。