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東京五輪でMedia Servicesが有用な媒体に-成長するビデオストリーミングサービスの最新事情

edited by Operation Online   2017/04/27 07:00

 テキストや画像が中心だったインターネット上のコンテンツは、ここ最近映像の割合がかなり増えている。また既存の電波を使った放送だけでなく、インターネットを使ったサブスクリプション型の映像配信サービスも台頭している。このように映像コンテンツを取り巻く環境が大きく変化する中、クラウド型のビデオストリーミングサービスが今後は重要となる。マイクロソフトの動画配信基盤サービス「Azure Media Services」を担当しているマーティン・ウォール氏に、最新のビデオストリーミングサービスのビジネスについて話を訊いた。

放送局だけでなく一般企業も映像コンテンツを活用する時代に

――Microsoft Azureのクラウドの中で、Azure Media Servicesはどのような位置づけのサービスですか?

米Microsoft 社 Azure Media Services プリンシパル・プログラム・マネージャー  
マーティン・ウォール(Martin Wahl)氏

 ビデオストリーミングサービスのAzure Media Servicesは、成長を続けるAzureクラウドプラットフォームの一部です。当初から放送局やコンテンツオーナー向けに、モバイルデバイスなどで快適に映像を視聴できるようにしています。ロンドン五輪のころからサービスを提供しており、その後の4年間でビデオストリーミング市場も大きく変化しています。

 1つがデバイスの爆発的な増加です。インターネットに接続してビデオ映像が観られるデバイスが、今は70億台もあります。2018年までには、インターネット上の90%のトラフィックがビデオになるとの予測もあります。

 もう1つの変化が、放送局やコンテンツオーナーだけでなく政府や教育機関、金融、医療、小売りに至るさまざまな業界で、映像コンテンツが日々の業務の一部になっていることです。映像を扱う大きなプレイヤーが増えており、今やAzure Media Servicesの顧客タイプは多種多様です。それに対応するために、我々もサービスの内容やキャパシティを拡大しています。

――顧客が多様化したことで、具体的にAzure Media Servicesはどのように変化していますか?

 まずは、サービス提供のコストが安くなりました。録画された映像だけでなくライブ配信も増えていますが、その際の提供のコストもかなり安価です。また放送局などもともとビデオ配信技術を持っている企業でなくても利用できるよう、映像配信のための技術が整ってきたことがあります。映像コンテンツは販売されるものもあれば、企業内で共有するものもあります。そういった利用の仕方の違いにも対応できるようになっています。

 もう1つ重要なのが、どのデバイスでも、どの国や地域でも、さらにはどんな人数にも映像コンテンツを提供できることです。そのために世界中の30地域にあるデータセンターでサービスを展開しています。我々のサービスはWindowsの端末以外にも、AppleやAndroidのスマートフォンやタブレット、スマートテレビやゲームコンソールでも視聴できます。我々はアカマイやベライゾンなどパートナーとも協力して、”Any Device, Any Country"でサービスを快適に使えるようにしています。

グローバル規模のサービス基盤と最新の技術が優位性

――他のビデオストリーミングのサービスと比べAzure Media Servicesの特長は?

 スケールが大きいことが強みです。ビデオストリーミングのサービスではデータセンターのキャパシティがどれくらいかが話題になりますが、マイクロソフトにはそれが十分あります。キャパシティについては、リオ五輪のオンデマンドでのコンテンツ配信で実力を証明しました。2012年のロンドンに比べリオではコンテンツの数が2倍、視聴者も3倍ありましたが、その要求にサービスダウンなどもなく100%対応できました。我々のクラウドの技術を使って、オリンピックのような大きなイベントに対処できることが明らかになったのです。

 キャパシティだけでなく、コスト削減にも取り組んでいます。さらに革新的な技術も積極的に取り込もうとしています。これらができる自信もあります。新しい技術としては、スポーツイベントのライブ配信の際に、ユーザーがインタラクティブなやり取りを可能にしています。映像を観ながら試合の統計データなどをリアルタイムに取得できるのです。視聴者は受け身ではなく、自ら参加できるようになっています。自分で観たいアングルを選ぶ機能も提供できます。

これからの注目技術は映像コンテンツの分析

――ビデオストリーミングの技術で、今注目しているものはどんなことですか?

 私自身がワクワクしているのは、映像コンテンツの分析、アナリティクスのところです。これは今後顧客も求めるようになるでしょう。コンテンツを深掘りして内容を把握する。そのために映像コンテンツにメタデータをつけます。それを使って映像中のキャラクターを認識し、言葉や顔、映像にあるものや人物の動きも把握できる。それをデータベースに格納し分析できるようにするのです。

 たとえば、ニュース映像から特定のキーワードに関連するシーンだけを検索し抽出できます。顔を認識して、その人が映っているシーンだけを瞬時に抜き出すことも可能です。これをリアルタイムできるようにしていきます。Webブラウザではインターネット上にあるコンテンツのタイトルやテキストの内容を賢く検索できますが、これからはビデオやオーディオコンテンツの中身を検索できるようになるのです。これでビデオストリーミングの可能性が大きく広がります。こういった技術は放送局などだけでなく、幅広い産業で有効です。

――とはいえ現状ではまだまだ放送局などが顧客の中心ですか?

 多くの映像コンテンツを放送局などが持っているので、彼らがビジネスの多くの部分を占めています。彼らにはすでにそのコンテンツを使った、広告型のビジネスモデルもありますから。とはいえ、既存の放送局の世界に、オンデマンドでサブスクリプション型のビジネスモデルを持つ新たな参入者もあります。そのため放送局などは、我々と組んでより価値の高いサービスを提供しようとしています。

 たとえば日本のフジテレビでは、放送したコンテンツをより早いタイミングかつ、さまざまなデバイスで視聴できるサービスを展開しています。放送という従来型の視聴スタイルは高齢化しており、若い人はテレビの前ではなかなか視聴しません。スマートフォンやタブレットで好きなタイミング、好きな場所で視聴します。そういったニーズに対応できるようにうることで、既存放送局のビジネスの成長をサポートしています。

――一般企業のビデオストリーミングに対するニーズはかなり異なりますか?

 一般の企業は確かに異なるニーズを持っています。たとえば、自社製品の使い方を映像で提供したり、株主総会の中継など行いたかったりします。幅広い視聴者に届けたい場合もあれば、特定の視聴者のみに届けたい場合もある。高品質でライブストリーミングを行いたいが、それを毎日ではなく月に1回、あるいは年に数回だけ行いたいかもしれません。Active Directoryに登録している特定社員、視聴者に対し認証を行ってから提供する場合もあります。

 社員のトレーニングやマーケティングの目的でコンテンツを共有することもあります。そのためには、エンタープライズ・ビデオポータル機能を用意しています。これを使って、容易に特定の人たちだけとコンテンツを共有できます。また、Office 365のサービスの中でもビデオを使えるようにしています。これも、特定の人たちだけに共有する目的で使えます。

 じつはこのOffice 365でビデオコンテンツを共有する機能はかなり人気があり、この機能だけを使いたいとの顧客の声もありました。それに応えるために、Office 365の契約がなくても共有機能だけを使える「Microsoft Stream」の提供を始めました。現在はグローバルでプレビュー版として無料利用できますので、是非試してみてください。

 それから、映像コンテンツの分析、解析は企業にとっても魅力的なはずです。すでに新製品開発などで、研究開発部門が特定条件のものを見つけるためにこの機能を使っている例があります。分析機能は、一般企業はもちろん、放送局やエンターテイメントの世界でも活用できるようさらに発展させていきます。

【注目資料】『マイクロソフトのDevOpsソリューションのTotal Economic Impact』

業務やビジネスにおいて、デジタル変革が大きな潮流となるなか、開発と運用が連携してリリースサイクルを速めるDevOpsは、デジタル変革において不可欠なアプローチとなっています。米Forresterは、Total Economic Impact (TEI) 調査を実施し、 組織がマイクロソフトのDevOpsソリューションを導入することで実現される潜在的投資利益率 (ROI) を調査しました。

この調査の目的は、マイクロソフトのDevOpsソリューションを組織で導入することによる潜在的な財務的影響の評価の概要を示すことです。本資料『マイクロソフトのDevOpsソリューションのTotal Economic Impact』(全28頁、無料PDF)は、マイクロソフトのDevOpsソリューションの実装に伴うベネフィット、コスト、リスクに関してDevOpsソリューションを導入した8つの組織に聞き取り調査を行ったレポート資料です。ぜひ本資料をご一読いただき、DevOps導入の参考資料としてお役立てください。  

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使いやすくその上でセキュアな仕組みが必要

――ここ最近力を入れているところはありますか?

 マイクロソフトとしては、今後も中核となるグローバル企業のニーズにフォーカスしてさらなるサービス拡充をしていきます。顧客の多くはすべて揃ったソリューションで、カスタマイズや開発をしなくてもすぐに使えるものを求める傾向があります。それを使って、映像コンテンツの共有を簡単に行いたいのです。

 そう言ってしまうとYouTubeのようなサービスを思い浮かべるかもしれません。しかし、YouTubeはパブリックなサービスであり、コンテンツを一般公開しなければなりません。放送局や企業などはもっとセキュアに共有できる仕組みが欲しいのです。我々はコメントをつけコミュニケーションが簡単にできるといったYouTubeの使い勝手の良さと、セキュアな共有の仕組みを両立させていきます。Microsoft Streamはまさにそういったニーズに応えるものでもあります。

 Azureは、コンピューティングやストレージのリソースの提供から始まり、今はより高度なアプリケーションを開発などせずに使えます。さらにそこで、インテリジェンスと高度なサービスを提供できるのが強みです。Azure Media Servicesも方向性は同じです。

――最近の興味深い事例を紹介してください。

 世界中に多くの事例があります。日本では、TSUTAYAでのTVサービス、ビデオストリーミングビジネスへのシフトのお手伝いをしています。今後は4Kコンテンツの提供も重要になり、その際にコンテンツをどう活用していけばいいかのところでは、メディア分析の面からサポートしています。また北海道大学は、研究の中で「スピーチ to テキスト」の技術を活用しています。これもかなりユニークなものです。他にも楽天では、楽天イーグルスの試合のライブストリーミングでMedia Servicesを使っています。

 海外では、面白いところとして石油開発企業の事例があります。採掘現場で毎日映像を撮影し、現場作業の最適化に映像データを使っているのです。ハイクラスのホテルチェーンなどに、スタッフのトレーニングを提供しているロブスターインクでは、スタッフのトレーニングに映像コンテンツを活用しています。トレーニングの映像を世界中のホテルにMedia Servicesを使って提供しているのです。このようにエンターテイメントの世界以外でも、映像コンテンツを活用する事例が増えています。

2020年の東京五輪はMedia Serviceのビジネスで大きな期待

――ビデオストリーミングのビジネスにおいて、日本市場への期待は?

 マイクロソフトとしては、日本の顧客ベースをさらに広げたいと考えています。Azureのデータセンターは日本に2カ所あり、これはマイクロソフトが日本を成長市場だと見込んでいるからです。日本でも政府や教育機関、小売りや銀行など幅広い企業が利用してくれる可能性があるでしょう。

 また、2020年に開催される東京五輪も楽しみです。このイベントの映像コンテンツの配信を、マイクロソフトの技術でサポートできればと考えています。2020年には4K以上の高い品質のコンテンツが中心になるはずなので、それにも対応していきたいです。五輪は日本の視聴者だけでなく、世界中からインターネットを通じ映像を観ることになります。その際には放送局だけでなく広告を出すような企業にとっても、Media Servicesが有用な媒体になると考えています。

【注目資料】『マイクロソフトのDevOpsソリューションのTotal Economic Impact』

業務やビジネスにおいて、デジタル変革が大きな潮流となるなか、開発と運用が連携してリリースサイクルを速めるDevOpsは、デジタル変革において不可欠なアプローチとなっています。米Forresterは、Total Economic Impact (TEI) 調査を実施し、 組織がマイクロソフトのDevOpsソリューションを導入することで実現される潜在的投資利益率 (ROI) を調査しました。

この調査の目的は、マイクロソフトのDevOpsソリューションを組織で導入することによる潜在的な財務的影響の評価の概要を示すことです。本資料『マイクロソフトのDevOpsソリューションのTotal Economic Impact』(全28頁、無料PDF)は、マイクロソフトのDevOpsソリューションの実装に伴うベネフィット、コスト、リスクに関してDevOpsソリューションを導入した8つの組織に聞き取り調査を行ったレポート資料です。ぜひ本資料をご一読いただき、DevOps導入の参考資料としてお役立てください。  

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著者プロフィール

  • EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)

    「EnterpriseZine」(エンタープライズジン)は、翔泳社が運営する企業のIT活用とビジネス成長を支援するITリーダー向け専門メディアです。データテクノロジー/情報セキュリティの最新動向を中心に、企業ITに関する多様な情報をお届けしています。

  • 谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

    EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーター かつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリストとして、クラウド、データベース、ビッグデータ活用などをキーワードに、エンタープライズIT関連の取材、執筆を行っている。

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