10日、「SOA Architect Summit 2008」が日本IBM箱崎事業所のセミナールームにて開催された。「SOAを企業内に展開、実践していくうえで『アーキテクト』に求められる要件」をキーコンセプトに、同社が提供するSOAソリューションや、ビジネス・パートナーによる事例などの紹介が行われた。
基調講演では、株式会社セガ コーポレート本部 情報システム部 部長の松田雅幸氏が登壇。「IT投資中期計画を作る~仮想化、SOA、Web2.0時代のアーキテクトとの向き合い方」と題し、SOAなどのITアーキテクチャとの中期的な視点での付き合い方について、同社での取り組みをベースに語った。
セガにおけるSOA化の取り組み
ゲームメーカーとして圧倒的な知名度を誇る同社の情報システム部門は30人。基幹システムから、DWH、メールサーバ、勘定系などのあらゆる領域で、企画、設計、導入、運用のすべてをこなす。2~3年という短いサイクルで新サービスが登場しコモディティ化していくアミューズメント業界にあって、コンテンツの進化スピードに合わせてITの面からフォローを行っていくことが、情報システム部門のミッションである。
同社では、「柔軟性」「迅速性」「コスト削減」といった課題を解決するため、昨年よりSOAの導入を開始した。2~3年間におよぶ調査や研究活動を経た上で、スモールスタートという形で取り組んだ「BPELを利用した請求・支払ワークフローの開発」は、IT Japan Award 2008の特別賞を受賞。現在は、BPELワークフローのノウハウのブラッシュアップや、SOA化領域の拡大を織り込んだIT投資中期計画を作成しているところだ。
SOAの意義
松田氏はSOAを「IT業界におけるイノベーション」と位置づける。「商用コンピュータ」「OS」「クライアント/サーバ」といった従来型の製品イノベーションとは異なり、「仮想化・統合化」「Webサービス」「SOA」といった概念は、IT技術利用の方法について革命的な変化をもたらすという。
例えば、従来は「販売管理」「会計システム」「グループウェア」といった業務領域ごとに最適なシステムの導入を行うことが多かった。しかし、企業内にサーバ、OS、DB、言語のセットが増加していけば、環境ごとに必要なスキルやノウハウも変わってくるため、運用負荷や人員コストが増大してしまう。このような問題に対して、企業側は使用するサーバやOSを可能な限り統一するという対応策をとってきたが、特定のベンダーにロックインしてしまうというデメリットも存在していた。
SOAの技術を使えばこうした問題が解決できるのではないか、と同氏は期待を寄せる。ESBを介して相互の結合度を低い状態に保つことができれば、各レイヤーごとに様々な標準技術を検討し、最適化を進めることができる。結果として、ITに関わるすべてのサービスが産業として最適化されるということだ。