なぜ、現場と経営層のセキュリティ観は、ここまで乖離するのか?
― まずは、今回セミナーを始めるに至った経緯をお願いします。
蔵本 僕はこんな本を書いているんですよ。
―『もしも社長がセキュリティ対策を聞いてきたら』ですね、ええ、はい。
蔵本 何がすごいって、翔泳社さんのサイトでいきなり、日経BPの本を紹介するっていう。めちゃくちゃ不届きな。すんません、翔泳社さん、小泉さん、すんません。
― いいえ、まったく構いませんよ。どうぞうどうぞ。
蔵本 それでですね、今はセキュリティってすごく盛り上がってて、ワークスタイル変革なんかと同じで、経営層が気にするようになった。
― なぜ、経営層が気にするようになってきているのでしょうか。漏洩事件が怖いから、というのは今に始まったことではないし……
蔵本 セキュリティと経営という観点で考えたら、上場企業の60%くらいが有価証券報告書の中の事業リスクっていう欄にサイバーセキュリティリスクを開示しているっていうデータがありますね。書いてある内容が何年間か変わってないとかの指摘もありますけど、有価証券報告書の中にセキュリティが入ってるっていうのは進歩やと思うんですよ。セキュリティ対策っていうと、保険ですよねっていうイメージを持たれている方も多いと思うんですけど、今は違うんです。
― これまでのいわゆる「保険」的な位置付けからどのような位置付けになったんでしょうか。
蔵本 下手したら予算の出どころが変わっている企業もあるくらい、セキュリティのポジションが変わってきてます。どう変わったかっていうと、自社の株価を安定させたり、あるいは自社のセキュリティ対策がイケてるっていうことを、ステークホルダーの方や株主の方にアピールすることで株価を上げるための戦略的な投資としてセキュリティ対策というのを考えている企業も出てきてますね。
― それはかなり大きな変化ですね。
蔵本 「1円にもならないよね?」とかじゃないんです。そういうことを言っていると株主総会で株主にツッコまれて大変な目に遭っちゃうケースもあります。万が一情報が漏れて株価下がったら株主の人が損するじゃないですか。株主さんにとったら他人事とちゃいますからね。というわけで、セキュリティの位置付けがかなり変わってきてると。IR情報になってきてるということなんですよね。これは非常に重要な変化です。
― やみくもな「漏洩こわい」から、IR情報としてのセキュリティ対策へ。経営層がやっと興味を持ち出したということですね。
蔵本 そういう背景もあって、経営層にどうわかってもらうのか、というのは重要なテーマやと思っています。というのも、現場と経営層で言ってる話が、めっちゃ乖離しているんですね。話が全く通じてないケースもあるあるです。経営層が現場を理解するか、現場が経営層を理解するか?
― どっちも必要そうですね。
蔵本 経営層がセキュリティ勉強して、現場が経営を勉強するというお互いの歩み寄りがベストやと思いますけど、そんな事ができるんやったら苦労はしてへんわけです。まずは、現場のエンジニアが経営層にわかる話し方を押えれば、かなりイケるはずなんです。僕も最初はポイントがわからなかったんですけど、何を伝えれば良いのか、どう伝えれば良いのかが、最近、ようやくわかるようになってきた。で、そのノウハウをお教えしますというセミナーです。
― 話し方。なるほど。たとえば、どんなポイントがあるんですか?
蔵本 たとえば、エンジニアがやってしまいがちなのが、事象の説明はするけど、それによってビジネス上どういう不利益を被るのかまで説明できないとかですね。いくつかポイントがあって。それができるだけで、伝わり方が劇的に向上する、というポイントをお教えします。