マイクロソフト製品とAI技術に強みを持つ富士ソフト
富士ソフトは、日本を代表する独立系SI企業。グループ全体で1万人を超える従業員が在籍し、そのほとんどがエンジニアという国内トップクラスの技術者集団だ。同社はまた、マイクロソフトと長らく密接な協業体制を築いてきたことでも知られる。富士ソフト MS事業部 AIサービス部 部長 高野祐一氏は、両者の密接なパートナーシップについて次のように語る。
「マイクロソフトの製品・サービスを専門に扱う部門を設け、約200名が在籍しています。東京(秋葉原)、大阪の各オフィスには『マイクロソフト ソリューション&クラウドセンター』を常設し、お客様がマイクロソフトの製品やサービスを実際に体感いただける環境を提供しています」
また富士ソフトは、早くからAI関連のソリューションに積極的に取り組んできたことでも知られている。最も代表的な例が、同社が独自開発したコミュニケーションロボット「PALRO」だ。PALROは自立二足歩行が可能な小型ヒト型ロボットで、AI技術をベースにした高度な音声認識機能と会話エンジンを装備し、人間との自然な会話を可能にしている。その自然な会話や愛らしい外見が評判を呼び、高齢者福祉施設における介護ロボットや、金融機関の窓口対応など、幅広い用途で活用されている。
AzureのAIを手軽に体験できる「Azure AI トライアルパック」
そんな富士ソフトが、マイクロソフトとの密接な協業の中で培ってきたMicrosoft Azureのノウハウと、独自に磨き上げてきたAIの技術を融合させたソリューションに乗り出したのは、自然な流れだといえる。2016年には国内でいち早く「Cortana Intelligence Suite」を本格導入し、マイクロソフトの各種AI関連サービスを活用した販売予測システムを食品メーカーに提供したほか、さまざまなプロジェクトでも広く活用しているという。
こうした実績を背景に、Azure Everywhereのメニューの1つとして同社が提供を始めたのが、「Azure AI トライアルパック」という技術検証サービスだ。その名の通り、Microsoft AzureのAI関連のサービスを使ったソリューションの検証環境を手軽に構築し、その効果を体験できるというものだ。
具体的には、まず富士ソフトの技術者とユーザー企業の担当者との間でワークショップを開き、「どの問題領域に対して、AI技術を使ってどんなアウトプットを得たいのか」について意識合わせを行う。
次にその内容に沿って、富士ソフト側でMicrosoft Azureの各種AIサービスを駆使して実際に検証環境を構築する。そしてこのシステムに対してお客様のデータを投入し、その結果得られたアウトプットをお客様と共有した上でその内容を評価し、さらに次の展開へとつなげていく。
一口に「AIを使ったソリューション」といっても、その種類は千差万別だが、Azure AI トライアルパックではその中でも特にニーズが高い「需要予測をはじめとした数値データ予測検証」と「ヘルプデスクや社内QAなどのbot化検証」を中心とした検証環境を提供する。
本サービスの提供価格は、データ量をはじめ幾つかの要素によって変動するため個別見積もりとなるが、誰もが手軽にAIを体験できるよう、検証導入メニューが50万円からというリーズナブルな価格が設定されており、さらにキャンペーン期間中に申し込んだユーザーは日本マイクロソフトが検証費用の一部を負担する。
「Azure AI トライアルパックでは、何より手軽にAIの効果を体感していただくことを目的にしています。そのため、価格や期間を極力おさえて提供しています。まずはこの段階では『自社データからどんなアウトプットが得られるか』を知っていただくことを主たるゴールに据えています」(高野氏)
Azure AIを通じてビジネスを支援し続けられる仕組み作り
なお独立系SI企業である富士ソフトでは、マイクロソフト以外のベンダーのAI製品・サービスも手掛けている。それらと比較した場合のMicrosoft Azureを利用した AIサービスの特徴について、同社 MS事業部 事業企画部 事業推進グループ リーダー 和田大亮氏は次のように述べる。
「我々がAzure AIを選んだ理由は、主に2つあります。1点目は他社のAIシステムと比較しても、音声/言語解析/画像認識など、既に学習済みの多くのサービスやアルゴリズムを備えていることが挙げられます。お客様の要件にフィットさせ、実ビジネスで活用いただく為のカスタマイズ性に極めて優れている点が大きな特徴です。2点目はセキュリティレベルの高さです。AIやデータ分析システムを構築・運用する際には、お客様から大量のデータを預かることになりますが、Microsoft Azureは多くのセキュリティ認定を受けており、安心してお客様に使っていただくよう提案ができます。AI/アナリティクス関連市場は、今後も大きな可能性があります。長くお客様と寄り添い、サービスをチューニングし提供を続けるためには、Azure AIの採用が最適でした」
時には天気、気温などの気象データを、またSNSなど外部のオープンデータも活用し、お客様が保有するデータとの因果関係を導き出し予測精度を向上させ、その精度をさらに高めるべくチューニングを施し、実行し、その結果を評価して次のチューニングにつなげる……この絶え間ないPDCAサイクルを回し続けてこそ、はじめて実効性のあるAIの仕組みを実現できる。AIをビジネスに適用させる為には、データサイエンスの能力も非常に重要となる。
富士ソフトは、システムの設計・構築だけでなく、データサイエンティストによるデータ分析や稼働開始後のチューニングも含めたAIシステムのライフサイクル全体を一気通貫でサポートするという。
「予測モデルもbotの仕組みも、成果を上げるには適切なデータ分析と継続的なチューニングが何よりも重要です。弊社は国内トップクラスの技術者集団として、Azure AI トライアルパックを使った事前検証から、データ分析、導入プロジェクトの支援、そしてシステムの稼働開始後のチューニングや保守まで、すべてのフェーズに渡ってワンストップでソリューションを提供できるのが強みです」(和田氏)
こうした強みを活かし、既にAI分野で数々の実績を残す同社だが、今後も継続的にこの分野へ投資し、より多様なサービスを展開していくという。この戦略を推し進めるに当たり、高野氏はMicrosoft AzureのAIを現在よりさらに広く、深く活用していきたいと抱負を述べる。
「私はMicrosoft Cognitive Servicesを活用したビジネスに、とても大きな可能性を感じています。現在はさまざまな業種・業態に対応可能な汎用的なAIサービスを提供しておりますが、Cognitive Services の画像認識や顔識別、音声認識など、幅広い機能を活用し、業種・業態に特化したサービスや利用シーンに応じたシナリオベースでのサービスを開発して、より高い価値をお客様に提供していきます」