SNSのメッセージでセキュリティ企業から勧誘を受ける
2017年1月からセキュアスカイテクノロジー(以下、SST)のCTOに就任したはせがわようすけさん。CTOを即興で「ちゃうねん、とりあえず、大阪弁」と冗談にする。関西人気質なのか、常に笑いを織り交ぜて場を盛り上げようとする。
「小学校の時、将来なりたい職業は詐欺師、弁護士、役者だったんですよ」。人を欺いても平然としている姿がいいと思ったそうだ。欺くところはさておき、人前で動じないことや人に影響を与える姿をイメージしていたのかもしれない。現実は「詐欺師は犯罪、弁護士は難しい、役者も大変」ということで全部断念したものの、筆者にはエバンジェリストや講師という形で小さい頃の理想像を健全に実現しているように思えた。
今でこそはせがわさんはWebセキュリティの専門家だが、もともとは電子回路の設計が専門。回路が使われる現場は建設現場や発電所などインフラに関わるため、機械は大型で常に堅牢であることが求められていた。「これが止まったら数百万軒の送電が止まる」という重要な機械もあり、安全かつ確実に動かすという感覚は早い段階から鍛えられた。
転機は2004~5年、いろんな分野で勉強会が開催されるようになったころだ。はせがわさんも自己啓発の一環で勉強会に足を運ぶようになった。本業の回路設計とは直接関係ないものの、堅牢性でつながりがあるセキュリティに関心を持つようになった。
勉強会を通じてセキュリティの人脈が広がった。その中にはセキュリティ対策をしているネットエージェントの杉浦隆幸さん(当時社長)もいた。ある日、はせがわさんは杉浦さんからSNSのメッセージを通じて「大阪で働きませんか?」という誘いを受けた。これから同社が大阪支社を開設するから、そこで働かないかという勧誘だった。
回路設計とセキュリティは分野が異なるため大きな決断だったはずだが、はせがわさんは「どこに行ってもやれるだろう」には不安はなく楽観的。勉強会を通じて社会にセキュリティ課題が山積していることを知り、「自分ができることが何かあるだろう」という気持ちのほうが強かった。ここからはせがわさんは本格的にセキュリティに取り組むことになる。
はせがわさんは杉浦さんの、ビジネスを生み出すセンスに一目置いている。「ログを記録することはエンジニアなら誰でも可能だけど、それがビジネスになるとは思わない。でも杉浦さんはそれを情報漏洩やウイニー対策のビジネスにした」(はせがわさん)。
ネットエージェントでは杉浦さんが「面白い」と感じることからビジネスを構想し、はせがわさんが実際の業務への影響も考慮しつつ技術的に実現していくという役割を担った。はせがわさんはセキュリティを通じて社会貢献を考える杉浦さんの正義漢ぶりも尊敬していて「手伝えてよかった」と話す。
技術顧問から正式に移籍
はせがわさんは前職に従事しているときから、現在在籍しているSSTに技術顧問として関わるようになる。技術顧問の時は数ヶ月に1度ほど、技術的な情報交換などをしていたという。ネットエージェントは情報漏洩の対策や調査が専門で、SSTはWebサイトのセキュリティ対策を専門としている。同じセキュリティ企業でも守備範囲が異なるため、パートナーという関係が成り立つ。もともと技術顧問としてなじみのある会社である上に、はせがわさんの強みはSSTのコア業務でもある。こうして、はぜがわさんがSSTに移籍することになる。
SSTに移ったものの、「やっていることはあまり変わらない」という。専門分野がWebセキュリティであることは変わらないからだ。ただし語る対象は広がった。これまでは講演や記事執筆など、表向きに情報発信することが多かった。しかし今では社内に向けて語ることにも力を入れ、経営者として組織作りにも意識が向くようになった。