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(第21回)イノベーションに効く翻訳書12:『ホワイトスペース戦略』 なぜビジネスモデル変革が進まないのか? 企業内イノベーターへの処方箋『ホワイトスペース戦略』

  2014/07/17 08:00

 「ビジネスモデル」という言葉は、ずいぶんと普及したように思える。その概念を私たちが理解する上で、すぐに思い浮かべる『ビジネスモデル・ジェネレーション』は大きな功績を果たした。その半年前に出版された『ホワイトスペース戦略』を“隠れた名著”として紹介したい。実は、著者であるマーク・ジョンソンは『イノベーションのジレンマ』で有名なクレイトン・クリステンセンとイノサイト社を設立した共同創業者である。つまり、『イノベーションのジレンマ』シリーズとして読むと、さらに深い気づきが得られる一冊なのだ。

そもそもなぜ、「ビジネスモデル」に注目が集まるのか?

ホワイトスペース戦略
マーク・ジョンソン(著)
池村千秋 (翻訳)/ 阪急コミュニケーションズ・刊

 クリステンセンによると、企業は製品やサービスの性能を連続的に改善するような「持続的イノベーション」は得意で、大企業になればなるほど、「破壊的イノベーション」は苦手になると言います。「破壊的イノベーション」が起きると、競争の基準が従来競っていた性能から、別の性能軸へと移り変わり、旧来の性能軸で勝っていた企業が破壊されるほど一気に強みを失います。

 例えば、非常に初期の携帯電話は鞄にやっと入るような大きさで、通話範囲も限られていました。しかし、「携帯できる」という機能的な価値を提供するだけで、市場の独占(当時はまだ小さかったけれど)が可能だったのです。

 次に携帯できることが当たり前になると、通話範囲や、音声の品質、などの信頼性へと競争の基準が移り変わり、さらには、小型軽量性、使いやすさなどの利便性へと競争の基準が移り変わります。「利便性」という基準に競争が差し掛かると、いわゆる「技術では勝って、事業で負ける」という事態が良く発生します。

 なぜなら、「使いやすいか」「生活に馴染むか」という競争になると、技術ではなく、顧客に対する洞察が勝負を分けるからです。そのような「技術力では勝っているのにもかかわらず、事業で負ける」(妹尾堅一郎氏のこの表現は非常に分かりやすい)ことから脱却するには「事業の仕方を変えるしかないよね」、ということでビジネスモデルに注目が集まったのです。

 ちなみに、『ホワイトスペース戦略』の原書が出版されたのが2010年2月、『ビジネスモデル・ジェネレーション』2010年7月、妹尾さんは『技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか』は2009年7月出版ですので、一年も早くビジネスモデル変革をテーマにされていました。

競走の基準の変化
▲ 図1:競走の基準の変化




著者プロフィール

  • 津田 真吾(ツダ シンゴ)

    日本アイ・ビー・エム、日立グローバルストレージテクノロジーズ、iTiDコンサルティングを経て、イノベーションコンサルティングおよびハンズオン事業開発支援に特化したINDEE Japanを設立。HDDの開発エンジニア時代に「イノベーションのジレンマ」に触れ、イノベーションの道を歩み続けることを決意する...

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