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AIで置き換えられるもの、人間にしかできないもの―統計家・西内啓氏が解説する「データを活かせる組織の作り方」

2017/12/04 06:00

 企業におけるデータの利活用で失敗する企業は多い。長く統計分析に携わり、株式会社データビークルで共同創業者副社長を務める西内啓氏は「そもそも誰が何に何のために取り組めばいいのか、戸惑っている会社が多い」と語る。その結果、組織づくりに大きな課題感を抱えるという。はたして、どのようなところに配慮すればいいのか、また落とし穴はどこなのか。「data tech 2017」(主催:翔泳社)に登壇した同氏が、「データを活かせる組織」となるための考え方や注意点について紹介した。

どんなに良い分析結果であっても、意思決定に活用されなくては意味がない

 講演のテーマを「データを活かせる組織の作り方」とした理由について、西内氏は「企業のデータ活用で最大の課題と思われたため」と語る。実際、日本情報システムユーザー協会による(2015年)調査結果においても「ビッグデータの活用の課題」について「体制/組織の整備」と答えた企業が45.9%と最も多く、「誰にやらせるか、どんな部署でやるか、どのような権限を与えるか」と迷う様子がうかがえる。

株式会社データビークル 代表取締役 最高技術責任者 西内 啓氏

 そして、それ以上に西内氏が問題視するのは、「導入する目的の明確化に問題がある」と答える人が2番目に多いことだ。世の中でデータの活用が是とされる中で明確な目的意識を持たず、「何かやらなくては」「やれと言われている」という企業担当者の姿が目に浮かぶ。

 目的が定まらなければ体制・組織が設計できるはずもなく、効果が不明なら費用対効果が説明できるわけがない。さらに分析ができる人材確保が難しくなっていることもある。分析する対象データの選定に戸惑っているところも多く、ないない尽くしの上「誰が何をすればいいのかがわからない」という状況にある企業も多い。

 そもそも「データを活かせる組織」とはどのようなものか。西内氏は「すべてがシームレスに連携していることが必須」と語る。 まずデータが正しく整備されていることは重要だが、必要な分析が行われなければ意味がない。例えば業務や業界に興味が無い人が分析すると、数学的には正しくとも価値のないものになる可能性が高い。そして、どんなに良い分析結果であっても、意思決定に活用されなくては意味がない。そして現場で活用されたら、その効果がデータによって検証できる必要がある。要はデータ活用のPDCAサイクルが適正に動くことが大切なのだ。

出所:「data tech 2017」 株式会社データビークル 西内 啓氏 講演資料より

 「データが素晴らしい、分析も素晴らしい、でも意思決定する人が数字嫌いとなれば、そこで輪は切れてしまいます。データを活かせる組織づくりには、そうしたボトルネックを探し、その理由を見つけて解決することが大切です」(西内氏)

 西内氏曰く、コツコツ作り上げていくといつかゴールにたどり着ける「足し算の仕事」に対し、分析の仕事は「かけ算の仕事」。全体の中で1未満の人がいれば価値は目減りし、ゼロやマイナスの人が混じれば無用の長物となる可能性がある。

 例えば、Amazonでは現在、業務と分析の間に人間の意思決定を入れず、シームレスな環境を構築している。一般的な書店なら、店長がおすすめ商品を選定するという意思決定をするのが普通だ。しかし、Amazonはリコメンドエンジンを自動化し、自律的なPDCAサイクルを構築している。

 そんなAmazonも、かつてはリコメンドエンジンの導入に懐疑的だったが、開発者がA/Bテストによってリコメンドエンジンの効果を実証し、上層部を説得することに成功したという。そうした経緯から、人の意思決定に頼らず、自動化する文化が生まれてきたと言われている。

 そもそも「分析による意思決定」は難しい。まずは分析において「どの指標を最大化し、最小化するのか」という判断が必要になる。それが間違うと全く意味のない分析となりかねない。例えばあるハイブランドアパレルで“普通に”分析すると、セールで大量に購入する人が最も売り上げに貢献するという結果が出る。しかし、ブランドの性格上、本当に大切にするべき顧客は、シーズンの初めに定価で購入してくれる人だ。つまり分析すべきなのは「顧客の売り上げ」ではなく、「顧客がもたらす粗利」や「商品としてのプロパー消化率」などと考えられる。そうした指標の設定ができるのは業務をわかっている人だけだ。

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  • DB Online編集部(ディービーオンライン ヘンシュウブ)

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  • 伊藤真美(イトウ マミ)

    フリーランスのエディター&ライター。もともとは絵本の編集からスタートし、雑誌、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ビジネスやIT系を中心に、カタログやWebサイト、広報誌まで、メディアを問わずコンテンツディレクションを行っている。

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