サービスを定義する
これまでに多くの人々がサービスを定義してきた。しかし、これまで誰もがなるほどと思える定義はないといえるだろう。経済学では「財貨とサービス」を単純に区分けして議論されてきた。しかし、サービスの形態が多様化し、この単純な定義では納得できる議論ができなくなっている。
このような背景のもと、納得できる「サービスの定義」がサービスサイエンスの大きな課題の一つになっている。2007年1月に行われた情報処理学会の「ソフトウェアジャパン2007」でサービスサイエンスをテーマにした講演とパネルディスカッションが行われた。筆者は講演とパネルディスカッションに参加させてもらった。このパネルディスカッションで東京大学名誉教授の吉田民人先生がサービスの定義に言及された。
「サービスの本質は機能であるが、すべての機能ではなくユーザーの期待に応えるものでなければならない」
この発言を筆者なりにまとめたのが図1のサービスの定義である。この定義はこれから多くの方と議論を深めていきたい。
このサービスの定義ではヒューマンサービスと製品や設備やシステムなどが提供するサービスを一つの土俵で議論できる。したがって、現実世界の複雑なサービスを対象に価値ある議論が展開できそうである。例えば、コールセンターではエージェントやスーパーバイザーだけでなく、デジタル交換機やコール管理システムなどが提供するサービスをトータルで議論できる。