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#5 グローバルITガバナンスへの道程

  2011/02/25 00:00

多くの企業がITのグローバル化に取り組んでいるが、必ずしも成功に向けた王道が準備されているわけではなく、試行錯誤が続けられている。最終回となる今回は、真のグローバルITガバナンスを実現するための道程についてまとめてみたい。

攻めと守り、どちらを優先するのか

ITのグローバル化の道程は、企業風土、事業特性、事業展開の経緯、経営におけるガバナンス形態に大きく左右される。グローバルCIOにとって、特に重要な判断要素となるのが、第4回で述べた4つの原則の、「原則①プロセスとリソースの最適化」と「原則④ビジネス・イノベーションの促進」のどちらに重きを置くのか、すなわち、守りと攻めのどちらの戦略を優先すべきかであるという点である。

原則①を優先する場合は、中央集権的な組織で共通プロセスを最大化する取り組みが有効となろう。一方、原則④を重視するのであれば、成長が期待される特定のビジネスユニットや地域に焦点をあてて、成功事例をつくることが有効となろう。その際には、ビジネスユニットや地域ごとにビジネスサービスとITを一体化した組織形態が1つの適合するパターンと考えられる。

いずれを優先する場合でも重要なのは、グローバルなビジネスの戦略と事業ポートフォリオをIT部門がいかに正しく理解しているかという点につきる。

全体最適にベストプラクティスはない

より安価な労働力を求める、あるいは、飽和感のある国内市場から脱却し魅力に満ちた新たな市場を開拓するなど背景はさまざまだが、多くの企業にとって、ビジネスのグローバル化は避けて通ることのできない戦略となっている。

現時点でグローバル経営やグローバルITガバナンスに対して、明確な方針や確固とした方法論を有する国内企業は非常に少ない。しかし、多くの企業においてグローバル・オペレーションが前提となる時代が遠からず訪れることは疑いようがない。

また、グローバルITガバナンスとグループ全体を視野に入れた全体最適への取り組みに1つのベスト・プラクティスがあるわけではない。しかし、ITを無統治の状態にしたまま国際的な競争に挑むことには大きなリスクが伴うことを念頭に置かなければならない。

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ITのグローバル化では、これまで通ったことのない、地図にない道を開拓しながら進んでいくことが強いられるだろう。

企業は経営およびITに関するグローバルなガバナンスモデルを早急に構想化し、段階的な展開を図る準備を進めることが求められる。

本社IT部門は、地域およびビジネスユニットのIT責任者と定期的な会合をもつなどして協力体制を構築し、まずは現状のシステム環境に関する情報を共有することが求められる。その上で、全体最適と差異化のバランスを考慮したグローバルなITマネジメントとITアーキテクチャのあり方を討議し、共通の認識を深めることが求められる。



著者プロフィール

  • 内山 悟志()

    株式会社アイ・ティ・アール 代表取締役 プリンシパル・アナリスト  大手外資系企業の情報システム部門などを経て、1989年にデータクエスト・ジャパン株式会社に入社し、IT分野におけるシニア・アナリストを務める。1994年、情報技術研究所を設立し、(現:㈱アイ・ティ・アール)代表取締役に就任。同分野では世界最大手である米国ガートナーグループと業務提携契約を締結、ガートナーグループ・ジャパン・リサーチ・センター代表を兼務する。1997年12月に、ガートナーグループとの提携を解消し、社名を株式会社アイ・ティ・アールに改め現職に。現在は、大手ユーザー企業のIT戦略立案・実行のアドバイスおよびコンサルティングを提供する。主な著書に「TCO経営革新」(生産性出版:共著)、「名前だけのITコンサルタントなんていらない」(翔泳社)、CIO Magazineにおける編集協力・記事多数、その他寄稿記事、講演、新聞、専門誌等へのコメント提供多数。

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