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日本通運株式会社 IT推進部長 野口雄志氏 プライベート・クラウドの導入で情シス部門の仕事が変わった ~日本通運のシステム改革

  2011/07/25 07:00

IT基盤を変革すべく、全社的なITインフラの仮想化し、企業内クラウドを構築した日本通運。本格稼働後は、硬直化しがちなサイロ型システム構築から脱却に成功し、パートナー企業との関係性、エンドユーザー部門の意識も大きく変わりつつあるという。同社 IT推進部長 野口雄志氏らに話を聞いた。

サイロ化したシステム環境を改革するためクラウド化を決意

 

企業内クラウドを構築されたと伺いました。まずは構築の経緯を教えて下さい。

野口

これまで数十年間、当社では業務ごとにシステムを作る、いわゆる「サイロ型システム」の構築を進めてきたわけですが、やはり色々な面で限界を感じていました。そこで、2008年ごろからシステムの将来的な方向性について検討を開始。その過程で、仮想化、クラウド・コンピューティングといった新しいテクノロジーに出会い、それらに着目するようになったのです。

日本通運株式会社 IT推進部長 野口雄志氏
日本通運株式会社 IT推進部長 野口雄志氏
 

業務システムがそれぞれに個別のインフラを持つのではなく、一つの巨大なプールから必要に応じてリソースを切りだすことができると知って、「これでいこう」と決めました。ただし、最初からプライベート・クラウド、当時はインターナル・クラウドという名前で呼ばれていたと思いますが、それ自体の構築を目指していたわけではありません。欲しいものを追求していったら、結果として出来上がったのがプライベート・クラウド、企業内クラウドと呼ばれるものだったというイメージですね。

編集部

なるほど。ちなみに、サイロ型システムの限界とは具体的にどのようなものだったのでしょうか。

野口

端的に言えば、構築に時間が掛かるということですね。情報システム部門の人間は基本的にシステムを構築することが好きです。だから、一所懸命に作る。ただ、それで手一杯になってしまって、そこから先に手が回らなくなっている点に問題を感じていました。システムは作るだけではダメですよね。活用してこそ意味があるものです。しかし、一番大切な「どう活用するか」を考える余裕がなくなっていたわけです。

編集部

過去のインタビューでも、「システムは活用してこそ意味がある」と繰り返し仰っていますね。

野口

私の持論なんです。今までの当社の情報システム部門は、サッカーにたとえると、業務部門からのアクションに応じて動くディフェンスのような存在でした。もしかしたら、ゴールネット裏の応援団だったかもしれません。これではいけない。自分たちも試合に参加しなければならない。フィールドに出て、積極的に攻撃に参加しなければならないと考えました。

 

システム部門としてやるべきことは、「システムを社内でたくさん使ってもらうこと」だと思います。我々は常に「ITの利用シーンをもっともっと増やすためにはどうしたら良いか」を考えています。その意味で、今回の企業内クラウドの出発点も根っこは同じですね。

編集部

なるほど。クラウドの構築後はどのような変化がありましたか?

野口

スピード感が変わりました。圧倒的に違いますね。従来、新規システム構築となれば全くのゼロからのスタートでした。インフラ部分を整えるところから始まって、全部で半年から1年くらい掛かっていた。ところが今は、インフラが既に用意されているわけです。それこそ1週間、10日という単位で用意ができてしまう。ITは使い始めるのが早ければ早いほど効果が出るものです。この変化は非常に大きいと感じています。

永瀬

パイロットシステムやテスト環境も作りやすくなりました。サーバーの調達コストなどを考えると、従来、システム構築はどうしても敷居の高いものになりがちでした。しかし、クラウドならば構築したシステムが使い物にならないと判断した場合に、リソースをプールに返却するだけで済む。非常に敷居が低くなりましたね。結果、利用者に「とにかくやってみよう」という機運が生まれた気がします。現在、使用されているリソースの総量は、クラウドを構築する前に利用されていたリソースの総量を上回っています。

編集部

つまり、クラウドの導入によって、今までよりも多くの場面でシステムが利用されるようになったと言うことですね。利用シーンを増やすという目的が達成された。

野口

まさに狙いどおり。

大沼

製品選定の際にもクラウドの恩恵を受けています。例えばミドルウェアの選定を行う場合、採用候補の分だけ検証環境を用意し、各製品の試用版を並列で動かして性能比較をするようなことができる。今までは、カタログスペックやパートナー企業との人間関係で決めるしかなかったところが、実際のパフォーマンスで比較できるようになったわけですから大きな違いです。ニーズに合った製品を採用できるようになりました。

野口

それから、コスト削減効果も大きいですね。先ごろ、クラウド導入で浮いた予算を使って大規模なバックアップ・データセンターを構築しました。当社のような社会インフラを担う企業にとってシステム保護、データ保護といった事業継続性の担保は重要だと考えていたので喜ばしく思っています。

編集部

実際にクラウドはどのように運用されているのでしょうか?

大沼

ハードウェア、ミドルウェアを組み合わせた仮想サーバーのカタログを用意しています。今のところ、アプリケーション・サーバー3種類、データベース・サーバー3種類の計6種類。利用者は、Excelベースの申請書に必要事項を記入して、情報システム部門に提出します。担当者がその内容をチェック、必要なインフラ・リソースを払い出します。プールのリソース容量が足りなくなった場合も、3日あれば増設可能です。

編集部

ポータルからセルフサービスで払い出すような仕組みにはされなかったのですね?

大沼

個別の要件などもありますし、用途などもチェックする必要がありますから、あえてドキュメントによる申請フローを採用しました。セルフサービスで利用できる方が形としては美しいのですが、実際にはなかなかそうも行きませんね。

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