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対談:ビッグデータ活用の現場から考えるプライバシーとセキュリティ【医薬学博士 笹原英司氏×日本HP 藤田政士氏】

  2014/07/31 11:00

ビッグデータ活用は”アクセルとブレーキ”の総合的な視点で取り組め

藤田 技術が進み、スマートデバイスも普及しつつあるなかで医療関係はまだ不十分なところが多くあるという現状がよく分かりました。情報システムを構築する上での課題はどのようなところにあるでしょうか。

笹原 新規開発のほうに目が向きがちですが、ビッグデータ活用で要となるのは運用管理だと思います。運用しながらデータに関わるスキルやナレッジを積み上げていくのが大切です。データをためて学ぶことをしないと人材も育ちません。最初からパーフェクトなフレームワークはないのですから、ベストプラクティスを積み上げていくと考えてもいいのでは。海外など先に進んでいるところからうまくキャッチアップするのもひとつの方法です。

藤田 フレームワークを大きくとらえるのも大事ですね。少し話はそれますが、行政だと「データを40年間保存」という要件を見ます。残念ながらIT技術は人間の寿命よりも短い。将来的にデータどう保全、維持していくのも課題かと思います。

笹原 医療だとデータは永年保存という感覚が現場にはあります。ただしライフサイクルは複雑です。税法上、ハードウェアやソフトウェアの減価償却は5年、診療報酬の改定は2年おき、介護報酬の改定は3年おき。サイクルがばらばらなのです。今後、介護と医療の提供体制を段階的に改革する「医療・介護総合推進法」の施行や2018年度に想定される診療報酬・介護報酬の同時改定に向けて、うまく連携作業をやらなくてはいけません。

 従来のようにシステムを「資産」としてとらえると無理がでてきます。「費用」としてとらえてクラウドを活用していくように発想を変えていく必要があると思います。アメリカもそういう発想になりつつあります。

藤田 「資産ではなく費用」という発想の転換ですね。海外とのコンセンサスの違いも気になります。どうなっていくのでしょうか。

笹原 医薬品の治験・臨床試験で興味深い話があります。今まで希少疾患は患者数が少ないので製薬メーカーから見たら「ペイしない」とみられていました。一国で考えれば。しかしグローバルに展開すれば、治験・臨床試験の対象患者数が確保できて事業モデルが成立する可能性が出てきます。今では投資ファンドが希少疾患の新薬開発を目的としたポートフォリオを組成しています。MITの金融工学研究者による試算では、希少疾患向け新薬開発投資ポートフォリオについて、2桁の利回り(ROI)が発表されています(参考:「Financing drug discovery for orphan diseases」Drug Discovery Today、2014年5月)。  

 クラウドファンディングで不特定多数の個人投資家からグローバルに資金を募ることも始まっています。これまでは製薬メーカーが自前で投資して、利益を上げたら株主に還元するという流れでしたが変わりつつあります。今では株主や投資家は先述したようなファンドに投資をしたほうがより高いリターンが得られ、社会貢献活動としてもいいと考えられています。  

 こうした変化が起きてくると、グローバルにデータを共有することが不可避となります。場合によっては(グローバルに治験・臨床試験を展開すれば)患者もあらかじめ把握できているので新薬も売りやすい。製薬のビジネスサイクルが変わります。

藤田 確かに。データのグローバル化は不可避ですね。

笹原 それだけではなくて、日本の成長戦略にも関わってきます。日本で治験・臨床試験をするよりも、グローバルで治験・臨床試験をしたほうが費用や時間が節約できるとなれば、臨床開発の場が海外にシフトします。すると医薬品としての商品化も海外が先行することとなり、医薬品ビジネスの主導権が海外に流れてしまうことになります。逆にアメリカ、カナダ、ヨーロッパはそうしたことを狙ってビッグデータ活用を考えているのです。さらにこうした動きを見て中国、インド、シンガポールなどアジア新興国はキャッチアップしようと考えています。国際間の競争力の話になってきます。

藤田 ビッグデータから企業戦略、国際競争力にもつながるのですね。

  
 

笹原 ただしプライバシーとセキュリティの議論をセットで考慮する必要があります。メリットとデメリットのバランスを検討しながら、全体でROIを出さないと。まさにアクセルとブレーキです。欧米はまさにセットで考えているため(ブレーキを踏むことも想定しているため)、大胆にアクセルを踏むことができるのです。早い段階からセキュリティポリシーも含めて検討を進めていく必要があります。日本は、特に経営層やマネジメントに関わる人はビッグデータをイノベーションのベースだという認識を持つ必要があると思います。

藤田 ビジネスもオープンデータもグローバル展開の流れは必至ということですね。こうした概念を共有していかないと企業のビジネスだけではなく、日本の競争力にも影響してくると。また、ビッグデータ活用はアクセルとブレーキの総合的な視点で取り組んでいくことの重要性を痛感しました。本日はありがとうございました。

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  • 加山 恵美(カヤマ エミ)

    EnterpriseZine/Security Online キュレーター フリーランスライター。茨城大学理学部卒。金融機関のシステム子会社でシステムエンジニアを経験した後にIT系のライターとして独立。エンジニア視点で記事を提供していきたい。EnterpriseZine/DB Online&nbs...

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