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超入門!ベンダー管理の基本

調達時:工数費用の妥当性判断―「根拠なし」で値切っても費用は下がらない(第4回)

 前回はベンダーから提案を受けるには、RFP(Request For Proposal:提案依頼書)を出しましょう、という話をしました。今回は実際に出てきた提案書を評価する方法について解説します。

ベンダーからの提案書をどう評価すべきか?

 あなたがベンダーの提案書に期待することは何でしょう。  

  • 自分が思いつかなかったグッドアイデア
  • 自分が質問したことに対する明確なアンサー
  • 何にいくらお金がかかるか分かる明朗な見積もり  

 しかし、残念ながらその期待に応えてくれる提案書は数少ないです。

自分が思いつかなかったグッドアイデア → ×

 多くの場合、ベンダーが提案する内容は、自分たちがすでに持っている製品やできること(ソリューション)であり、Webや書籍で出回っている一般的なアイデアを超えることはありません。先進的なアイデアを示す提案があったとしても、前例が少ないためにトラブルに見舞われるリスクを多く抱え込んでしまう点を見て、「ハイリスクなので良いかどうか判断できない」という場合がほとんどです。  

 数年前に私が関わった案件で、大量のバッチ処理を必要とするシステムのRFPが発出されました。ユーザー企業側は夜間処理時間を劇的に短縮する方法を模索していたのですが、自分たちが調べた限りでは事例が見つからず、ベンダーからの提案に期待していたのです。

  しかし、ベンダー各社が提案したのは自分たちがすでに知っているやり方であり、期待を超える提案はありませんでした。  

 反対に、あるシステム構築の案件で、テストを半自動化するツールを提案に含めてきた先進的なベンダーがいましたが、その提案を受け取ったシステム部門は自分たちが使いこなすイメージが持てず、従来通りの手作業でテストを行うベンダーが選ばれました。

自分が質問したことに対する明確なアンサー → ×

 ベンダーはベンダー自身が望む提案をしてきます。そのため、提案書にはベンダーが説明しやすい形で内容が構成されていますが、提案を受けるあなたにとって分かりやすい構成になっているわけではありません。RFPで提案書に明記した要件がどこに盛り込まれているのか、ベンダーから直接説明を受けないと分からないものが多く、その提案が本当に自分が求めているものなのか見極めることが難しいのです。  

 たとえば、一昨年に作成したRFPでA・B・Cという3つの機能を欲しいと明示していたのに、ベンダーの提案書には「A・Bという機能を拡張してXを追加する」ことが示されていました。欲しかったCに関する提案はどこにもなく、ベンダーの提案担当者にヒアリングして「Xの中に部分的に含んでいる」ことがようやく分かりました。自社の提案がRFPにフィットしないため、敢えてぼかして提案していたのです。  

 他にも、相手が回答しやすいように要件を箇条書きで提案書にまとめていたのに、それを無視した異なる項目へわざわざ書き換えてきたベンダーも多数ありました。ベンダー側が答えやすい書き方に書き換えて提出してくるというのは、RFPを出す方からすると評価する気が失せます。

何にいくらお金がかかるか分かる明朗な見積もり → ×

 提案書で最も困るのは、提案内容に対する費用が分かりにくいことです。こちらは開発作業やサーバー構築作業、ソフトウェア・ハードウェア資産といった単位で費用を把握したいのに、「システム構築一式:5000万円」としか書かれていない見積書は星の数ほど現場で目にしてきました。  

 ざっくりした見積もりはベンダー費用の妥当性判断を鈍らせます。O社が2000万円、P社が3000万円と提案してきたとき、見積もりの内訳が「システム構築一式」だったら安い方を選んでしまいますよね。しかし、実はO社はソフトウェアとハードウェアの費用をワンランク下で提出しており、同じ条件でP社に再提案させたらP社は1500万円で提案できた、というケースはあり得ます。実際、私が5年前に携わった案件で、見積もりを精査した結果、そうなったことがありました。  

 こうした問題のうち、最初の2点はRFPにおける自分たちの期待を誰もが読み間違えないレベルで明確に示すことができれば、ある程度防ぐことはできます。RFP回答表を作って、要件毎に自分たちの認識を示した上で、各項目でベンダーに回答させるなら、一層確実です。  

 しかし、3点目に挙げた「見積もり」については、費用の妥当性を判断するハッキリとした基準を作らないと、ベンダーが装飾した数字を鵜呑みにして、後で「こんなはずじゃなかった」と悔いることになるでしょう。  

 これはあなただけの問題ではなく、その後のシステム設計・構築からカットオーバー後の維持運用に関わる人たちにまで末永い不幸をもたらします。  

 費用妥当性を判断する上で、工数と製品(ソフトウェア・ハードウェア)は費用に対する考え方がまったく異なるため、分けて基準を設ける必要があります。  

 今回は、そのうち「工数費用」に対する判断基準を取り上げます。

次のページ
工数費用の定量的な評価で、提案内容を判断するべきではない

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この記事の著者

吉澤 準特(ヨシザワ ジュントク)

外資系コンサルティングファーム勤務。ビジネスからシステムまで幅広くコンサルティングを行う。専門分野はシステム運用改善をはじめとするインフラ領域だが、クライアントとの折衝経験も多く、ファシリテーションやコーチングにも造詣が深い。まぐまぐにてメールマガジン「IT業界の裏話」を発行中。著書に「最新会議運営...

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