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ガートナー、2018年の戦略的テクノロジ・トレンドのトップ10を発表

 ガートナーは、テクノロジが出現したばかりの状態を脱し、幅広く利用され、より大きなインパクトをもたらす状態に入り、大きな破壊的可能性を持つようになったトレンドや、今後5年間で重要な転換点に達する、変動性が高く、急成長しているトレンドを、「戦略的テクノロジ・トレンド」と呼んでいる。

 以下に説明する戦略的テクノロジ・トレンドの最初の3つでは、人工知能(AI)と機械学習について、これらが事実上あらゆるものに浸透しつつある現状と、テクノロジ・プロバイダーにとって今後5年間の主戦場になるという見通しを提示する。その次に示す4つのトレンドでは、デジタルの世界と物理的な世界を融合させ、デジタル面を強化したイマーシブ(没入型)環境を構築することに焦点を当てている。最後の3つは、人や企業、デバイス、コンテンツ、サービス間で拡大するつながりを活用した、デジタル・ビジネス成果の創出に言及したものになる。

2018年に注目すべき戦略的テクノロジ・トレンドのトップ10

 ・AIファウンデーション

 少なくとも2020年までは、学習し、適応し、自律的に行動する可能性を持つシステムを構築することが、テクノロジ・ベンダーにとっての主要な目標となる。AIを使いこなし、意思決定の強化、ビジネスモデルとエコシステムの改革、カスタマー・エクスペリエンスの再構築を行う能力が、2025年まで、デジタル・イニシアティブの成果を拡大させる。

 ・インテリジェントなアプリとアナリティクス

 今後数年間にわたり、事実上すべてのアプリ、アプリケーションおよびサービスは、一定レベルのAIを実装するようになる。こうしたアプリの中には、AIと機械学習なしには実現しない、インテリジェント性が顕著なものもある。それ以外のアプリは、AIを目立たない形で活用し、インテリジェンスを背後で提供する。インテリジェントなアプリは、人とシステムをつなぐ新しいインテリジェントな中間レイヤを形成して、仕事の本質やワークプレースの構造を変革する可能性を秘めている。

 AIは、ERPを含む、広大なソフトウェア/サービス市場における次の主戦場となっている。パッケージ・ソフトウェアとサービスのプロバイダーは、高度なアナリティクス、インテリジェントなプロセス、先進的なユーザー・エクスペリエンスなどを売り文句にした新製品において、実際にはAIをどのように使用してビジネス価値を付加しようとしているのか、要点を明らかにすべきだ。

 ・インテリジェントなモノ

 インテリジェントなモノとは、従来の固定的なプログラミング・モデルを実行するばかりでなく、AIを活用して高度な振る舞いをするとともに、周囲の環境および人とより自然にやりとりする物理的なモノを指す。AIは、新しいインテリジェントなモノ(自律走行車やロボット、ドローンなど)の発展を後押ししながら、同時に多くの既存のモノ(モノのインターネット [IoT] に接続された消費者向けシステムや産業システムなど)に対し、強化された機能を提供している。

 ・デジタル・ツイン

 デジタル・ツインとは、現実世界の実体やシステムをデジタルで表現したものを指す。デジタル・ツインは、IoTプロジェクトのコンテキストにおいて今後3~5年間にわたり特に有望であると考えられ、したがって今日、大きな関心がこのテクノロジに寄せられている。適切に設計された資産のデジタル・ツインは、企業の意思決定を大幅に改善する可能性がある。

 こうしたデジタル・ツインは、現実世界で対応する対象物と結び付けられ、モノやシステムの状態の把握、変化への対応、オペレーションの改善、価値の付加などに用いられる。企業や組織は、まずは単純な形でデジタル・ツインを導入し、その後、適切なデータを収集および可視化する能力を向上させたり、適切なアナリティクスとルールを適用したり、ビジネス目標に効果的に対応させたりするなど、時間とともに利用法を進化させていく。

 ・クラウドとエッジ

 エッジ・コンピューティングとは、情報の処理およびコンテンツの収集と配布が、情報のソースに近い場所で行われるコンピューティング・トポロジを表す。エッジ・コンピューティングは、接続性および遅延に関する課題や、帯域の制約を解消すべく、エッジ部に多数の機能を実装した分散型モデルの一種といえる。企業は、インフラストラクチャ・アーキテクチャの中でも特に重要なIoTコンポーネントに、エッジ・デザイン・パターンを適用する必要がある。

 多くの人がクラウドとエッジは競合するアプローチであると考えているが、クラウドは、柔軟に拡張できる技術的機能をサービスとして提供するコンピューティング・スタイルの1つであり、本来、一元化されたモデルを要件とするものではない。

 ・会話型プラットフォーム

 会話型プラットフォームは、人間がデジタルの世界とやりとりする方法について、次の大きなパラダイム・シフトを促す。相手の意図を解釈する作業は、ユーザーの代わりにコンピュータが担うようになる。会話型プラットフォームは、ユーザーから質問や命令を受け取り、何らかの機能を実行したり、コンテンツを提示したり、さらには情報を求めたりすることで応答する。今後数年間にわたって、会話型ユーザー・インタフェースは、ユーザー・インタラクションにおける主な設計目標になり、専用ハードウェアやコアOS機能、プラットフォーム、アプリケーションに提供される。

 ・イマーシブ・エクスペリエンス

 会話型ユーザー・インタフェースによって、人間がデジタルの世界をコントロールする方法が変化しつつあるのと同時に、仮想現実(VR)、拡張現実(AR)、複合現実(MR)を通じ、人がデジタルの世界をどう捉え、そうした世界とどのようにやりとりするかが変わろうとしている。VRとARの市場はいまだ青年期にあり、断片化している。

 こうしたテクノロジへの関心は高く、結果として多くの目新しいVRアプリケーションが登場しているが、ビデオ・ゲームや360度体感ビデオといった高度な娯楽以外では、真の商業的価値をほぼ生み出していない。目に見える形でビジネス・メリットを生むために、企業は、VRとARを応用できる、具体的で現実世界に即したシナリオを検証して、従業員の生産性を高め、設計やトレーニング、視覚化のプロセスを強化しなければならない。

 イマーシブ・エクスペリエンスを実現する上で最適と目されるMRは、ARとVR両方の技術的機能を融合させて拡張する、イマーシブ・テクノロジの1つ。MRは、ユーザー各自の世界の見え方や、世界とのやりとりの仕方にぴったりと合うようインタフェースを最適化する、魅力的なテクノロジを提供する。

 MRは、現実世界と仮想世界の切れ目を意識させず、あたかもつながっているかのように見せるものであり、VR/AR用のヘッドマウント・ディスプレイ(HMD)、スマートフォンおよびタブレット・ベースのAR、また環境センサなどがこれを実現する。MRは、人がデジタルの世界をどのように捉え、そうした世界とどのようにやりとりするのかといった範囲を示す。

 ・ブロックチェーン

 ブロックチェーンは、デジタル通貨のインフラストラクチャから、デジタル・トランスフォーメーションのプラットフォームへと進化しつつある。ブロックチェーン・テクノロジは、現在の一元化されたトランザクションおよび記録管理のメカニズムからの急転換を促し、既存の企業とスタートアップ企業の両方に、破壊的なデジタル・ビジネスの基盤を提供する。

 ブロックチェーンは、そもそもは金融サービス業界を中心にハイプが巻き起こったものだったが、行政や医療、製造、メディア配信、身元確認、土地登記、サプライチェーンといった多くの分野に適用できる可能性がある。ブロックチェーンは長期にわたって有望なテクノロジであり、間違いなく破壊的な変革をもたらすと考えられるが、今はまだ現実が可能性に追いついていない状態で、大半の関連テクノロジは今後2~3年間は成熟しない。

 ・イベント駆動型モデル

 デジタル・ビジネスの中心となるのは、企業が新たなデジタル・ビジネスの機会をいつでも察知し、そうした機会を活用する準備ができているという概念だ。デジタルで記録できるあらゆるものが、ビジネス・イベントとなり得る。ビジネス・イベントは、購買発注の完了や航空機の着陸など、記録可能な状態または状態の変化を発見したことを示している。

 イベント・ブローカやIoT、クラウド・コンピューティング、ブロックチェーン、インメモリ・データ管理、AIなどを使用することで、ビジネス・イベントをより早期に検出し、極めて詳細に分析することが可能になる。ただし、文化的な変化やリーダーシップの変化を伴わないテクノロジだけでは、イベント駆動型モデルの価値を完全に引き出すことはできない。デジタル・ビジネスには、イベント・シンキング(イベントに基づく考え方)を持ったITリーダー、プランナー、アーキテクトが必要になる。

 ・継続的でアダプティブなリスク/トラスト

 高度な標的型攻撃が蔓延する世界において、デジタル・ビジネス・イニシアティブをセキュアに実現するためには、セキュリティおよびリスク管理のリーダーが「継続的でアダプティブなリスク/トラストのアセスメント(Continuous Adaptive Risk and Trust Assessment:CARTA)」アプローチを採用し、状況に即した対応を取って、リスクおよび信頼に基づく意思決定をリアルタイムに行えるようにする必要がある。セキュリティ・インフラストラクチャは、あらゆる場所において適応性を有し、デジタル・ビジネスと同じスピード感のセキュリティをもたらす機会を利用し、リスクを管理しなければならない。

 企業は、CARTAアプローチの一環として、開発と運用の間の障壁をDevOpsツール/プロセスで乗り越えるのと同様に、セキュリティ・チームとアプリケーション・チームの間の障壁を乗り越える必要がある。情報セキュリティ・アーキテクトは、複数のポイントのセキュリティ・テストを、コラボレーティブな方法でDevOpsワークフローに統合しなければならない。

 コラボレーティブな方法とは、開発者にとって透明性が高く、DevOpsのチームワーク、俊敏性、スピードと、アジャイル開発環境を維持し、「DevSecOps」を提供するものだ。CARTAは、例えばディセプション・テクノロジの手法を利用して、ランタイムに適用することも可能だ。仮想化やソフトウェア・デファインド・ネットワーキング(SDN)といったテクノロジの進化によって、ネットワーク・ベースのディセプションにおける基本コンポーネントである「アダプティブ・ハニーポット」を展開、管理、監視することが容易になった。

 

 なお、10月31日より東京(グランドプリンスホテル新高輪 国際館パミール)で開催される「Gartner Symposium/ITxpo 2017」では、戦略的デジタル・トレンドの解説をはじめ、ガートナーの国内外のアナリストやコンサルタントが、デジタル・ビジネスとデジタル・テクノロジについて幅広い提言を行うという。掲載内容については、11月1日午前8時からの講演「2018年の戦略的テクノロジ・トレンドのトップ10」で詳しく解説される。

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