5月28日におこなわれた日本マイクロソフトの金融市場向け戦略の発表では、業務執行役員の綱田和功氏がマイクロソフトの日本の金融市場を「既存ITシステム」(モード1)、「新ビジネスITシステム」(モード2)の観点から整理して語った。
綱田氏によると、金融機関によるAzureの採用は劇的に伸びており、数字は明らかにしていないが対前年比200%を超えるという。そして「クラウド分野では、AWSとの競争になるが金融市場についていえば、拮抗するレベルに達している」と述べた。
これまでの金融市場の案件は、モード1の既存システムのモダナイゼーションがほとんどであったが、徐々にモード2の新ビジネスの案件も増えており、生保、損保などの「インシュアランステック」など新サービスの事例も生まれている。
コンプライアンス対応が優位性
こうした金融業界でAzureが支持されてきた理由としては、セキュリティと金融機関向けのコンプライアンスへの特別対応がある。このたびMSは「FISC安全対策基準9版」にいち早く対応し、野村総合研究所などと第9版対応のアセスメントサービスを提供、さらに三菱総合研究所、電通国際情報サービスなどと第9版対応の「セキュリティ リファレンス」の公開を予定している。
また金融系企業の事例として、三井住友銀行と住友生命保険の事例が紹介された。
三井住友銀行の高橋健二氏は「Azure上でのOffice365やチャットによるWeb会議システムなどによりグループ間のコミュニケーションや行員の働き方改革にもつながった」と成果を強調した。
また住友生命保険の岸和良氏は健康増進型保険「Vitality」の基盤としてAzureを採用したことを紹介した。「Vitality」は、健康増進の活動や、体調管理によって保険料が変わるという保険サービス。南アフリカのディスカバリー社との提携で実現した。
「Azureの採用の理由は、海外対応の強さと監査対応。保険会社の扱う個人データはセンシティブなので監督当局からの指導も厳しい。この規模のクラウドとしてそれが実現できるのはAzureだった。」(住友生命情報システム部 担当部長 兼 代理店事業部 担当部長 岸和良氏)。
金融機関向けクラウド移行初期フェース支援を無償提供
マイクロソフトは「金融機関向けデジタルトランスフォーメーション変革特別支援施策」を発表した。
これはクラウドへの移行を下の図の3つのフェーズに分け「Phase1」のクラウド移行診断やテスト実施計画の策定を無償でおこなうというもの。
「これまでの金融機関のクラウド移行を見ると、技術的にはIaaS化で止まってしまったり、組織的には古いルールが足かせになるなどの阻害要因がある。ITモダナイゼーションを推進するには技術的側面と、組織的側面の両方の対応が必要。この両面の支援を無償で提供することで金融機関のモダナイゼーションを薦めていきたい」
(日本マイクロソフト 業務執行役員 綱田和功氏)